巨人チグハグ育成の犠牲になった若手
若手が台頭したチームの躍進が続くセ・リーグで、4位に終わった巨人の契約更改交渉が始まった。行き当たりばったりの育成方針に翻弄されたヤングGたちの思いを聞けば、世代交代が進まない理由がよく分かる。
中日の昨年のドラフト2位・京田が記者投票で新人王に選ばれ、都内で華々しく開かれた「NPB AWARDS 2017」で表彰された20日。京田と同様に大卒の即戦力遊撃手と期待された巨人の同1位・吉川尚輝内野手(23)は、川崎市の選手寮で初の契約更改交渉に臨んだ。
提示額は200万円減の1300万円。「仕方がない。こういう世界なんだな」と神妙にサインした。1年目の1軍出場は5試合にとどまった。
対照的に正遊撃手に定着した京田は、規定打席に達し149安打。侍ジャパンに選ばれ、前日19日の韓国戦(東京ドーム)にも先発出場した。ライバルの活躍を、吉川は「同世代が日の丸を背負う姿は刺激になる。自分はまだそのレベルに達していない」と受け止めつつ「周りを見る余裕はなく、自分のことで必死だった」と振り返った。
右肩の不調で2軍スタートとなった春季キャンプ中、複数回の食中毒に見舞われ体重が激減。体調が整うまで時間を要したが、次第にドラ1の片鱗を見せ始めた。それでも1軍でチャンスはほとんどもらえず。4位が確定してようやく、今季最終戦で1軍に呼ばれ、約4カ月ぶりの先発で初安打。せきを切ったように猛打賞まで記録した。
「ずっと1本打てなかったが、最終戦で先発で出させてもらって来季につながる打撃、守備のアピールができた」。滑り込みで収穫を手にできたからよかったものの、強化指定選手ならばもっと早く多くの出場機会が与えられるべきだった。
V逸決定が9月18日。そこから残り18試合を、来季の覇権奪回に向けた布石として腹をくくれなかったのか。常勝軍団は結局優勝してナンボだ。高橋監督はベテランをフル稼働させAクラス死守を狙ったが、志が低い。シーズン後にクビにした村田の打席は、未来に何の意味も持たない。
育成力に定評ある日本ハムは今季途中、優勝が絶望的になると中継ぎエースの谷元を金銭トレードで中日に放出。目先の勝利を追うなら谷元を使いたい状況で、代わりに有望な若手の登板機会をつくるのが目的だった。
巨人の育成プランには、こうした大局観が欠けている。7月下旬に育成から青山、増田、田中貴を支配下登録したが、3人とも最後まで1軍で使われず。この日の契約更改も現状維持か20万円増の渋い評価だった。何のために支配下選手にしたのか。他球団なら1軍昇格の決定を受けて契約を切り替えるものだが、これでは育成アピールの点数稼ぎでしかない。
今秋ドラフト最大の目玉、早実・清宮の交渉権を引き当てた日本ハムの栗山監督は「野球の神様が、大切な宝物をわれわれに預けてくださった」と表現した。今の巨人が、宝物の預け先に選ばれなかったのは、必然だったのかもしれない。(笹森倫)
