カープ安泰 28歳の3人は最高の教材

昨季は丸がMVPと最多安打、田中が盗塁王に最高出塁率、菊池も5年連続のゴールデン・グラブと多くのタイトルを獲得した。 © photograph by Kyodo News 昨季は丸がMVPと最多安打、田中が盗塁王に最高出塁率、菊池も5年連続のゴールデン・グラブと多くのタイトルを獲得した。

 広島春季キャンプを見ていて、ふと中学時代の理科の授業で教わった「3点支持」を思い出した。

「物体を安定させるには、最低3点以上必要である」

 新シーズンへ向けて他球団の新戦力情報が連日のように流れてくる中、広島の一軍キャンプに参加している新戦力は新外国人のレオネル・カンポス1人。見た目に分かりやすい戦力の上積みはほぼない。

 それでも春季キャンプで不安を感じさせなかったのは、今やチームの顔となった田中広輔、菊池涼介、丸佳浩のタナキクマルの存在にあったように感じる。上積みがなくても、チームに根付いた高い競争意識が雰囲気をつくっていた。

 丸が右肩の可動域の影響でスローイングを要するメニューから外れ、菊池もキャンプ終盤に首の張りから数日別メニューになることもあった。万全ではなかったものの、当然のように彼らは全体練習のメニューに組み込まれていた。

 早出や居残りでの練習が免除になることはあるが、それでも彼らは自主的に動く。若手が居残り練習する間、使っていない施設を使って打ち込む姿が見られた。

 彼らは当たり前のようにグラウンドで駆け回り、当たり前のように結果を残してきた。決して手を抜かず、違いを見せた。

広島は3人を特別扱いしない。

 主力選手が全体メニューから外れ、限られたメニューに参加しながら、自分のペースで仕上げていくことも珍しくはない。

 ただ、広島では攻守の要である彼ら3人に、他球団で見られるような特別扱いはない。

「当たり前のことをやっているだけですよ。まだ若いですし、やらないといけない時期ですから」と丸は言う。3人は同学年の28歳(菊池は3月に誕生日を迎える)。若くして主力になった好影響とも言える。

 ただそれは同時に、巨大な重圧を背負うことも意味する。

広島の猛練習という伝統を体現する3人。

 ただ彼らは周囲からの期待を重荷とはせず、新たな使命として成長の糧にしている。

 2年連続フルイニング出場を果たし、菊池と丸に並ぶチームの絶対的レギュラーとなった田中には、自覚と覚悟が芽生えている。

「レギュラーとしてしっかりやらないといけない。当たり前のことですし、若い子たちも当たり前のことをやらないといけないと思うでしょう。それに僕らもレギュラーという立場に甘んじているつもりはないところも見せないといけない」

 背中で引っ張るだけでなく、さらなる高みを目指す強い意志の表れだ。

 思いは行動に表れる。猛練習で鍛える広島の伝統を体現する彼らの姿が、若手の生きた教材となる。

 新戦力が少ないだけでなく、石井琢朗打撃コーチ、河田雄祐外野守備走塁コーチがともに退団(ヤクルト加入)したことも、広島にとっては不安材料となりかねない。現に今春キャンプでは、走塁や盗塁に特化したメニューが組み込まれなかった。

 広島にとって機動力は攻撃の大きなウエートを占めるだけに、意識低下に一抹の危機感を感じたが、昨季盗塁王の田中は微笑みながら一蹴した。

「全体でやっていなくても、個人ではやっている。屋内でチューブとかやっていますよ。人前でやるのがあまり好きじゃないだけですよ」

 昨季中続けたスタート時の体幹の意識付けであるチューブを使ったトレーニングなどを選手が自主的に行っている。

オープン戦での出だしも好調そのもの。

 2月7日の春季キャンプ第2クール2日目。初めて行われたシート打撃では、二塁走者だった菊池が三塁ゴロでサードが一塁へ送球する間に三塁を陥れた。

 まだ肌寒い1次キャンプで、しかも初めて行われた実戦形式での好判断、好走塁は「今年はより次の塁を狙う走塁が大事である」という男の何よりのメッセージだった。

 実戦に入っても調整と割り切らず、貪欲に結果を求める。初戦から3人が定位置の1、2、3番に入り、結果を残した。2回途中ノーゲームとなった2月25日の巨人とのオープン戦(那覇)では、3連打のそろい踏み(盗塁失敗などで無得点)。

 好スタートに、菊池は「何か安心感がありましたね」とにやりと笑い、そして「出ているからにはやらないといけない」と続けた。

次は“投手陣のタナキクマル”。

 タナキクマルの3人はチームに安定感をもたらす存在となった。彼らが健在である限り、このチームが大きく崩れることはないのではないか。そんな安心感を与えてくれる存在だ。

 だからこそ緒方孝市監督は、“投手陣のタナキクマル”台頭に期待する。

「田中がレギュラーをしっかりものにして、菊池と丸と攻守の柱ができた。投手陣も、去年経験を積んだ薮田(和樹)、岡田(明丈)、大瀬良(大地)がしっかりとローテーションで回って、そこに秋のキャンプから一軍を経験している若い投手がどれだけ出てくるか」

 クリス・ジョンソンや野村祐輔とともに柱となる投手の台頭。打線をしっかり支えるタナキクマルのような3本柱の台頭が、投手力安定の鍵を握る。

 3月に入り、全体練習に復帰した菊池と田中は日本代表に合流し、丸の遠投の距離も伸びている。チームの先頭にいる3選手の歩みはきっちりと、3月30日の開幕戦に向かっている。

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