日本のメダルラッシュに沸いた平昌五輪。次は2020年、東京五輪だ。早速いい予感がしてきた。不発続きの男子マラソンで日本新記録。いよいよ新世代のお出ましだ。

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2月25日に行われた東京マラソンは、16年ぶりの日本記録更新に沸いた。西新宿の都庁前から東京駅前までの42.195キロで争われたレースで、設楽悠太(26、ホンダ)が日本新となる2時間6分11秒をマーク。昨年の同大会でフルマラソンにデビューしたかつての箱根のスターは日本勢最高の2位に入り、2002年に高岡寿成(47、現カネボウ監督)が作った記録(2時間6分16秒)を5秒更新した。

独自の調整法を貫き、東京マラソンで日本新を出した設楽。長く低迷していた日本陸上男子長距離界にとって歴史的なレースとなった (c)朝日新聞社 © dot. 独自の調整法を貫き、東京マラソンで日本新を出した設楽。長く低迷していた日本陸上男子長距離界にとって歴史的なレースとなった (c)朝日新聞社

16年のリオ五輪には1万メートルで出場し、昨年、ハーフマラソンの日本記録(1時間0分17秒)も樹立した設楽は、3度目のフルマラソンでハーフとフルの両種目で日本記録を同時に保持する選手となったわけだ。

 設楽には主催者からの賞金のほか、日本実業団陸上競技連合からボーナス1億円が支給。その額からも、今回の記録更新がいかに待望されていたかが分かる。

 実は昨年から東京マラソンは、それまでの東京の名所を回るコース設定から、高低差をなくした“高速コース”に変わった。ただ、好タイムが生まれた理由はそれだけではない。設楽に更新されるまで、長く日本記録を保持していた高岡は、こう話す。

「記録は気候やライバルの出現、レースのペースや体調など、様々な要因が一致した時に出るもの。今日の設楽くんは、(終盤までライバルの)井上くんが前を走っていたほか、(長い時間)先頭グループでレースができたことが良かったのでは」

 レース当日は気温が6度、湿度40%というマラソン日和。昨年の同大会を2時間3分58秒で制したウィルソン・キプサング(35、ケニア)が途中棄権したことも影響し、先頭グループのペースが上がり過ぎることもなかった。全体5位で日本人2位に入った井上大仁(25、MHPS)の存在も設楽をあと押ししたことだろう。レース後、設楽は「10キロ付近から右ふくらはぎの痛みがあった」としたが、その痛みも序盤から突っ込み気味だった過去のレースを踏まえると、結果的には自重するいいきっかけになったといえるかもしれない。

 もちろん日本陸連マラソン強化戦略プロジェクトリーダーの瀬古利彦(61)も「常識では考えられない」と話す設楽独特の調整法が実ったともいえる。

 その飄々とした性格は練習法にも表れ、通常のランナーはレース前に40キロ走などを取り入れ距離を踏むものだが、「僕は30キロ以上の距離走はやりません」と自らの考えを貫く。

 2月4日に丸亀国際ハーフ(日本人1位)、11日に唐津10マイルロードレース(1位)を走るなどして連戦の中で調整。勝負勘を磨くため、レース数を意識的に増やしたという。

「こだわったのはタイムよりも勝負。レースに出たことで勝ち癖もついた」

 今年の東京マラソンは設楽のほか、井上が2時間6分54秒で2時間7分を切るなど、なんと計9人もの日本人選手がサブ10(2時間10分切りの意)を達成してもいる。瀬古は上機嫌で言う。

「昔は宗(茂・猛)兄弟に私や中山竹通をはじめ、森下広一や谷口浩美がいた。ライバルがいたことで、切磋琢磨できた。(昨年12月の福岡国際マラソンで2時間7分19秒で走った)大迫くん(傑、26、ナイキ・オレゴンプロジェクト)も、今回の結果に負けじと、タイムを縮めてくるでしょう」

 この日は過去最多のメダル獲得で日本の強さを示した平昌五輪の閉幕日。長く低迷していた日本男子マラソンが、20年東京五輪に向けて復活の狼煙をあげてあとに続こうとしている。(文中敬称略)

(スポーツライター・栗原正夫)

※AERA 2018年3月12日号

世代別代表を経験してきたウンデルは'16年11月にA代表デビューも果たしている。佳境を迎えるCLでも台風の目になれるか。 © photograph by Getty Images 世代別代表を経験してきたウンデルは'16年11月にA代表デビューも果たしている。佳境を迎えるCLでも台風の目になれるか。

 突拍子もないことや予期せず起きてしまったことを伝えたいとき、イタリア語には「トルコ人の仕業だ(=fare cose turche)」という言い回しがある。

 語源は、1453年のコンスタンティノープル陥落に遡るらしい。東ローマ帝国を滅ぼしたオスマン帝国は西欧世界にとって忌むべき脅威となり、“東方トルコの民侮りがたし”という教訓が生まれた。

 晩冬のセリエAでも、トルコの若武者たちが来季のCL出場権争いを沸かせている。ローマのFWウンデルとミランMFチャルハノールだ。冬季休暇明けから、見違えるように躍動する彼ら2人は、上り調子でそれぞれのチームの攻撃を活性化させ、今やローマやミランの主力に成り上がった。

 昨年からトルコ代表監督を務める名将ルチェスクが彼らへかける期待もすこぶる大きい。

「ウンデルはシーズン当初の重圧を乗り越えた。気迫と獰猛さが加わったチャルハノールはゴール前で頼もしい」

 この冬、ローマとミランの結果を伝える試合翌日の新聞紙面では、冒頭の言い回しが何度も使われた。

 してやったり。伝統国に挑む若い2人は大きな手応えをつかんでいるはずだ。

ウンデルは6戦6得点1アシストと絶好調。

 現在、セリエAの3位争いはローマ勢とインテルによる三つ巴の状態が続いている。

 27節で首位ナポリとの大一番に挑んだローマは、敵地でまさかの4ゴールを上げる大勝を収め、頭1つ抜けだした。

 先制したのはナポリだったが、わずか1分後に仕掛けたカウンターでFWウンデルは冷静に同点弾を奪い、逆転勝利の口火を切った。

 独特の間合いがある。ドリブルを一気にトップスピードにのせ、右サイドから相手ゴールを陥れる。

 直近のナポリ戦まで公式戦6試合で6得点&1アシストの大当たり。あどけない童顔の弱冠20歳ながら、指揮官ディフランチェスコも攻撃の起爆剤としての働きぶりを大いに称えているのだ。

大外れのウチャンを思い出す低調さ。

 昨夏、バシャクシェヒル(トルコ)から永遠の都へやってきたウンデルは、異国への順応に苦しんだ。

 イタリア語がわからなくて、練習メニューが理解できない。猛者揃いのチームメイトたちに“1周遅れ”でついていくのがやっとだった。

 日本でいえば高卒2年目の若手が、昨季の攻撃の中心だったFWサラー(現リバプール)の後釜として移籍金15億円以上を支払われて獲得されたのだ。プレッシャーを感じないはずがない。前半戦11試合に出たが得点の気配すらなかった。

 ロマニスタたちは「どうやらウチャンと同類か」と嘆き始めた。

 もうほとんどの読者の記憶から抜け落ちていると思うが、MFウチャン(現シオン)はトルコ代表として'14年夏にフェネルバフチェから鳴り物入りでローマに入団。しかし在籍2年で出場7試合0得点に終わり、ロマニスタには“近年稀に見る移籍市場の失敗例”扱いされている。

指揮官はウンデルの才能を信じ続けた。

 だが、指揮官ディフランチェスコはウンデルのイタリア語習得を見守りながら、辛抱強くトップチームで使い続けた。

「『ユース選手を引き上げて使った方がいい』という外野の声もあるが、彼には才能があり、個別指導をする価値があると思った。口を酸っぱくして、仕掛けるタイミングやポジショニングを教えこんできたつもりだ」

 チームの低調と中盤の故障者続出を受け、戦術を4-2-3-1へスイッチした23節ベローナ戦に先発したウンデルは、試合開始43秒で先制点を奪い、これが結果的に決勝ゴールとなり、ついに壁を破った。クラブ史上初のトルコ人選手によるゴールは、6試合勝ちに見放されていたチームへ再び火をつける一撃だった。

 続くベネベント戦で2得点と大暴れした際、ウンデルは軍隊式の敬礼ポーズで物議を醸した。

エルドアン大統領からの激励が……。

 今、母国トルコを取り巻く国際情勢はきな臭い。強権のエルドアン大統領は、シリア侵攻によって西欧社会からの批判を浴びている。

 ウンデルの敬礼は、クルド人武装勢力との軍事衝突によって戦死した同胞のトルコ軍兵士たちを悼むもので、ウンデルはたちまち本国の愛国主義者たちのアイドルに奉られた。

 ローマ移籍が決まった際、ウンデルはエルドアン大統領から直に激励の電話をもらって祖国への忠誠心をより強くしていたが、イタリアにあっては若い彼が現トルコ政権のプロパガンダに利用されているのでは、という疑念も生じた。

