もったいない、自主トレの不幸な現実

 1月に入ると各所から自主トレの便りが届く。ある者は沖縄、佐賀、東京、千葉、神奈川など国内を拠点に。ある者は海外、米国・ハワイだったり、ロサンゼルスだったりグアムだったり。一様に充実感を漂わせる。

 それはいいのだが、オリックスの球団施設、舞洲バファローズスタジアムや青濤館室内練習場での自主トレを見ていると、コーチ陣のため息を聞くことがある。

 「もったいないよなあ」

 この時期、つまり参稼報酬期間ではない12、1月はコーチの指導ができない。野球協約の173条『ポストシーズン』に定められているからだ。ただし、育成選手は例外としてコーチの指導も認められている。支配下選手よりも技術が劣る彼らがその期間に指導を受けられなければいつまでたっても支配下選手との差が縮まらないからだ。彼らは年末までキャンプの延長のような練習を続けていたし、年明けも早々に汗を流していた。

 『ポストシーズン』の厳格化はプロ野球選手会が労組として本格的に活動を開始した当初から訴えてきたもので、89年12月には順守が決まった。福良淳一監督が当時を振り返ったことがある。

 「これで何年かはレギュラーを脅かされることはないなと思ったよ。オレらのころはオフもずっと厳しい練習をしてうまくなったんだから。ある程度、技術をつかんだ選手はラッキーと思ったんじゃないか」

オリックス・福良監督 © デイリースポーツ/神戸新聞社 オリックス・福良監督

 レギュラーどころか1軍定着、出場すらままならない選手もいる。そういう選手が一人で技術をあげろといっても難しい。

 例えばこんな話がある。オリックスの若手投手・鈴木優は社会人・日本生命で中日・大島らと自主トレを行っている。

 「朝9時から夕方の6時までみっちり。キャンプよりキツイかも。一人でこんな練習はできません。行ってよかった」

 そもそも一人で練習することの難しさもある。主力選手になれば、他球団のトップ選手との合同トレも可能だろうが、1軍未出場の選手にはそもそも金銭的にも無理がある。

 昨年オフ以来、福良監督は「若手の台頭」を何度も口にしてきた。22年ぶりの優勝に向けて、現有戦力の底上げこそ最大の補強と考えるからだ。だからこそ、コーチが指導できない今の環境がもどかしい。

 例えば1軍出場登録日数で区切って合同トレを可能にするなどの法改正を考えてみてはどうだろうか。

 昨年は1軍キャンプに抜てきされた園部が体重オーバーでキャンプ初日に2軍降格を言い渡されたことがあった。前年にはプロ初本塁打を放つなど未来の大砲として期待されていたが、結局1軍出場すらなかった。

 ポストシーズンのコーチ指導が解禁となれば、こんな不幸な事例もなくなるはずだ。(デイリースポーツ・達野淳司)

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