欧州の選挙一区切り、親EU政権が誕生
【ブリュッセル八田浩輔】ドイツで連立政権発足に見通しがついたのもつかの間、欧州連合(EU)懐疑派の右派「同盟」(旧・北部同盟)が躍進したイタリア総選挙の結果は、EUにとって「一難去ってまた一難」と言える。
EU本部のあるブリュッセルではイタリア総選挙直前、世論調査で過半数に達する明確な勝者が出ない見通しに「勝者はEUだ」との楽観的な見方もあった。主要政党の多くが選挙戦後半に近づくにつれて、反EU色を後退させたからだ。
イタリアはEUへの支持率が高くないが、有権者の多くがEUや共通通貨ユーロからの離脱までは望んでいないことに各政党が反応した結果とみられた。政党別で首位に立つ見通しの「五つ星運動」は一時、ユーロ圏離脱を問う国民投票の実施の公約を掲げたが、選挙戦後半に反EU色を大きく薄めた。ベルルスコーニ元首相率いる「フォルツァ・イタリア」もユーロと旧通貨リラとの並行通貨を一時提案したが、その後取り下げた。
だが、結果的に伸長したのは、移民政策で強硬なEU批判を維持した「同盟」だった。「同盟」が今後の政党間協議のカギを握ることになり、連立の行方は複雑化した。
イタリア有力紙コリエレ・デラ・セラは「(今後)世論調査でユーロやEUへの反感が高まれば、これを利用するのをいとわない勢力が出る」と指摘。「五つ星」が再び反EU色を強める可能性も否定できない。
昨年3月のオランダ総選挙を皮切りに、フランス、ドイツと欧州主要国で続いた国政選挙も、今回のイタリアでひと区切りを迎えた。いずれの国でもEUに懐疑的な反既成政党が支持を伸ばす一方で、誕生したのは親EUの政権だった。だが、イタリアの連立の組み合わせ次第では、独仏協調で進める統合深化の議論に水を差す可能性もある。
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