 誤解と雑音を避けるため、25節ウディネーゼ戦以降、敬礼は封印した。だが、ウンデルは得点することは止めなかった。

「ここに来てから最初の数カ月は本当に苦しかった。ようやくイタリア語がわかるようになって、戦術的に求められていることが理解できるようになった。2月以降、自分が別人になった気分だよ」

 難敵シャフタールに逆転負けを喫したが、CLデビュー戦でも先制ゴールを奪った。サイドアタッカーとして覚えなければならないことはまだ山程あるが、伏し目がちで奥手気味だったウンデルはもういない。

チャルハノールを復調させたガッドゥーゾ。

 もう1人のトルコ人選手であるMFチャルハノールは、出自もキャリアもウンデルとはまったく異なる。

 しかし、昨夏のミラン入団以降、4歳年下のウンデル同様にチャルハノールも前半戦の不調に苦しんだ。

 前監督モンテッラの起用法が定まらず、筋肉系の故障に苦しみ、自分のプレーを見失った。チームは迷走し、一時は11位にまで順位を落とした。

 再起のきっかけは、昨年12月に就任したガットゥーゾ新監督だった。希望していた4-3-3の3トップ左に置かれたチャルハノールは水を得た魚のように正確なサイドチェンジで相手を崩し、右のFWスソとクロスを打ち合いながら、チームのゴールを手繰り寄せた。

「まるで脚が4本あるようだ!」

 今季王者ユベントスを破るなど例年にない好調ぶりで欧州カップ戦出場圏をキープし続けるサンプドリアを1-0で下した25節で、ミランはついに6位タイにまで浮上した。今年に入って負けなしの彼らは、一気に4位以上のCL出場圏まで視野に入れる。

 サンプ戦でのチャルハノールは得点にこそ絡まなかったものの、クロスバー直撃のシュートを打ったかと思えば、フィニッシュ役のミスさえなければゴール確実という絶妙クロスを連発するなど大活躍。現地紙は「甘いタッチの5mのショートパスもゲームの趨勢を変える40mのロングパスもチャルハノールは自由自在」「まるで脚が4本あるようだ」と大絶賛した。

 期待通りの働きを見せるようになったミランの新10番。新監督ガットゥーゾは「走れる脚を取り戻した」と武骨に褒める。試合後、己の手をバチバチ言わせながら手荒く祝福するのは、監督がチャルハノールを一人前の男だと認めているからだ。

ロシアW杯出場はならなかったが。

 ドイツ西部マンハイムにトルコ移民の子として生まれたチャルハノールは、サッカー選手としては完全にドイツ流を仕込まれた。同じく移民の出自ながらドイツ代表を選んだMFエジル(アーセナル)と違い、チャルハノールは父祖の地のユニフォームを着ることを選んだ。

 チャルハノールもウンデルも指導した前U-21トルコ代表監督アブドゥラー・エルカンは、伊紙インタビューで「2人のプレースタイルはまったく異なるが共存は100%可能だ」と彼らの未来を楽観している。

「チャルハノールにはプレーの素早い判断能力と広い視野があり、ウンデルには速さと決定力がある。特にウンデルはそう遠くないうちにビッグクラブへ行くはずだ」

 トルコ代表は'02年日韓大会以来、W杯本大会出場が叶わない。ただし、ウンデルが24歳、チャルハノールが28歳で迎える4年後のカタール大会出場は、トルコにとって絶対に逃してはならないチャンスになるはずだ。

政界転身したハカン・シュクルが逮捕!?

 セリエAでプレーしたトルコ人選手の源流は'50年代に遡る。

 ガラタサライで長くエースを務め、トルコ代表歴代最多得点記録を持つ名FWハカン・シュクルは、2000~2002年にかけてインテルやパルマでもプレーした。

 引退後、政界に転身した彼は反エルドアン派代議士として活動してきたが、'16年夏に起きたクーデター未遂事件関与の疑いで逮捕されるなど数奇な道を歩んでいる。トルコでは熱と闇が渾然一体となっている気がしてならない。

 オリンピコ・スタジアムでの26節で、ミランはローマを相手に2-0で完勝を収めた。

 セリエAで実現した“トルコ・ダービー”で、MFチャルハノールは気合の入ったプレーぶりで何度も完璧なクロスを放った。若いウンデルは不発に終わり、さすがに息切れしたかと思われたが、翌週にはナポリ相手に一撃を決めて心底驚かされた。

“トルコ人には用心せよ”。

 数百年の時間が詰まった言い回しは本当だった。

 ローマとラツィオ、インテルとミランにサンプドリアまで加わって大混戦になりそうなCL出場権争いを制するのは、オスマントルコの末裔たる若武者2人かもしれない。

 昨シーズン、6年ぶりの最下位に沈んだロッテ。5位の日本ハムとは5ゲーム差ながら、チーム打率、本塁打、得点、防御率、失点は全てリーグ最低の数字に終わり、まさに屈辱のシーズンとなった。その結果、4年間指揮を執った伊東勤監督は辞任し、現役を引退したばかりの井口資仁が新監督に就任。一軍の首脳陣も小林雅英投手コーチ以外は全員が入れ替わることとなった。そんな新生ロッテが昨年までとはどのような戦いを見せるのか、上位進出のカギを握るプレイヤーは誰なのか、シーズンオフの補強とキャンプ、オープン戦での戦いぶりから展望した。

 オフに補強したのは新外国人の投手三人と野手二人。内野手のドミンゲスはメジャー通算42本塁打の実績があり28歳と若さもあるが、他の四人はマイナーリーグ生活が長く、外野手のペゲーロも昨年はBCリーグの富山でプレーしテストを経て入団したという経緯を見ても、大型補強と呼べるものではない。日本人選手でもソフトバンクを戦力外になった大隣憲司の実績が目立つ程度である。もともと大物外国人やFAで選手を獲得する球団ではなく、新監督が就任したとしてもその方針は変わらないという印象だ。

 補強で唯一変化が見られた点はドラフトでの指名である。ロッテのドラフトは伝統的に投手の大物はそれなりに指名しても、野手の大物は避ける傾向が強く原辰徳、岡田彰布、清原和博、松井秀喜、中田翔といった目玉と言われた野手に入札していない。ちなみに、ロッテの日本人選手でシーズン30本塁打以上を記録したのは落合博満(1986年・50本塁打)が最後であるが、大物野手から逃げ続けた結果と言えるだろう。

ロッテ・井口監督 (c)朝日新聞社 © dot. ロッテ・井口監督 (c)朝日新聞社

 しかし、昨年のドラフトでは清宮幸太郎を指名し抽選では外れたものの、二度目の入札で投手に逃げることなく超高校級スラッガーの安田尚憲を指名し、見事に当たりくじを引いてみせたのだ。安田はパワーだけでなく技術の高さも備えており、打者としてのスケールの大きさは清宮にも引けを取らない。そして井口監督はキャンプから安田を練習試合、オープン戦でも積極的に起用し、中心選手に育てようという意欲が感じられる。今シーズンの戦力として計算することは当然難しいが、チームの将来を考えると安田の存在は大きなプラス要素と言えるだろう。

 今シーズンの戦力という意味で安田以上に大きいのが2位で入団した藤岡裕大である。亜細亜大時代は東都大学リーグで通算104安打をマークし、社会人でも層の厚いトヨタ自動車で一年目から主力として活躍した実力者だ。社会人時代の打撃に関しては同じトヨタ自動車の先輩である源田壮亮(西武)よりも確実に上であり、新人王の有力候補であることは間違いない。昨年なかなか固定できなかったショートに打力と走力のある藤岡を固定することができるだけで、大きな戦力アップと言えるだろう。

 他の内野陣はセカンドに昨年終盤に長打力を発揮した中村奨吾、サードに安定勢力の鈴木大地、ファーストに新外国人のドミンゲスが入ることが既定路線だが、将来を考えると数少ない高校卒の若手である平沢大河や香月一也の抜擢も期待したいところだ。外野手は実績のある角中勝也、荻野貴司、清田育宏、伊志嶺翔大、岡田幸文が今季中に全員30代となり、上積みが期待できるのは、今年27歳になる加藤翔平くらい。悪いメンバーではないが、将来を考えるとここでも若手の抜擢がほしいところ。その第一候補になるのがドラフト4位ルーキーの菅野剛士だ。大学時代には東京六大学歴代最多記録となる28本の二塁打を放っており、広角に打ち分けるバッティング技術の高さは見事。東海大相模、明治大、日立製作所とアマチュアでは常に名門でプレーしてきただけに、守備と走塁のレベルも高い。藤岡もそうだが、大学、社会人を経て入団した選手はすぐに中堅、ベテランとなるため、ぜひ選手としての“旬”を逃さないような起用をしてもらいたい。

 一方、投手陣はFAでメジャー移籍を目指した涌井秀章が残留したことが大きい。先発は涌井、石川歩、唐川侑己、二木康太が中心で、復活を目指す西野勇士、ともに二年目の佐々木千隼と酒居知史、新戦力のボルシンガー、大隣らがローテーションを争う。リリーフは内竜也、益田直也、大谷智久、松永昂大、有吉優樹の5人に新外国人を加えた陣容が予想される。こうして名前を並べてみるとそれなりに実績のある中堅選手はいるが、万全の柱と呼べる存在となると誰になるかが見えてこない。また、今後大化けが期待できるような若手が見当たらず、数年後の将来像はかなり不安な状況と言えるだろう。

