為替操作国、中国ではなくタイに警戒
ドナルド・トランプ米大統領があるアジアの国を「為替操作国」と批判するのは確かにもっともかもしれない。ただし、それは中国ではない。
一部のアナリストによると、タイは近く、米国が主要貿易相手国による為替操作の恐れがあるとして提示している「為替監視リスト」の対象になる可能性がある。タイは米国の貿易相手国としては21位で、機械類のほかゴム製品や加工食肉を米国に輸出している。
米財務省は通常年2回、主要貿易相手国の為替政策に関する為替報告書を議会に提出することになっており、次回は10月中旬の予定だ。
4月に公表された前回報告書で「為替操作国」に指定された国はなかった。ただ、新たな貿易相手国が監視リストに追加されれば、これまでは投資家がほとんど材料視してこなかったトランプ政権による保護主義のリスクが再び浮上しかねない。
米財務省は貿易相手国による為替政策の公平性について判断する上で、3つの条件に注目している。対米貿易黒字が200億ドル(約2兆2500億円)を上回っていること、経常黒字の対国内総生産(GDP)比が3%以上であること、そして、1年間の純外貨購入額がGDP比2%以上に達していることだ。3つ目の条件は、貿易での競争力強化を目的とする自国通貨安を狙った市場介入に関する基準だ。
では、タイはこうした条件についてどのくらい当てはまるのだろうか。
米国勢調査局のデータによると、タイの対米貿易黒字は昨年190億ドルで、米財務省基準の200億ドルに迫っている。今年1〜8月の月間貿易黒字額は平均16億7000万ドルで、このペースが年末まで続けば年間黒字額は200億ドルをやや上回る。
DBSによると、タイの昨年の経常黒字は対GDP比11.4%に達した。
さらに、米外交問題評議会の上級研究員、ブラッド・セトサー氏によると、タイ当局が昨年、外国為替市場で実施した介入規模はGDP比5%を上回った。同氏は9月、米財務省の掲げる3つの条件に最も近い国としてタイを挙げた。
一方、中国は4月の時点でこの3つの基準のうち、1つしか当てはまっていなかった。
タイバーツは年初来でドルに対し約8%上昇しているが、ティスコ証券のヘッドエコノミスト、チャーノン・ブーンナク氏は、タイ中央銀行が介入していなければもっと上昇していただろうと指摘。「タイが為替報告書に含まれる可能性は非常に高い」と述べた。
トランプ政権としては初めてだった4月の為替報告書では、為替監視リストに新たに加えられた貿易相手国はなく、中国と日本、韓国、台湾、ドイツ、スイスに引き続き注目が集まっていた。また、トランプ大統領の発言と裏腹に、中国が「為替操作国」に指定されることはなく、昨年の介入は人民元安誘導でなく、元高に向けたものだったとの認識を示した。
