本田「今回がおそらく最後のW杯に」
© photograph by Getty Images パチューカで得点を量産している本田圭佑。3月の日本代表戦での復帰はあるのか。
パチューカ移籍後、コンスタントにプレーしている本田圭佑。今年に入ってもこれまでリーグ戦すべてに先発出場を果たしている。メキシコリーグでいまのパフォーマンスが続いていけば、W杯の日本代表メンバーに彼の名前を見つけられるだろう。
シーズン終盤は疲労の蓄積もあり、コンディションの維持は難しくなるものだ。しかし、パチューカでのトレーニングは充実しているようだし、結果が伴うプレーを続けている時は心身両面で充実するため、その心配はない。そもそも好調時は瞬時のプレー判断に迷いがなく、ケガのリスクが少ないものだ。
基本的には、最初にひらめいたプレーこそが一番良い結果を生む。これはドリブル、パス、キープのジャッジが良いということだ。そして常にボールを前に持ち出すイメージを持てば、その分相手にプレッシャーを与え、優位性を保てる。自ずとプレーの成功率が上がる、というわけだ。いまの本田はそんな状況にあると考えていいし、好調を維持しやすい。
「今回がおそらく最後のW杯になる」
昨年、ミラノで2人で食事をしながらゆっくり話した際、本田は「今回がおそらく最後のW杯になるだろう」と言っていた。これまでも彼は、自分の立てた計画に沿い、努力によってまっすぐ人生を進めて来た。今回もきっとそうなるだろう。また開催国ロシアのCSKAモスクワに所属していたわけだから、ロシアW杯への思いは強いはずだ。
いまでもVVVフェンロに行けば、多くのサポーターが本田について聞いてくる。モスクワにも彼のプレーを楽しみにしているサポーターが多くいるだろうことは、想像に難くない。
本田はフィジカルコンタクトに強く、パワー面でも海外選手と対等に勝負できる。彼のようなキープ力のある日本人選手は少ない。守備に時間を割くことが予想されるW杯グループリーグでは、タメが欲しい局面が必ずやってくる。
押し込まれた状況では、立て直すための時間を前線で作れないことが一番苦しいからだ。そんなときに本田のような選手が必要になる。またフリーキッカーが定まらない現状の日本代表では、彼のFKも重要な得点源になると私は考えている。
彼がサッカー人生で培ってきた経験は際立って特別なもの。それは苦境に立たされたときにこそ生かされてきたし、日本代表を助けることだろう。18歳で名古屋グランパスの中心選手としてチームの苦況を支えた彼の精神力は逞しかったが、彼はいまもなお成長し続けている。
堂安、久保ら10代の台頭はベストだが。
長年ヨーロッパで戦い続け、2度のW杯を経験した長谷部誠や長友佑都らは、今シーズンも結果を残している。彼らを筆頭とした海外組からの選手選考は難しいが、本大会に向けてメンバー構成を考えたとき、2つのことが頭に浮かぶ。
ひとつは、ロシアW杯だけにフォーカスした選考である。ハリルホジッチ監督にとっては、試合で結果を出し続けることが使命である以上、こちらになるのが当然と言える。
もうひとつは、次世代の日本サッカーを考え、その可能性を広げるための視点を持った選手選考だ。1998年フランス大会での小野伸二のような存在といえばイメージしやすいだろう。
当時、プロ経験も浅い18歳の大抜擢は世間を驚かせた。しかしW杯という大舞台を経験した彼は、その後オランダでUEFAカップ(現UEFAヨーロッパリーグ)チャンピオンになるなど活躍し、日本のサッカーを大きく引っ張る存在となった。現在でも彼は、他の選手たちに大きな影響力をもつ存在としてプレーしている。
直近の結果と次世代の可能性。バランスよく選考するに越したことはないが、そう簡単にいくはずもない。フローニンゲンの堂安律やガンバ大阪の中村敬斗、FC東京の久保建英のような10代が、誰もが納得する結果を持ってW杯メンバーに名乗りをあげるような状況となればベストだろうが……。
堂安のスーパーゴールにスタジアム沈黙。
その意味ではオランダで見たVVVフェンロ戦、堂安のプレーに確かな成長を感じた。彼にボールが入れば簡単にボールを失うことはなく、効果的な展開に繋げていた。そのキープ力に驚かされた。ボックス付近での完璧なファーストコントロールから、ドリブルシュートで得点も決めた。
技術の高さを証明したそのゴールは、スタジアムが静まり返るほど美しかった。試合後にはマウリス監督も堂安について高く評価していた。エールディビジであれだけ堂々とプレーする10代の日本人選手は、将来の日本代表にとっても大きな財産といえる。最終段階まですべての選手に可能性は残されているので、引き続き彼らのプレーに注目している。
実績ある選手たちは活躍できるか。
W杯に過去3大会以上出場している選手はブッフォン(イタリア)やカシージャス(スペイン)など多くがGKだ。フィールドプレーヤーではシャビ(スペイン)やピルロ(イタリア)、クローゼ(ドイツ)などわずかな選手しかいない。2006年ドイツ大会、2010年南アフリカ大会の各国代表選手をみると、3大会連続でメンバー入りするケースはほんの一握りだった。
しかし2014年ブラジル大会では、3大会連続となる選手がドイツ代表に5人、スペイン代表に9人もいた。そんな選手たちで構成されたチームには、それだけの経験と実績がある。ただ一方で、世代交代が遅れているとも考えられる。
日本代表もこのまま進めば、中心選手の5人以上が南アフリカW杯から継続して出場することになる。
ロシアW杯において日本代表は、実績ある選手たちの活躍で、前回のドイツ代表のような好成績につなげられるのか。あるいはスペイン代表のように、グループリーグ敗退という結果で世代交代の遅れを指摘されることになってしまうのか……。
誰にもわからない未来の話だが、W杯まで数カ月、私はヨーロッパ各国のリーグ戦、各国の代表選手をできるだけ見ようと考えている。そしてこの原稿を書いている間にも、本田のゴールによってパチューカが勝利したとのニュースがあった。
いまの本田圭佑は、ロシアW杯のピッチに立ってもおかしくない状態にある。メキシコでのプレー時間が増え、コンディション面での不安は大きく改善された。パスを多用し無難なプレーに徹していた印象が強いミラン時代と比べ、パチューカでは自らのアクションで局面を打開しようとする推進力を強く感じる。ドリブルでボールを運び、相手と1対1の勝負を試み、突破することで数的優位を作り出す。そんなプレーが増えた。
躍動感が戻った本田圭佑の活躍が、日本代表を新しい世界に導いてくれることを楽しみにしている。