 野手陣、投手陣、ともに言えることは、今年それなりに戦えるチーム力はあるものの、上位球団に比べると全てのポジションで弱さが目立ち、それ以上にチームの将来像が見えてこないということである。こういう状況の中で井口監督に参考にしてもらいたい例がある。

 それが阪神で金本知憲監督が過去2年間で行った抜擢と戦力の見極めである。金本監督が就任する直前の阪神は投手では藤浪晋太郎、野手では梅野隆太郎という若手はいたものの、完全に外国人とベテラン頼みのチームだった。しかしそこから“超変革”をスローガンに掲げ、投手では秋山拓巳、岩貞祐太、岩崎優、野手では高山俊、北條史也、中谷翔大、大山悠輔などを一軍の戦力に引き上げることに成功。今シーズンもキャンプから高校卒2年目の才木浩人が抜擢されるなどその流れは続いているのだ。

 ロッテは阪神ほど注目度が高くなく、昨年がどん底の成績だったことを考えると、大胆な改革を行いやすい土壌はできている。チームを根本から立て直すためにも、井口監督にはファンも評論家もあっと言わせるような思い切った改革を行ってもらいたい。(文・西尾典文)

●プロフィール

西尾典文

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

インスタグラムより@yutonagatomo55 © スポーツ報知/報知新聞社 インスタグラムより@yutonagatomo55

 イタリア1部インテルからトルコ1部の名門、ガラタサライへ期限付き移籍をした日本代表DF長友佑都(31)が6日、自身のインスタグラムを更新し、生後1か月を迎えた長男との写真を公開した。

 妻で女優の平愛梨(33)が2月5日にイタリアで出産。長友はトルコにいたため、テレビ電話で「愛梨ガンバレー!」と応援したという。この日はイタリアに戻ってきたようで、長男を抱いてミルクを飲ませる姿をアップ。「成長早いなー。生後1ケ月でこんなにも変わるのか」と驚きを明かし、「離れるの寂しいなー。ファンモンのヒーロー聴きながら帰ります。笑」と離れがたい気持ちをつづった。

 長友はイタリアとトルコを往復する日々を送っており、平も自身のSNSで「主人のいない家を守らなきゃ」「どうしたって離れてる寂しさは埋められない。だけど、会える!ということを目標にすると身も心も変えられるのかもしれないね」などと心境を明かしていた。

第2戦で活躍した22歳の上林。“稲葉2世”の呼び名の通り、勝負強い打撃を見せてくれた。 © photograph by Kyodo News 第2戦で活躍した22歳の上林。“稲葉2世”の呼び名の通り、勝負強い打撃を見せてくれた。

 ナゴヤドームが満員のお客さんで埋まった。

 稲葉篤紀監督就任後、初めてのフル代表での強化試合。1月には筒香嘉智外野手(DeNA)や柳田悠岐外野手(ソフトバンク)ら主力となる一部メンバーを先行発表してチケットの売り上げを図ったが、そんな必要もなかったという。

「チケットを売り出した直後から売れ行きは好調で、一部メンバーの事前発表をする前にすでにかなりの売り上げがあった。最終的には完売になりましたし、京セラドームも一部外野席が当日売りになりましたが、それでもほぼ完売に近い売れ行きでした」(NPBエンタープライズ関係者)

 中日の低迷でここのところついぞスタンドが一杯になるところは見たことなかったナゴヤドームが満員札止めとなり、京セラドームもファンで膨れ上がった。

 曲がりなりにも侍ジャパンが商売として、成り立ち始めているというのが、球界にとっての今回の強化試合の1番のニュースだったかもしれない。

 その満員のファンの中での豪州相手の2試合。フル代表とはとても言えない相手だけに、格の違いははっきりしていた。

千賀、筒香ら投打の主役は揺るがない。

 第1戦は千賀滉大投手(ソフトバンク)がいきなり6連続三振でスタンドを沸かせ、その後も今永昇太(DeNA)、東浜巨(ソフトバンク)、田島慎二(中日)、岩嵜翔(ソフトバンク)、山崎康晃(DeNA)と6人の投手で16個の三振を奪っての完封劇。

 打線も6回に秋山翔吾外野手(西武)の四球と送りバントの1死二塁から3番・柳田の中前タイムリー、4番・筒香の右越え二塁打と主軸打者の期待通りの活躍で2点を奪っての勝利だった。

 一方の第2戦は柳田、筒香、浅村栄斗内野手(西武)のクリーンアップは無安打だったが、2番に抜擢された松本剛外野手(日本ハム)が2安打3打点、9番の今宮健太内野手(ソフトバンク)や昨年のアジアプロ野球・チャンピオンシップから続けて招集された上林誠知(ソフトバンク)がマルチの2安打と活躍。

 投手陣でも昨年に続いての招集となった堀瑞輝(日本ハム)と石崎剛(阪神)に初招集の高梨雄平(楽天)、がそれぞれ1回を無失点ピッチングを見せている。

いかに伸びしろのある若手を見出すか?

「今回の選手を軸にしていきます。その中で今年、若い選手が活躍して、トップチームに集合したときにどうやって国際大会で活躍するかを見てみたいという選手は呼びたいと思います」

 2試合を終えた稲葉監督は2020年の東京五輪に向けたチーム作りをこう説明した。

 千賀の快投や柳田、筒香の勝負強さは、改めて見るまでもない。それよりもこれから2年間で代表の中心になるだろう伸びしろのある選手をいかに見つけ出して、経験を積ませるか。

 今の侍ジャパンの強化試合の意味は、まさにそこにあるはずだ。

 そういう意味では引き締まって見応えのあった第1戦も面白かったが、試合としては少し冗漫になってしまったが、それ以上に若手がしっかりと足跡を残しただ第2戦には意味があった。

投の堀、打の松本と上林らは2年後を見据える。

「19歳でこのマウンドに立てたのは、自分にとっていい経験になります」

 こう語ったのは第2戦で3番手として2イニングをパーフェクトに抑えた左腕の堀だった。

 堀は昨年のアジアプロ野球チャンピオンシップにも招集されて、初戦の韓国戦では延長10回のタイブレークで2死一、二塁から火消し役としての登板なども経験して、今回が連続での代表入りだ。

「今回は緊張せずに集中することができたのが良かった。コースにしっかり請求できていましたし、シーズンで結果を残して、また次も選んでもらえるようにしたい」

 本人がこう語ったように、稲葉監督にとっても2年後に向けて期待の大きい選手の一人であることは間違いない。

 一方、打線でも昨年のアジアプロ野球チャンピオンシップに続けて招集された松本と上林がトップチームでも気後れすることなく結果を残して初陣を飾った。

「代表でもチームでも自分が生き残る道を考えたい。2番なので(2本の)安打より、最初の2打席が良かったと思っている」

 こう語る松本は1回に先頭の秋山が出塁すると、すかさず送りバントを決めてそれが敵失を誘って一気にチャンスを広げ、第2打席では無死二、三塁から手堅く右犠飛で追加点を奪うバッティングを見せた。

すでに五輪を強く意識してプレーする選手達。

 12球団の主力とスター選手が揃う代表だが、全員が3番や4番ではチームとしてのつながりを失う。

 それだけに振り回すだけではなく、安打を打ててなおかつ、必要なときにはつなげる打者をいかに見出していくか。

「バントや進塁打など、このメンバーの中でも役割を理解している。チームに帰っても続けられれば、ジャパンでのつながりを求める場面で必要な選手になる」

 稲葉監督の松本評だ。

 一方、第2戦では不発のクリーンアップを救ったのが野手最年少の22歳、上林だった。

 初回の2死満塁では必死に走って投前適時打で1点を奪うと、9回には左中間を破る二塁打でパワーも見せつけた。打撃フォームが似ていることから“稲葉二世”と呼ばれる監督の秘蔵っ子も、2年後の侍の中心へとイメージを膨らませる素材であることは間違いない。

「コメントを聞いていますと、選手が『オリンピックに向けて』とみんな言ってくれていますので、少しずつそういう意識を持ってくれているのかなと感じています。すごくいいことだと思っています」

 開幕直前にフル代表の試合を組むことには賛否がある。ただ、これだけのファンが集まり、そして選手の視線の先には2020年の東京五輪でのメダルが見据えられている。

 2年後のチームのイメージが作れたことに、この2試合の意味は十分にあった。

 教壇に立っても情熱は変わらない。朝日放送のアナウンサーとして高校野球や阪神戦を実況した清水次郎氏(46)は、22年のキャリアに終止符を打って教師に転身した。2017年4月に兵庫県立西宮今津高校へ赴任。地歴科教諭と野球部の顧問として奮闘している。「楽しくて仕方ない。うきうきして学校へ行っている」。異色の経歴を持つ新米教師は、前職と同様の熱意を持って生徒と向き合っている。

