米SUVブーム 意外な日系企業に恩恵

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 8月に出揃った国内タイヤメーカーの2017年度上期決算。各社とも通期(2017年12月期)業績予想を上方修正した。

 各社によって多少の違いはあるが、共通している要因が2つある。1つはタイヤの主原料である天然ゴムや合成ゴムの価格が思ったよりも上昇しなかったこと。そしてもう一つが、北米市場でSUV(多目的スポーツ車)やピックアップトラックといった大型車向けのタイヤが好調だったことだ。

 中でも強みの製品をうまく売り出せているのが、ブリヂストンと東洋ゴム工業だ。北米でのSUV向けもしっかり伸ばしている。

SUV独り勝ち状態の米国市場に対応

 ブリヂストンは上期7.3%の営業減益となったものの、通期では営業利益を120億円増額し、前期比3.2%増の4640億円の見通しに上方修正した。

 同社で大きいのは一般タイヤの倍の利益率があるとされる鉱山用タイヤの復調。前期末から石炭採掘用などの大型のタイヤが売れ始め、足元は資源メジャーに納める超大型のタイヤが増えている。上期実績では超大型が前年同期比15%増、大型は45%増と回復基調が鮮明となっている。

 そして、北米SUV用のタイヤも前年同期比2割増と販売を伸ばしている。江藤彰洋副社長は「18インチのタイヤはここ3年ほど毎年20%ずつ増えている」と説明。特に新車用では足元で2割を大きく上回る伸びを見せているという。

 このため、ブリヂストンでは「いま準備をしておかないと、今後増えるリプレース(補修用)の需要についていけない」(江藤副社長)と、将来の補修用タイヤの需要増を見越し、年初に216億円を投じ米ウィルソン工場の増強を決断。SUV用の大口径タイヤの増産を進めているところだ。

 米国の新車販売は2016年に1755万台と過去最高を記録。好調を牽引するのは足元の新車販売の6割以上を占めるピックアップやSUVだ。新車販売が膨らんでいることは、将来の補修用タイヤの需要増を約束するだけに、各社とも、特需への対応で多忙をきわめている。

 米国では日常的に車を使い、走行距離も長く、悪路も多い米国では1年でのタイヤ交換が一般的だ。タイヤ交換の頻度も高く、補修用は新車用に比べ利幅がよいともなれば、タイヤメーカー各社にとって米国市場の取り逃しは許されない。

得意分野の大口径タイヤにこだわる

 米国のSUV向け市場で、もっとも成功しているのが、国内タイヤ4位の東洋ゴムだろう。もともとSUV用に特化したニッチ戦略を取っていたため、TOYO(トーヨータイヤ)や北米に強いNITTO(ニットー)ブランドにはコアなファンが多い。SUV用、なかでも20インチ以上の大口径では米国での市場シェア4割を占め、首位を維持する。

 ただ、このクラスは数も少なく、SUV用のボリュームゾーンはあくまで18インチ。新車で使われるのも、18インチが中心だ。それでも、買い替え時に20インチ、22インチにインチアップして乗るユーザーが増えており、このニーズをしっかりつかんで、同市場で圧倒的な存在感を発揮している。

 そして、市場が急拡大するタイミングで、このSUV用タイヤの生産ラインを増強したこともプラスに効いた。米ジョージア州の工場は2015年12月の拡張で年産900万本、そして追加増強が昨年完了し、年産1150万本体制が確立。

 しかも、この新工場には強みがある。「われわれの製造設備はフレキシブルにインチ替えしてタイヤを生産することに適している」(清水隆史社長)というのだ。そして、「より利益率の高い大型、我々の得意とするところに集中させている」と清水社長は説明する。

 実際、昨年に18インチなどのボリュームゾーンのタイヤを投入したところ、仏ミシュラン傘下のBFグッドリッチ社らと激しい価格競争に発展、前期業績不振の一因を作ってしまった。現在は、より付加価値を出しやすい大口径のタイヤ中心の生産に切り替え、好業績を築いている。

 東洋ゴムは今上期、原材料価格高騰による営業利益の押し下げが89億円ありながらも、218億円の営業利益をあげ、営業利益率は11.4%と2ケタを維持する。免震用ゴムのデータ改ざんなど一連の不祥事の影響が完全には払拭されたわけではないが、北米事業の好調さが同社を支えた。

 国内3位の横浜ゴムが今上期16.8%増益と健闘を見せたが、営業利益率が5.9%にとどまったことを踏まえると、東洋ゴムの好調ぶりが際立っている。

補修用タイヤ市場の攻略に各社の違いも

 北米の新車販売は2017年上期(1~6月)には前期比2.1%減に落ち込んだ。前年を下回ったのは実に8年ぶりだ。リーマンショック以降の買い替え需要が一巡したとの見方が強い。

 しかし、減速感が強いのはセダンなど乗用車で、SUVやピックアップなどの大型車は現在も高水準の販売が続いている。今後、北米で大型車の需要に多少のブレーキがかかったとしても、補修用タイヤの確実な販売が見込める。だからこそ各社とも対応を急いでいるのだ。

 今年投入したSUV用タイヤが早くも年間予算を超すオーダーを抱えた横浜ゴムは米国工場での生産は難しいと諦め、国内の三重工場からの出荷を増やす構え。

 一方、住友ゴムは「需要に対して供給が追いついていない。とくに大口径の品種が足りず、タイ工場から出すだけでなく、(米国の)バッファロー工場でもつくれるように準備をしている」(池田育嗣社長)と、バッファロー工場での早期出荷を目指し懸命だ。そして、世界王者ブリヂストンも、SUV用タイヤの増産を急ぐ。

 その中でも「需要によりマッチした生産ができるようになってきた」(清水社長)という東洋ゴムの独自性は際立つ。ピックアップトラック用タイヤで高いブランド力を築いた東洋ゴムの優位はしばらく続きそうだ。

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