戦力は度外視も、MLBのトレード事情

 【ダッグアウトの裏側】

 日本球界では考えられないトレードだ。米大リーグ・ドジャースが16日(日本時間17日)、ブレーブスと4対1の大型トレードを成立させたが、その目的は戦力の補強ではなく、チーム総年俸の削減だった。

 「今回の件で財政面を重視したことは否定しない。長期計画の一部で、戦略的に必要不可欠だと判断した」と電話会見で説明したのは、ド軍のGMに相当するアンドリュー・フリードマン編成本部長(41)だ。

 ド軍は2006-14年に在籍した通算259本塁打のマット・ケンプ外野手(33)を獲得。代わりに同311本塁打のエイドリアン・ゴンザレス内野手(35)、同108勝の左腕スコット・カズミアー(33)、同63勝のブランドン・マッカーシー両投手(34)に内野手1人と金銭450万ドル(約5億670万円)を加えて放出した。

 ケンプもゴンザレスもかつては「ド軍の顔」だったが、今回のトレードでは完全に駒扱いされた。拒否権を行使しなかったゴンザレスは移籍直後にブ軍から自由契約。ケンプも古巣のユニホームを着る前の再トレードか自由契約が濃厚だ。

 大リーグでは、チームの総年俸が規定額を超えると課徴金(ぜいたく税)を科される。ド軍の今季総年俸は3年連続30球団トップの2億4400万ドル(約275億円)で、規定額の1億9700万ドル(約222億円)を大幅にオーバー。5年連続で課徴金(今季は3000万ドル=約34億円)を支払った。

 ド軍は今回の大放出で約5000万ドル(約56億円)を一気に削減、来季の総年俸は規定額以下となった。来オフにオプト・アウト(契約破棄)の権利を保有するエースのクレイトン・カーショー投手(29)の引き留めや、大物FAの獲得が可能になった。

 ケンプもゴンザレスも年俸に見合った成績は残せていないとはいえ、あまりにもビジネスライクな扱い。改めて大リーグの厳しさを痛感させられる。(元全米野球記者協会理事・田代学)

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