 1994年に朝日放送へ入社。憧れだったスポーツの実況を任された。元高校球児で、阪神ファン。夏の甲子園決勝や、阪神が出場した日本シーリズでマイクを握り、熱い言葉で臨場感溢れる放送を届けた。「夢のような日々で楽しかった」。看板アナウンサーに駆け上がり、何も不満はなかった。

 ただ、現場で高校球児の青春に感動する一方で、少年犯罪のニュースを読む時には心を痛めた。「どうして同じ10代でこうも違う人生になったんやろうって。高校野球の監督をしたくて教師になろうと思ったわけではなくて、親以外の大人として子供と真剣に向き合いたかった」。11年から通信教育を受講。仕事の合間に勉強して、5年をかけて教員免許を取得した。

 教師としても野球の指導者としても1年生。11カ月が経過した今も試行錯誤の日々が続く。授業の準備では徹夜をしたこともあった。「毎日、ヒーヒー言っている。実況も授業も準備に時間がかかるという意味では似ている」。部活では毎日ノックバットを握り、左手はマメだらけ。「監督の大変さを知った今は『やりたい』とは言えない。『やってみたい』と言えるようになりたい」と苦笑いする。

教師に転身した清水次郎さん © デイリースポーツ/神戸新聞社 教師に転身した清水次郎さん

 でも、そんな日々が苦にならない。アナウンサー時代は視聴者の反応が見えなかったが、今は生徒からダイレクトに伝わる反応が向上心を刺激する。

 「今は自尊感情や自信がない子が多いと聞く。でも、絶対にみんなが人に喜んでもらえる能力を持っている。それに気づいて欲しいし、手助けをできる教師になりたい」

 教え子には自分のような後悔もして欲しくない。早実では野球部に在籍。二塁手だったが、冗談交じりで「(定位置は)三塁コーチャーと二塁塁審」と笑う。イレギュラーしたゴロが顔に当たって15針を縫ったことも。一度もベンチ入りはできなかった。「いい思い出が1つもない。でも、今思えばそれほど練習してなかったからね」。全力で大好きな野球に向き合っていなかった自分に後悔が残っている。

 その思いは、アナウンサー時代に一層強くなった。現役だった金本、矢野ら一流選手の努力を目の当たりにした。「例えば高校生は素振りしたからレギュラーになれるかは分からない。でも、そう思ってやることの尊さは学ばせてもらった。あの人たちから話を聞いたり、姿を見たりすると、一見無駄に思えるような努力が信じられる。こういうことを生徒にどうやって伝えれば頑張ろうって思ってくれるのかなって…。今はまだ分からないけどね」。

 自らの性格を「しつこく、お節介」と言う熱血漢。これからも生徒と粘り強く向き合っていく。教え子もオンリーワンの存在へ導くために。(デイリースポーツ・西岡 誠)

 ◆西宮今津高校 1977年創立。2007年に普通科から総合学科高校に学科改編された。キャリア教育を重視し、「器楽」、「服飾文化」など選択できる専門科目が多い。進路に合わせた科目選択ができ、自分なりの時間割を組める特色を持つ。

典型的なサイドバックだった山中亮輔が、今季は中央にも入り込んでプレーしている。マリノスの挑戦は実を結ぶか。 © photograph by Getty Images 典型的なサイドバックだった山中亮輔が、今季は中央にも入り込んでプレーしている。マリノスの挑戦は実を結ぶか。

「今年のマリノスはつなぐつなぐって聞いてたけど、マジで(マンチェスター・)シティみたいじゃね?」

「去年と全然違うチームだよな」

 柏レイソルのホームスタジアムのゴール裏は、金曜日の夜から多くの目の肥えたサポーターで賑わっている。3月2日の第2節で本拠地に迎えた横浜Fマリノスの前半のプレーを見て、彼らは口々にその印象を語っていた。

「山中(亮輔)なんて、あんなポジションにいるし」

 少年時代から柏の下部組織で育ち、一昨季まで黄色のシャツを着ていたレフトバックは、アンジェ・ポステコグルー新監督が率いる新生マリノスのキープレーヤーのひとりだ。

 ペップ・グアルディオラがバイエルンで始め、現在はシティでも採用する独特なサイドバックの動きが、オーストラリア人戦術家のもと、今季の横浜で実践されている。

 “偽のサイドバック”(false sideback)や“転化型フルバック”(inverted fullback)とも呼ばれるその役割は、攻撃を構築する際に中盤の中央に入り、味方のオプションを増やし、ポゼッションを高めるためのものだ。

 山中は前節のセレッソ大阪との開幕戦で、ペナルティーアークのすぐ外から見事なミドルで先制点を決めた。左サイドバックが中盤前方であれほどの時間とスペースを享受できたのは、新指揮官が掲げる最先端の戦術によるものだ。

 J1では一昨季と昨季に1得点ずつしか記録していない24歳が、今季は横浜の最初のスコアラーとなった。新たな試みを楽しんでいるように、僕には見えた。

本人は中央でのプレーをどう思っている?

「いや実際は、楽しんでいるというよりも、けっこう必死です。試合に出るために、監督の求めることを表現できるように」

 開幕戦の翌週のトレーニング後にその印象を投げかけてみると、山中はそう答えた。では新監督に求められている動きとは、どんなことなのか。

「ボランチみたいなプレーや、前を向いて(ボールを)運ぶこと。自分はずっとサイドでやってきたので、正直に言って、真ん中に入ると背後からのプレッシャーが怖いところもあります。でもその辺は練習や試合をこなしていくうちに慣れると思う。監督とコーチの指導をしっかり吸収していきたいです」

「ああそういう意図だったのか」という気づき。

 あの開幕戦のゴールについては、こんな風に謙虚に振り返っている。

「前半から右サイドで押し込めていたので、相手はそっちに気を取られていたと思います。自分が中に入った時にボールが来てゴールを奪えたから、監督としては狙い通りだったかもしれません。でも僕としては、ああそういう意図だったのかと、そこでやっと理解できた感じ。(新たな手法について)半信半疑な部分もあったけど、セレッソという強い相手にボールを持てたので、自信につながりました」

 ただし、開幕戦では終盤に追いつかれて引き分けに終わった。そして柏との第2節では優位な時間帯もあった前半にゴールを奪えず、後半に2失点を喫して敗北。山中は古巣を相手にチーム最多の3本のシュートを放ったり、鋭いクロスを味方に届けたりしたが、結果には繋がらなかった。

 世界でも例の少ない前衛的なスタイルに挑み、良い時間帯を作りながらも、白星はまだ得ていない。ここまでの2試合は、前半は面食らった相手を向こうにボールを保持したものの、後半に敵が慣れてきて潮目が変わった。

ノーミスを前提とした勇敢なスタイル。

 柏で中盤の一角を担った細貝萌は、今季の横浜の印象を次のように語った。

「中盤をやっていた僕としては、すごく難しかったですよ。相手はサイドバックが中に入ることでポゼッションを高めていたので、僕らはなかなか的を絞れず、ボールを取れなかった。だけど、(GK中村)航輔のところまでボールが来なかったから、怖くはなかった。航輔もこのまま堪えてくれと言っていた」

 細貝はドイツ時代に、ペップのバイエルンと対戦した経験がある。比較にならないことを承知でその点を尋ねると、「さすがにレベルが違いますよ。あっちはもっとボールを動かして、ミスはほぼなかったから」と答えてくれた。

 ミスをしないことが前提に立つような(無論、それはどんなチームにも不可能だが)、勇敢なスタイル。まだ結果は出ていないけれど、そう好意的に捉えているマリノス・ファンもいるはずだ。

 最終ライン裏の広大なスペースを使われたことには対処すべきだし、低い位置で回して奪われた時の怖さも実感した。それでも面白い挑戦であることは間違いない。

目指すスタイルの実現は近づいている。

 そのチームで最も特徴的な動きを担うひとり、山中は敗戦の悔しさを滲ませながらも、足元へ向けていた視線を前に戻した。

「今日に関して言えば、全体の精度が足りなかった。良いサッカーができているだけじゃダメだと思うし、ポゼッションができても勝てないと……。でもこのチームは始動して、まだひと月ちょっと。目指すスタイルを表現できているところもあるので、監督を信じて、ブレずにやっていきたいです」

 山中は今季のシティのレフトバックのひとり、ファビアン・デルフの動きを参考にすることがあるという。あの左利きの元セントラルMFから「(ボールの)受け方とか落ち着き」を見習い、日本における偽のサイドバックの先駆者になれるか。

 マリノス・サポーターだけでなく、生まれ育った街の濃いサッカー好きたちも誇らしくなるような。

アンバサダー就任で、サントリーコミュニケーションズ株式会社の山田社長(左)からブルージャケットを着せてもらう宮里藍さん(撮影・浅見桂子) © 日刊スポーツ新聞社 アンバサダー就任で、サントリーコミュニケーションズ株式会社の山田社長(左)からブルージャケットを着せてもらう宮里藍さん(撮影・浅見桂子)

