米の対北朝鮮政策、狭まる選択肢

【AFP=時事】北朝鮮が発射実験を行った大陸間弾道ミサイル(ICBM)は米アラスカ(Alaska)に到達する能力があるとみられている。そうした中で改めて浮き彫りになったのは、中国の対北朝鮮介入努力への信頼を失ったドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領にとって、北朝鮮の核開発を阻止する選択肢が狭められてきていることだ。

 今年1月に大統領に就任する直前、トランプ氏は、北朝鮮には米本土が射程に入るような核兵器は絶対に開発させないと主張し、「そういうことは起きない!」とツイッター(Twitter)に投稿していた。 

 しかし米政府が北朝鮮のICBM発射実験が成功したことを確認すると、専門家の間から、北朝鮮のミサイル開発が核弾頭を搭載できるほどにまで進めば、越えてはならないとされていた一線が近付きつつあることを米国も認めざるを得なくなるだろうとの見方が出てきている。

 米カリフォルニア(California)州に拠点を置くミドルベリー国際大学院モントレー校(MIIS)の核不拡散問題の専門家ジェフリー・ルイス(Jeffrey Lewis)氏はAFPに対し、「北朝鮮の非核化に向けた交渉の窓は閉ざされた」と指摘した。「肝心なのは、北朝鮮が核弾頭を搭載できるICBMを手にしたということを私たちが受け入れなくてはならないということだ」

 4日に北朝鮮がICBMを発射した直後にトランプ大統領は、「場合によっては中国が北朝鮮に対して厳しい態度に出て、こうした愚行を終わらせてくれるだろう」とツイッターに投稿し、金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長を非難する一方で、中国をもけん制した。

 トランプ氏はこれまで中国に対して核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に圧力をかけるよう要請してきた。しかし、先月になって中国の取り組みは「これまでのところうまくいっていない」と漏らすなど、トランプ氏が金政権の動きを抑える中国の力を見限ったことを示す兆候がいくつか出ている。

 トランプ米政権が強硬姿勢を取るようになってきていることは、6月29日に北朝鮮とのつながりを持つ中国の金融機関に対する制裁措置を発表したことからもうかがえる。

■米国の対北朝鮮政策は失敗

 トランプ大統領は中国に圧力をかけつつ、韓国の文在寅(ムン・ジェイン、Moon Jae-In)大統領と協力する道についても探り、先週はホワイトハウス(White House)に同大統領を招いて会談した。その一方で金委員長に対しては「なかなかの切れ者(pretty smart cookie)」と評し、ミサイル開発をやめるなら会ってもいいと述べ、会談できれば「光栄だ」と持ち上げてみせたことすらある。

米首都ホワイトハウスで、首脳会談のため韓国の文在寅大統領を待つドナルド・トランプ大統領(2017年6月30日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News © AFPBB News 提供 米首都ホワイトハウスで、首脳会談のため韓国の文在寅大統領を待つドナルド・トランプ大統領(2017年6月30日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

 だが、アメリカ進歩センター(Center for American Progress)で核・防衛政策問題を研究しているアダム・マウント(Adam Mount)氏は、「一線を越えないように圧力をかけるのはもはや論理的ではない。すでに一線が越えられつつあるからだ。もはや非核化(という主張は)は維持できない」と主張する。

「米国の政策は失敗に終わった。われわれにとって現時点で考えられる最良の展開は、時間をかけて持続可能な形で北朝鮮政権を抑制し、封じ込め、改革させていくことだ」

 短期的には、米国防総省は軍事行動を起こす選択肢も検討している。米国と韓国は5日、前日の北朝鮮によるICBM発射実験に対する示威行動として、合同の軍事演習を行って韓国沖にミサイルを発射した。

■軍事的選択肢は「誰も望んでいない」

 だが米軍上層部は、北朝鮮との武力衝突は非常に大きなリスクを伴うという見方を示している。

 ジェームズ・マティス(James Mattis)米国防長官は今年5月、外交努力によって状況を解決することができずに北朝鮮との間で軍事衝突が起きれば、1950年代の朝鮮戦争(Korean War)に匹敵する規模の「壊滅的な戦争になるだろう」と述べた。

 H・R・マクマスター(H.R. McMaster)米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は先週、「大統領は私たちにさまざまな選択肢を検討するよう指示した。その中には軍事的な選択肢も含まれるが、それを選ぶことは誰も望んでいない」と語り、軍事的解決も検討してはいるものの、かなりのリスクが伴うという認識を率直に示した。

 ミドルベリー国際大学院のルイス氏は、今トランプ政権が集中すべきことは、ミサイル発射実験をしないよう北朝鮮を説得することだと主張する。「緊張緩和策を考えながら対北朝鮮の抑止力強化に努めるべきだ」「弾道ミサイル防衛は、抑止力の一つになり得るかもしれない」

 米国はすでに北朝鮮からの脅威に備えて韓国に米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」を配備している。

 しかし中国政府はTHAADの韓国配備に猛反発し、韓国への経済制裁や外交ルートでの抗議などの措置を取ったため韓国の文大統領がTHAADの追加配備を中断したことから、この地域での米政府の安保政策は打撃を受けた。

【翻訳編集】AFPBB News

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