巨人vs選手会、山口俊めぐり全面戦争
巨人・山口俊投手(30)の飲酒トラブルが、労組日本プロ野球選手会(嶋基宏会長=楽天)と巨人の“全面戦争”に発展だ。選手会側は28日、巨人が山口俊に科した処分のうち、罰金と減俸合わせて1億円以上の制裁金は「明らかに重すぎる不当なもの」と抗議。さらに巨人がクビをちらつかせて複数年契約の見直しを迫り、総額数億円の減額に同意させたとの“新事実”を暴露。処分の再検討と契約見直しの撤回を求めた。巨人側は「処分は妥当」と真っ向から反論。お騒がせ右腕の前途は再び不透明になってきた。(笹森倫)
謝罪会見から10日後。自宅謹慎を解かれて練習を再開し、騒動に一区切りがついたかと思われた矢先、山口俊は再び渦中に引っ張り戻された。
選手会はこの日、山口俊の処分に関して「全プロ野球選手の契約に影響を及ぼす可能性のある極めて重大な問題」として巨人に抗議し、処分の再検討、契約見直しの撤回を求めたと発表。コミッショナー、12球団による実行委員会にも適切な調査など「合理的な対応」を要請した。
山口俊は酒に酔って商売道具の右手甲を負傷し、先月11日未明に訪れた東京都内の病院のドアを破損。さらに警備員に約2週間のケガをさせたとして、傷害と器物損壊の疑いで警視庁に書類送検されたが、後に起訴猶予となっていた。
巨人は書類送検のタイミングで18日に会見を開き、野球協約第60条に基づいて次の処分を発表した。(1)出場停止=今季終了の11月30日まで(2)罰金=トラブルが起きた7月11日から出場停止期間前日の8月17日まで38日間、1日につき年俸の300分の1(3)減俸=出場停止期間の105日間、1日につき年俸の300分の1。
石井一夫球団社長は会見で、契約解除も念頭にあったとした上で、山口俊が「極めて深く反省している」点と30歳という若さを考慮し、「罰金、減額は高額のもの。過去の出場停止処分に比べても最も厳しいのではと思う処分」と説明した。
だが選手会はこの日、「刑事処分的に逮捕事案でもなく、すでに被害者との示談も成立している。プロ野球界の前例、その他社会における懲戒処分に照らし、総額1億円以上の金銭的ペナルティーは明らかに重すぎる不当なもの」と主張。さらに、会見では語られなかった内幕を明かした。
「公表した上記処分のほか、巨人軍と締結していた複数年契約の見直しを迫り、これに同意しなければ契約解除するとの条件を提示し続けることにより同意させた。この金銭的ペナルティーは総額数億円以上にのぼる」
山口俊は昨オフに横浜DeNAからFA宣言し、巨人と結んだ契約は3年総額10億円(推定)。今季年俸は3億円から1億4300万円が引かれる上、複数年契約が見直され残り2年分の6億円が吹き飛べば、しめて「金銭的ペナルティー」は7億円超にのぼる計算だ。
選手会は「複数年契約に基づく年俸は成績、活躍の程度、ケガ等にかかわらず支払われるもの。本件のような事案で契約見直しが許されるとすれば、長期の拘束を前提とする保留制度に裏打ちされたFA制度の根幹に関わる」と問題視。「本件を奇貨として不当な解雇を突きつけることで、金銭的な負担を軽くする意図があったのではないかと邪推せざるを得ない」と訴えている。
2005年から10年間にわたってソフトバンクの球団取締役を務めた、江戸川大学の小林至教授は「野球賭博問題が起きた巨人はコンプライアンス重視とはいえ、一般論として解雇に値するとは思わない。球団の処分は重すぎるくらいだ」との見解だ。
一方で、契約見直しについては、選手会の主張に疑問を投げかける。「双方のサインで成立した契約書は、双方の合意があれば見直せます。今回とは逆に、複数年契約中の選手の活躍がめざましかった場合、球団側がさらに金額を上乗せして契約年数を延長することもある」と指摘。「プロ野球選手は一般の雇用関係と違い、球団とは対等な立場。弁護士の同席が認められた契約に際し、腕を押さえつけ無理やりサインさせるような状況は考えにくい。選手会がいうような『優越的地位の濫用』にはあたらないのではないか」と話す。
選手会に対して読売巨人軍広報部は、「山口俊投手に対する処分は妥当と考えています」とのコメントを発表。来月4日の実行委でも12球団間で話し合われるが、対応次第では契約の無効を求めるといった民事訴訟まで発展するのか。身から出たさびとはいえ、この問題が終息するまで、山口俊がチーム内で針のむしろに座るのは必至だ。