 藍ちゃんが冠になった。昨年9月に現役を引退した女子ゴルフの宮里藍さん(32)が、サントリー・レディース(6月7日開幕、兵庫・六甲国際GC)の大会アンバサダーに就任することが5日発表された。大会正式名称も今年から「宮里藍サントリーレディースオープンゴルフトーナメント」となる。

 宮里さんは兄優作が初出場する4月のマスターズ(ジョージア州)について「(現地へ応援に)行きます」と明言した。日本ゴルフ協会が20年東京オリンピック(五輪)の女子コーチ就任に向けて動いていることには「正式にお話をいただいていない段階。アンバサダーになって視点を変えて見ることでいろんな考えも生まれてくる。本能に従ってというか、やりたいことをしっかりできるようにしていきたい」と話すにとどめた。

驚異のメンタルの礎になった羽生選手の言葉力、表現力とは?(写真:ロイター/Eric Gaillard) © 東洋経済オンライン 驚異のメンタルの礎になった羽生選手の言葉力、表現力とは?(写真:ロイター/Eric Gaillard)  平昌五輪、男子フィギュアスケートで2連覇を達成した羽生結弦選手。個人で最年少となる国民栄誉賞の授与も検討されている。 震災や、ケガ、プレッシャーを乗り越えて、成し遂げた偉業というストーリー性や肉体的・精神的強さ以外に、彼を異次元の存在にしているのが、その卓越したコミュニケーション能力だろう。驚異のメンタルの礎になった羽生選手の言葉力、表現力の裏側に迫ってみたい。 オリンピアンなど、一流のアスリートには強靭な肉体のほかにも強固な精神力が必要だ。そうした「心の強さ」をメンタルタフネスと呼ぶが、カナダのライアソン大学の准教授で、元オリンピアンのニコル・フォレスター氏によれば、メンタルを鍛え、成果を出すために必要な要素として、①自己との対話力(Self-talk)②ゴール設定力(Goal-setting)③イメージ力(Imagery)④覚醒や興奮などの感情コントロール力(Arousal control)の4つが挙げられるという(当該論文はこちら)。羽生選手が大切にしている「自分との対話」 羽生選手の場合、たぐいまれなコミュ力によって、こうした力が研ぎ澄まされ、育まれてきたように見える。1つずつ詳しく見ていこう。 まず、1つ目の自己との対話力、これは自分を鼓舞し、勇気づけ、自信を作り出すうえで大切なステップだ。コミュニケーションというと、他人との対外的なやり取りをイメージしやすいが、実は自分の考えをまとめ、言語化するまさに「思考」そのものであるこのプロセスが、人間のコミュニケーションの中で最も大切で、最も多くの時間を割くたぐいのものでもある。 羽生選手の場合、この「自分との対話」を非常に大切にしている、というより、むしろ、「大好き」なのかもしれない。彼はこう語っている。 「もともと僕は考えることが好きで、まあ考えることというよりも、しゃべることが好きなほうが強いんですかね。自分が考えて何か疑問に思ったことについて追求し、そして教えてもらって、さらにしゃべりながら自分が覚えていく。そういったことがもとから性格上ありました。なので、その考えていることを口に出す。いわゆる考えることを表現する。(中略)それがスケートに生かされている」 筆者などはこうして書くことで思考を整理するタイプだが、羽生選手は「しゃべりながら、思考を整理する」ことに長けているということだろう。 「メディアの方にインタビューしてもらって、自分の思考を整理させていただく時間とか、インタビューをしてもらうことによって覚える言葉だったり、そういうものもあった」と話しているが、長年の競技生活の中での無数のインタビューに対し、真摯に取り組むうちに、あらゆる問いに対する答えを、きっちりと言語化し、準備するマインドが出来上がったのかもしれない。 「発明ノート」というノートに、ひらめきや学び、思いをしたためるという習慣も、そうした力を積み上げる役割を果たしたと考えられる。 日本の多くのアスリートはこのような言語化が苦手という人も少なくない。「スッ」「パーン」といったオノマトペを多用して、半ば気合か超能力のように意思を伝える選手もいたが、競技の結果を出せば、それでいい、という考え方もまだ根強いように感じる。 一方で、羽生選手は頭の中で、つねに何らかの問いを反芻し、思考し、言葉にする動作をつねに続け、その力を磨いてきた。こうした「セルフトーク」が強靭なメンタルに結び付いたとしても不思議はない。羽生選手の話にはいつも「文脈」がある 2つ目の「ゴール設定力」についても、「自己との対話」の中で、「明確な目標」を導き出したと推察されるが、羽生選手のすごみは「ゴールのその先」を見る力があることだ。ただ単に「金メダルを取る」というゴールを目指していたのではなく、その先の「子どもたちに夢を与える」「日本人として誇りに思ってもらう」「震災の被災者に元気になってもらう」といった金メダル後の「景色」を頭に描いていた節がある。 「いろんな子どもたちが夢を持ちながらいろんなことをやっていって、少しでもなにかその夢がかなう瞬間をつくってあげられるような(中略)言葉を出せたらなと、今改めて思いました」 「僕はこれだけ注目されながら演技をすることができているので、みなさんにたくさんの思いが届いているのではないかと思っています。その(メディアの注目という)お力をもうちょっといただいて、また復興の力にしていただけたらいいなと感じています」 「金メダルをとって2連覇して帰ってきたということが、たくさんの方の幸せになっていることは間違いないし、それができるのは僕しかいなかったということ」 ある意味、金メダルはもっと高みにあるゴールを達成するための「手段」でしかなかったのではないだろうか。自分の言動が第三者にどういう影響を及ぼすのかを理解し、彼らの視点で物事を俯瞰する力を持っているからこそ、彼の話にはいつも「文脈」がある。 つまり、事象を単なる点で考えず、「それがなぜ、重要なのか」という背景や意義をつねに分析し、大局観のある説明のシナリオにしている。 そうした思考の中で、「金メダルの意義」や「獲得後のストーリー」をイメージし、モチベーションを上げていったとしてもおかしくない。羽生選手は、アスリートを超えた表現者 3つ目のイメージ力はまさに、こうしたストーリーを創造する「想像力」でもあるわけだが、自分の目指す演技を可視化し、頭の中で描き出す力。「想像と一致させようとすると跳べる」と語っているが、思考の言語化を繰り返すことで、イメージがより鮮明に浮かびやすくなる。競技中の自分だけでなく、ファンや家族などをビジュアル化することで、大いに自らを奮い立たせてきたのだろう。 最後の「感情コントロール力」だが、これについては「期待される感覚が好き。それはプレッシャーじゃなくて快感」「主人公になりたいタイプ」と語っているように、緊張やプレッシャーを興奮に変えることができるタイプのようだ。 心を落ち着かせるとき、アドレナリンをポンプ注入するように興奮を呼び起こすときなど、まるで温度調節器のように、感情をコントロールすることが求められるわけだが、こうした制御力と表裏一体にあるのが驚異的な「憑依力」だ。 あるハリウッド俳優は、ひたすらに練習を重ねると、あるとき、「役」が天から降りてくる、と表現したが、羽生選手の演技には、いつも、何者かがとりついたような気迫が漂っている。光源氏か陰陽師、安倍晴明かわからないが、時にこの世の生き物ではないような、異次元のたたずまいを見せる。 「バレエやミュージカルのように、芸術とは、あきらかに、正しい技術、徹底された基礎によって裏付けされた表現力がないと、芸術として成り立たない」「スケーターって、『アーティスト』であり『アスリート』でもある。どっちの魂も捨てちゃダメなんだと思っています」と語るように、技術と芸術の双方を究めようとする姿勢は、単なるアスリートを超えたまさに表現者でもあり、「演じ切る」「演じ分ける」力を持つ数少ない希代のパフォーマーといえる。 そもそも、羽生選手のコミュ力の高さは、コミュニケーションにとって最も重要な「価値を読み取る力」、つまり、相手にとってどういった情報が価値を持っているのか、ということを瞬時にくみ取る「共感力」が極めて高いということに基づいている。 「これを言ったら、メディアが、国民が、ファンが喜ぶだろう」というツボを怖いほどに理解している。相手が聞きたいだろうと思うことをつねに届ける力、何が見出しになるかを予見する力、ユーモア、掛け合いをこなす瞬発力。どこをとっても、圧倒的な超越感を醸し出すコミュ力なのである。
昨季は丸がMVPと最多安打、田中が盗塁王に最高出塁率、菊池も5年連続のゴールデン・グラブと多くのタイトルを獲得した。 © photograph by Kyodo News 昨季は丸がMVPと最多安打、田中が盗塁王に最高出塁率、菊池も5年連続のゴールデン・グラブと多くのタイトルを獲得した。

 広島春季キャンプを見ていて、ふと中学時代の理科の授業で教わった「3点支持」を思い出した。

「物体を安定させるには、最低3点以上必要である」

 新シーズンへ向けて他球団の新戦力情報が連日のように流れてくる中、広島の一軍キャンプに参加している新戦力は新外国人のレオネル・カンポス1人。見た目に分かりやすい戦力の上積みはほぼない。

 それでも春季キャンプで不安を感じさせなかったのは、今やチームの顔となった田中広輔、菊池涼介、丸佳浩のタナキクマルの存在にあったように感じる。上積みがなくても、チームに根付いた高い競争意識が雰囲気をつくっていた。

 丸が右肩の可動域の影響でスローイングを要するメニューから外れ、菊池もキャンプ終盤に首の張りから数日別メニューになることもあった。万全ではなかったものの、当然のように彼らは全体練習のメニューに組み込まれていた。

 早出や居残りでの練習が免除になることはあるが、それでも彼らは自主的に動く。若手が居残り練習する間、使っていない施設を使って打ち込む姿が見られた。

 彼らは当たり前のようにグラウンドで駆け回り、当たり前のように結果を残してきた。決して手を抜かず、違いを見せた。

広島は3人を特別扱いしない。

 主力選手が全体メニューから外れ、限られたメニューに参加しながら、自分のペースで仕上げていくことも珍しくはない。

 ただ、広島では攻守の要である彼ら3人に、他球団で見られるような特別扱いはない。

「当たり前のことをやっているだけですよ。まだ若いですし、やらないといけない時期ですから」と丸は言う。3人は同学年の28歳(菊池は3月に誕生日を迎える)。若くして主力になった好影響とも言える。

 ただそれは同時に、巨大な重圧を背負うことも意味する。

広島の猛練習という伝統を体現する3人。

 ただ彼らは周囲からの期待を重荷とはせず、新たな使命として成長の糧にしている。

 2年連続フルイニング出場を果たし、菊池と丸に並ぶチームの絶対的レギュラーとなった田中には、自覚と覚悟が芽生えている。

「レギュラーとしてしっかりやらないといけない。当たり前のことですし、若い子たちも当たり前のことをやらないといけないと思うでしょう。それに僕らもレギュラーという立場に甘んじているつもりはないところも見せないといけない」

 背中で引っ張るだけでなく、さらなる高みを目指す強い意志の表れだ。

 思いは行動に表れる。猛練習で鍛える広島の伝統を体現する彼らの姿が、若手の生きた教材となる。

 新戦力が少ないだけでなく、石井琢朗打撃コーチ、河田雄祐外野守備走塁コーチがともに退団(ヤクルト加入)したことも、広島にとっては不安材料となりかねない。現に今春キャンプでは、走塁や盗塁に特化したメニューが組み込まれなかった。

 広島にとって機動力は攻撃の大きなウエートを占めるだけに、意識低下に一抹の危機感を感じたが、昨季盗塁王の田中は微笑みながら一蹴した。

「全体でやっていなくても、個人ではやっている。屋内でチューブとかやっていますよ。人前でやるのがあまり好きじゃないだけですよ」

 昨季中続けたスタート時の体幹の意識付けであるチューブを使ったトレーニングなどを選手が自主的に行っている。

オープン戦での出だしも好調そのもの。

 2月7日の春季キャンプ第2クール2日目。初めて行われたシート打撃では、二塁走者だった菊池が三塁ゴロでサードが一塁へ送球する間に三塁を陥れた。

 まだ肌寒い1次キャンプで、しかも初めて行われた実戦形式での好判断、好走塁は「今年はより次の塁を狙う走塁が大事である」という男の何よりのメッセージだった。

 実戦に入っても調整と割り切らず、貪欲に結果を求める。初戦から3人が定位置の1、2、3番に入り、結果を残した。2回途中ノーゲームとなった2月25日の巨人とのオープン戦(那覇)では、3連打のそろい踏み(盗塁失敗などで無得点)。

 好スタートに、菊池は「何か安心感がありましたね」とにやりと笑い、そして「出ているからにはやらないといけない」と続けた。

次は“投手陣のタナキクマル”。

 タナキクマルの3人はチームに安定感をもたらす存在となった。彼らが健在である限り、このチームが大きく崩れることはないのではないか。そんな安心感を与えてくれる存在だ。

 だからこそ緒方孝市監督は、“投手陣のタナキクマル”台頭に期待する。

「田中がレギュラーをしっかりものにして、菊池と丸と攻守の柱ができた。投手陣も、去年経験を積んだ薮田(和樹)、岡田(明丈)、大瀬良(大地)がしっかりとローテーションで回って、そこに秋のキャンプから一軍を経験している若い投手がどれだけ出てくるか」

 クリス・ジョンソンや野村祐輔とともに柱となる投手の台頭。打線をしっかり支えるタナキクマルのような3本柱の台頭が、投手力安定の鍵を握る。

 3月に入り、全体練習に復帰した菊池と田中は日本代表に合流し、丸の遠投の距離も伸びている。チームの先頭にいる3選手の歩みはきっちりと、3月30日の開幕戦に向かっている。

一塁でノックを受ける大城(カメラ・中島 傑) © スポーツ報知/報知新聞社 一塁でノックを受ける大城(カメラ・中島 傑)

 巨人の高橋由伸監督が、もっか売り出し中・大城の“二刀流”を予告した。

 3日からのヤクルト2連戦(東京D)で計3打数3安打1本塁打の新人捕手に対して、「両方やらせるよ」と一塁での起用も示唆。この日の全体練習からファーストミットを使い、シートノックに加わった。「違った可能性も広げたい。結果が出ているしね」と期待をかけ、大城も「しがみついていくだけなので思い切ってやりたい」と意欲を示した。

大谷翔平投手(ロイター) © スポーツ報知/報知新聞社 大谷翔平投手(ロイター)

 エンゼルスの大谷翔平投手(23)が5日(日本時間6日)、敵地で行われたレッズとのオープン戦で「2番・指名打者」で6試合ぶりにスタメン出場したが、3打数無安打だった。オープン戦は2試合連続無安打となり、打率1割4分3厘となった。

 初回1死。ロマノの甘く入ったチェンジアップを捉えた打球は左中間へ。抜けていれば二塁打コースだったが、中堅のB・ハミルトンにダイビングキャッチされた。3回1死二塁は初球打ちも三ゴロ。4回は二遊間を詰めた守備陣形に阻まれて遊ゴロだった。「詰まっていたので、(打球が)抜けないかなと思った。(1ボール1ストライクからの3球目を打ち)手を出していけたのは良かった」と振り返った。

 マーリンズからFAとなっているイチロー外野手はマリナーズと契約合意したと米複数メディアが伝えている。マリナーズとは同じア・リーグ西地区。レギュラーシーズンで19試合が組まれている。大谷自身はまだマイナー契約とあってか、「ぜひ僕がメジャーの試合に出て、試合で一緒に出来たらと思います」とコメントした。

再入荷されることが分かった松坂のタオル(左)とサポーターズユニホーム © スポーツ報知/報知新聞社 再入荷されることが分かった松坂のタオル(左)とサポーターズユニホーム

 中日・松坂大輔投手(37)のグッズ売り上げが1500万円を超えたことが5日、分かった。

 2月の沖縄・北谷キャンプでのグッズ販売の収支が確定。詳細は非公表だが、球団の担当者によると、松坂のグッズ販売額は、平均的な選手の15倍になったという。「沖縄限定サポーターズユニホーム」(6000円)、応援タオル(2000円)などが「再販に次ぐ再販」(担当者)で一時品切れになったほど。楽天戦が行われた3、4日のナゴヤDでも、2日間で用意していた数百枚の松坂ユニホームはほぼ完売。グッズ発売から約1か月で、売り上げは本人の年俸1500万円を大きく超えた。

 従来と異なるファン層を開拓した。担当者は「松坂グッズ購買者は『中日ファン』じゃなくて『松坂ファン』。高校時代から応援している方、地元・沖縄の方、それにメジャー時代を知っているのか『DICE―Kのユニホームはあるか?』と尋ねてきた米国人が多かった」と明かした。

 松坂の加入でチーム全体が注目を浴び、ほかの選手のグッズの販売額も昨年比1・5倍。松坂を含めた総売り上げは同2・5倍に達した。キャンプ地の売り場はテント一つだったが、担当者は「来年はテントもバイトも増やしたい」と鼻息を荒くした。

 松坂は2回2失点だったオープン戦初登板から一夜明け、ナゴヤ球場で練習。「それなりに体は張ってますが、朝起きたときのつらさは沖縄(2月26日の韓国・ハンファ戦の翌日)の方があった」と回復を強調した。次回登板は、古巣相手となる14日の西武戦(ナゴヤD)が濃厚で、3、4イニングを投げる予定だ。

カー娘、本当は「そだねー」使わない!? 中居の追及に思わず…: カーリング日本女子のメンバーら © サンケイスポーツ 提供 カーリング日本女子のメンバーら

 平昌五輪カーリング女子で銅メダルを獲得したLS北見のメンバーが、5日放送のテレビ朝日系「中居正広のスポーツ!号外スクープ狙います!」(後7・0)に出演。大会期間中に話題となった「そだねー」の秘密などを語った。

 番組では試合中にメンバー間で発せられる「そだねー」に話題が集中。北海道の方言であるという指摘に、主将の本橋麻里(31)は「全員が(北海)道民なので意識したことはない」と苦笑い。セカンドを務めた鈴木夕湖(26)も、「自分がなまっているとは思っていなかった」と明かした。

 MCを務める元SMAPの中居正広(45)から「じゃあ、なまっている意識はない?」と聞かれると「そうですね」と思わず標準語で答えると、スタジオは爆笑に包まれた。

 本橋によると試合中は否定的な言葉を使わないようにしているという。またはっきりと意思疎通が図れるように大きな声で会話することから、自分たちにとって馴染みのある「そだねー」という相づちに落ち着いたという。

報道陣の取材に応じるハリルホジッチ監督 © スポーツ報知/報知新聞社 報道陣の取材に応じるハリルホジッチ監督

 日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督(65)が5日、ロシアW杯メンバー発表で、功労者に対して非情な決断をする可能性を口にした。この日、都内のJFAハウスで今年初のスタッフ会議を開き、会議後に報道陣に対応。メンバー23人を選ぶ作業は「監督にとっては辛い時です」としながらも「競技面のみを考えて決めたい。チームに必要な選手を考えて選択したい。名字と名前では選手は選ばない」と言い切った。

 同監督が具体的に名前を出したのはFW原口元気(デュッセルドルフ)、FW浅野拓磨(シュツットガルト)、MF井手口陽介(レオネサ)。まずは、3人について3月の欧州遠征の招集も「難しい」とし、さらに、ロシアW杯でも「浅野、井手口、原口のようにW杯出場を決めるのに大きな仕事をしたが、もしかしたらW杯に行けない状況かもしれない。クラブで出場していなければW杯に呼ぶことはなくなってしまう。時には残酷なこともあります」と明かした。

 原口は最終予選序盤で4試合連続得点を記録し、チームをけん引した。浅野は最終予選突破を決めたオーストラリア戦で得点を決めた。また、井手口もボランチの主力として定着し、浅野同様オーストラリア戦で得点を決めている。だが、3人は負傷などもあり、所属クラブで出場機会が限られている。3人はW杯出場の立役者ではあるが、ハリル監督は貢献度を加味せず、「W杯で戦う準備ができている選手が必要」という基準で選考を進めていく。

 「コロンビア、セネガル、ポーランドを見て、日本に何が必要か分かってきている。予選突破の第一候補が日本ではありません。果敢に勇気を持って準備する。我々が予選を突破する可能性はある。それを信じて、他のチームに引け目を感じる必要はない。W杯は何が起こるか分からないところだし、何が起こってもおかしくないところ。運もありますが、それは自分たちが行動して引き寄せるもの」。5月、ハリル監督は情を挟まず、23人のメンバーを決める。

武豊を鞍上に、武幸四郎調教師デビュー戦を白星で飾ったグアン。武兄弟の新たな関係の第一歩が始まった記念すべき日だ。 © photograph by NIKKAN SPORTS 武豊を鞍上に、武幸四郎調教師デビュー戦を白星で飾ったグアン。武兄弟の新たな関係の第一歩が始まった記念すべき日だ。

 1997年3月2日、前日騎手としてデビューした武幸四郎は阪神競馬場でマイラーズカップを勝ち、初勝利を重賞制覇で飾った。その3分後、兄の武豊が中山で弥生賞を優勝。週末のターフが「武兄弟フィーバー」で熱く盛り上がった――。

 あれから21年。

 2018年3月3日、土曜日。前年調教師免許を取得し、この春から栗東に厩舎を開業した武幸四郎調教師が、阪神第1レースで調教師としての初陣を迎えた。出走させる管理馬は、池江泰寿厩舎から転厩してきたグアン。鞍上は兄の武豊。

 土曜日の1レースとは思えないほど多くのファンで賑わうパドックに武豊が現れ、スーツ姿の武幸四郎調教師にお辞儀をした。ファンがドッと沸くなか、弟が、兄の脚を抱えて馬上へと送り出した。

「調教師の指示どおりに乗りました」

 開業初戦で兄弟が組むというだけでも十分ニュースになるのに、それだけでは終わらないのが武ファミリーらしいところだ。

 武豊が操るグアンは2番手から抜け出し2馬身半差で快勝。兄弟コンビで臨んだ開業初戦を鮮やかな勝利で飾ったのだ。

 スタンドから祝福の拍手が湧き起こった。

 レース後、兄は「調教師の指示どおりに乗りました」と周囲を笑わせた。

「調教師になるため、たくさん努力してきたのを見ていたので、今後も頑張ってほしい」

 騎手デビュー同様、華やかなスタートを切った弟は「ほっとしています。結果よりも、まずは無事に戻ってきてほしいという気持ちで見ていました。オーナー、池江調教師のご厚意によって武厩舎でデビューできた馬ですので、嬉しいというより、感謝の気持ちで一杯です。まだ先は長いので、調教師としての仕事にひとつひとつ取り組んでいきたいと思います」とコメントした。

調教にも騎乗せず、まずはスタイルを確立。

 同調教師はこの日の阪神8レースもフォレストタウン(クリストフ・ルメール騎乗)で制し、初日で2戦2勝とパーフェクトな成績をおさめた。

 翌日、3月4日は中山第4レースの障害競走に、管理するミヤジタイガを出走させていた。「御祝儀馬券」の意味合いもあったのか、前日勝った2頭につづき、この馬も1番人気に支持された(9着)。

 開業してから関東初見参とあって、レースの前後に多くの関係者に声をかけられ、忙しそうにしていた。

 昨年騎手を引退したばかりで、まだ39歳ということもあって、体型も、握手をしたときの手のやわらかさも騎手時代からまったく変わっていない。今も調教に騎乗しているのだろうか。

「いや、乗っていません。今厩舎にいるのは転厩してきた馬たちなので、その馬たちの個性や状態を把握するのに手一杯なんです。自分の管理馬だから乗りたいんですけど、一頭に乗っちゃうと、ほかの馬の稽古を見られなくなってしまいますから」

 月曜日や火曜日に、北海道の馬産地を見て回る時間もなかなかとれないという。

「まずは、調教を確立しなくてはならないと思っています。人によって考え方が違うと思うのですが、いろいろなことをやるのは、それからです」

 メインの弥生賞を待たず、慌ただしく中山競馬場をあとにした。

兄・豊とは10学年離れた弟・幸四郎。

 派手なスタートを切ったところは「武幸四郎らしさ」に見えるが、本当の彼らしさが出るのは、自身が見つけてきた2歳馬が入厩し、レースに出るようになってからだろう。

 1978年11月に生まれた武幸四郎調教師は、'69年3月生まれの兄・豊より10学年下になる。兄が騎手デビューした'87年、彼は小学校3年生だった。父・邦彦元調教師が厩舎を開業したのもその年だ。48歳だった。

 幸四郎調教師が競馬学校騎手課程に入学した'94年、デビュー8年目だった兄の豊はスキーパラダイスで仏ムーランドロンシャン賞を勝ち、日本人騎手初の海外GI制覇を達成。凱旋門賞初騎乗も果たした。リーディングの座を当然のように指定席にしていた。

互いに比較の対象ではなかった関係。

 そんな「武豊の弟」として、幸四郎調教師は騎手としてデビューする前から注目され、ずっと兄の背中を追いかけてきた。

 偉大な兄を持つプレッシャーはあっただろうが、筆者の知る限り、それを口に出したことはない。飄々とした性格だし、年齢が離れていたこともあって、互いに比較の対象とは見ていなかったようだ。

 ときは前後するが、幸四郎調教師が中学3年生だった'93年の12月、彼は、兄がナリタチカラで参戦する香港カップを観戦するため沙田競馬場にいた。

 関係者席の近くのテーブルに、当時フランスのトップジョッキーだったキャッシュ・アスムッセンがいた。幸四郎調教師が、同じ長身であることから目標とし「世界一上手い」と話していた騎手だ。

 私はアスムッセンを彼に紹介した。誰だかわからず握手をしていた彼に、私は耳元で「キャッシュだよ」と言った。すると彼は驚いて「えっ」と声を上げ、「おれ、手、洗えへん」と嬉しそうに言った。

 それを兄に伝えたら、「そういう気持ちでいるなら、ぼくがとやかく言わなくても大丈夫でしょう」と微笑んだ。

 騎手という同業者だし、贔屓にしてくれる馬主や厩舎などの人脈も重なるので、ライバルになり得る関係ではあった。しかし、あのころと変わらぬ適度な精神的距離感が、ふたりの間にずっとあったように見えた。

「武豊の弟」であることは同じでも。

 幸四郎調教師も、騎手としてJRA通算693勝、うちGIは6勝という、記録にも記憶にも残る一流ジョッキーだった。それでも、海外と地方を加えると100以上のGIを含む4000勝以上を挙げている兄の背は遠すぎた。

 抽象的な表現になるが、騎手を引退したことにより、兄の背を追う立ち位置から離れ、調教師として、兄の背を押す大きな力を持つようになった。兄は以前から、騎手引退後、調教師にはならないと話している。もう同業者になることはない。

 武幸四郎調教師が「武豊の弟」であることに変わりはない。それでも、縛りつけるものから解き放たれ、より自由になった響きが、「武豊の弟」という言葉に加わったように感じられる。

 早ければ、ダービーの翌週から始まる新馬戦で、彼が選んだ2歳馬がデビューする。「調教師・武幸四郎」がどんな若駒を送り出してくるか。楽しみに待ちたい。

今海外でプレーする日本人の中で最も大きな注目を集めている選手の一人が、パチューカの本田圭佑だ。メキシコリーグ(リーガMX)後期10試合で4ゴール5アシストという成績は文句のつけようがない。

欧州ではメキシコの地での働きには、「レベルが違う」との否定的な意見が付きものだが、異国の地で毎試合のように得点に絡むことのできる選手はそうはいない。しかし、その本田もパチューカ加入当初は適応に苦しみ、トップフォームを披露することはできていなかった。では、加入当初と現在のリーグ後期では何が変わったのだろうか。

『Goal』メキシコ語版で記者を務めるジョンカルロス・ギュイナン氏は、ポジションの変化を覚醒の理由に挙げる。

「大きな要因は、彼がプレーしているポジションだ。現在、彼は前線のフリーマンとして攻撃陣と絡んでいる」

また、メキシコでは「ワールドクラスの選手」との評価を受ける本田。メキシコでの輝かしい活躍ぶりに、再び代表待望論も巻き起こっている。ギュイナン氏も日本代表にとって必要な選手であると力説する。

「常に彼は代表にとって有益な存在であった。それに2010年、2014年でワールドカップの経験があるし、重要な選手になるだろう」

© Goal.com 提供

今月に日本代表は欧州遠征で、23日にマリ、27日にウクライナと対戦する。そこにサムライブルーをまとう本田の姿はあるのか。注目が集まるところだ。

 それぞれのチームが新たなF1マシンを発表した時、その基本的なデザインと形状について洞察することはできるが、シーズン開幕を前にどのような計画を立てているか、完全には分からない。

 実際、メディアやライバルチームから自分たちの秘密兵器を隠すために、マシン発表時の画像は意図的に編集されている。

 しかしある段階で、重要なパーツをマシンに搭載して走行を行わなければならなくなる。そして1回目のバルセロナテストで、多くの興味深いデザインが”デビュー”することになった。

 motorsport.comではメルセデスやフェラーリ、レッドブルというビッグ3チームがテストしたアイデアを分析していく。まず、第1回はメルセデスだ。

 新車発表当時は、昨年型マシンW08をそのまま持ってきたのではないかとすら思えるほど、変化が少ないように思われたニューマシン、W09 EQ Power+。バルセロナでは、細かいながらもしっかりと変更が加えられており、チームが”プリマドンナ”と評するほど扱いが難しかったW08の特性を改善しようとしていることが見てとれる。

 メルセデスは、テスト序盤をW09の評価に充てていた。しかし、テスト3日目が悪天候に見舞われほとんど走行できなかったためか、テスト最終日には新しいフロントウイングとリヤウイングを投入し、新たなシーズンを迎える前のベースライン構築を試みた。またフロントノーズ下の巨大なターニングベイン、”ノーズ・ケープ”の改良バージョンも登場している。

Mercedes F1 W09 detail front wing © Mark Sutton Mercedes F1 W09 detail front wing

メルセデスのフロントウイングエンドプレート。下段が新バージョン

Photo by: Mark Sutton

 新しいフロントウイングは昨年の進化版だ。エンドプレートとその内側のカナードの配置が変更されている。

 エンドプレートとカナードは一体化され、より幅の広いフラップを形成。縦に入れられていたスリットも深くなっている。この変更により、フロントタイヤ周辺の気流は一変したはずだ。このセクションが作り出す気流により、マシン後部に生じる空気力学的なダメージを軽減することが狙いだと思われる。

Mercedes F1 W09 cape © Mark Sutton Mercedes F1 W09 cape

メルセデスW09のノーズ・ケープ。赤線で強調されているのがその前端

Photo by: Mark Sutton

 ノーズ・ケープは、昨年スペインGPで導入された大規模アップデートで登場した巨大なヒレ状の空力パーツだ。その前端はこれまでほぼ水平だったが、今回投入された改良版は下向きに大きくカーブを描いている。

Mercedes GP W09 rear © Giorgio Piola Mercedes GP W09 rear

スプーン型のリヤウイング前方に搭載されたTウイング(赤矢印)

Photo by: Giorgio Piola

 マシン後部には、昨年よりも低い位置にTウイング状のパーツがテストの開始時から搭載されている。昨年限りで巨大なシャークフィンとTウイングは廃止されたが、レギュレーション上このエリアに空力パーツを搭載する余地がわずかに残されているのだ。

 また、メルセデスはテスト開始時からメインプレーン中央部が垂れ下がるような形状の”スプーン型”リヤウイングを使用していた。このウイングはあまり多くのダウンフォースを必要としないサーキット用のモノ。エンドプレート付近のセクションでは、ウイングの厚みを薄くし空気抵抗を削減する一方、中央部を厚くすることでダウンフォース不足を補っているのだ。

Valtteri Bottas, Mercedes AMG F1 W09 © Stefano Arcari Valtteri Bottas, Mercedes AMG F1 W09

通常型と見られるリヤウイングにも一工夫を加えているメルセデス

Photo by: Stefano Arcari

 しかし最終日、メルセデスはより伝統的な形状の新リヤウイングをテスト。このウイングはメインプレーン中央部が盛り上がっているのが特徴だ。この盛り上がっている部分の幅は、ウイングを支持するピラーについているシンプルな形状のウイングレットとおおよそ同じ幅となっている。

 おそらくその下に位置するエキゾーストも含め、お互いに作用し合うことで最高の性能を発揮できるようにデザインされているはずだ。

Valtteri Bottas, Mercedes AMG F1 W09 © Glenn Dunbar / LAT Images Valtteri Bottas, Mercedes AMG F1 W09

 【トラとら虎】

 阪神の売り出し中のルーキー、島田海吏(かいり)外野手(22)=ドラフト4位、上武大=がキャンプで72キロあった体重を3キロ減らし首脳陣を心配させている。原因は1カ月間のキャンプ疲れと緊張による食欲減退とみられている。

 「ルーキーにありがちなこと。息の抜き方を知らないから余計疲れる。これも乗り切らなければならないプロの壁だが、体重は落ちても彼の評価は落ちていない」と球団幹部は強調する。

阪神、ドラ4ルーキーの島田が高評価で外野戦争激化 1軍枠は5人: 俊足好打が売り物だが、意外に長打力も秘めている © zakzak 提供 俊足好打が売り物だが、意外に長打力も秘めている

 同じルーキーの熊谷敬宥内野手(22)=同3位、立大=が力不足でキャンプ途中に2軍に降格されたことを見ても、島田の能力の高さが分かる。キャンプ前半は50メートル走5秒7の俊足が脚光を浴び、やがて打力の非凡さにも首脳陣は目を見張った。「打者として不思議な魅力のあるタイプ。一見タイミングが遅れそうで、内角球にサッとバットが出る。実にいい打球の角度を持っている」と金本監督は評する。

 実証したのは2月21日、宜野座キャンプでの練習試合(対韓国KIA)。1番・中堅で起用され4打数2安打2打点。1本は左腕投手の内角球を完璧にとらえた右翼席への2ランだった。身長175センチと大柄ではないが、秘めたパンチ力も高評価につながる。

 予想外のルーキーの台頭に同じ外野手の中谷、高山、俊介、江越は戦々恐々。既に左翼・福留、右翼・糸井は当確だから、残る中堅を島田ら5人で競うことになる。

 首脳陣の1人は「外野の1軍枠は5人。今の段階では誰を落とすか決められない。島田という掘り出し物の出現で選択がさらに難しくなった」とうれしい悲鳴をあげている。 (スポーツライター・西本忠成)

カー娘、銅メダル効果だね~ 混合ダブルス選手権のチケット即完売: 大会には吉田夕(左端)吉田知(同2人目)藤沢(同3人目)が出場する © zakzak 提供 大会には吉田夕(左端)吉田知(同2人目)藤沢(同3人目)が出場する

 平昌五輪で銅メダルを獲得したカーリング女子の勢いが止まらない。スキップを務めた藤沢五月(26)らが出場する日本混合ダブルス選手権のチケット(1枚2000円)がわずか半日で完売し話題となっている。

 大会は14~18日に開かれるが、1次リーグ最終日の17日と準決勝と決勝が行われる18日の各256席分は瞬く間に売り切れた。五輪メダリストのLS北見からは、開催地韓国でも「美人」と注目を集めた藤沢と、吉田知那美(26)・吉田夕梨花(24)の姉妹が日本カーリング協会の推薦枠で出場。五輪の男子チームであるSC軽井沢クの山口剛史(33)、清水徹郎(30)、両角友佑(33)とそれぞれペアを組む。優勝ペアは4月にスウェーデンで開かれる世界選手権の出場権を得られる。

 五輪の3位決定戦で42・3%の瞬間最高視聴率を記録したとはいえ、協会の関係者もこの盛り上がりに驚きを隠さない。この人気続きそだねー。