大勝負、仕掛けて成功する会社の条件

どうせ上場するなら、とてつもなく大きな夢をもち、世界中の資金にアクセスできる特権を活かさなきゃ!?スタートアップ上場後の成長加速をテーマに活動するシニフィアンの共同代表3人が、ほろ酔い気分で放談、閑談、雑談、床屋談義の限りを尽くすシニフィ談。3人とも兵庫出身の関西人のせいか、やたらと早口、やたらと長話。でもピリッと、ちょっとだけ役に立ちます。今回は、上場で得たものをレバレッジできた会社やその条件を語り合います。(ライター:石村研二)

上場企業だから球団を持てる?

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):世間では「上場ゴール」なんて揶揄されたりすることもあるけれど、上場でさらにビッグな夢を描いた会社ってどんな会社を思い浮かべます?

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):たとえば、ユーグレナは上場を機にステージ変わりましたね。

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):夢のある会社ですよね。

小林:大きい勝負を仕掛けた分かりやすい例っていう意味で言うと、ひょっとしたら楽天まで遡っちゃうのかな。

村上:楽天ですね、日本だと。よく時価総額が1兆円を超えた会社がこの20~30年でどのくらいあるのかってよく話すやん。1兆円を超えた会社が少ないってことはみんな知ってるんだけど、それ以上に少ないのが、上場してそれをテコに大きな勝負を仕掛けた会社。もっと少ないんとちゃうかな。

朝倉:ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイなどは先日時価総額が1兆円に達しましたし、素晴らしい会社だと思いますが、上場したがゆえの恩恵を十分に受けたのかと言うと、ちょっと外からはわからないですね。

村上:1兆円規模の成功事例にスタートトゥデイは上がるけど、上場で得たものをレバレッジした、というのはちょっと違うかもしれない。楽天はしてると思いますよ。そもそも上場企業じゃないとイーグルスは作れてなかったかもしれない(笑)

上場するからにはソフトバンクの規模を

小林:上場企業になるということは、世に大きい勝負を仕掛けるためにベットする(賭ける)ことだって言っていた人がいたけれど、確かにフィナンシャルなパワーをもっと突き詰めて利用する上場企業経営者が出てきたら面白いんやろうね。

村上:前にも話したことやけど、上場した効果を十分に活用してる会社が少ないのは本当にもったいないと思いますよ。グローバルを狙ってる会社には良い宣伝、クレディビリティ(信用)の補完にもなる。そこまで実現できてる会社が少ないからイメージが湧かないけど、5兆円10兆円ってなったときに、海外の機関投資家とか買収候補先が「あなたの会社のこと、知ってますよ」って言ってくることの意味ってあるわけじゃないですか。あと資金力もですね、結局お金を持ってるところにいいネタは集まりますからね。資金力のある上場会社になればできることはグッと広がるんとちゃうかな。

朝倉:極めて高い目標ではあるけれど、上場するからにはそれくらいの高みを目指そうということなのかもしれませんね。ソフトバンクくらいまでの規模感に至れば可能性が一気に広がると。……なんだか球団持ってる会社ばっかりやな。

世界中からお金を集める

村上:上場する意味って世界中の人からお金を募れるってことじゃないですか。世界中の人にアピールしないレベルの会社にしかなり得ないんだったらもったいないですよ。上場するためにせっかくIR部門を作って、管理コストを払ってやってるんやから。上場って世界中の人と対話するチャンスを得る機会でしょ。資本市場の最大の公益ってグローバルアクセス。上場するのって一般的には初めてグローバルアクセスを持つ場。純ドメスティックの会社でもその点ではグローバルになってるわけですからね。

朝倉:事業を海外の市場で展開するというのは非常に難しいことではあるけれど、お金を集めるのであればもう少し難易度が低い。決算説明会の資料を英語で作ってない企業って、上場のメリットを十分には活かしきれていないということなんかな?

村上:その部分では、残念ながらまったく活かしきれていないんでしょうね。 資金調達に加えて上場後の変化という意味で言うと、CSR(企業の社会的責任)的な部分も変化しますね。上場審査を経て、グローバルからお金を集めてパブリックな社会の公器になる。そういうことを期待されるっていう立場に自分の身をおくことで自他共にちゃんとせなあかん、社会に還元せなあかん、立派な会社の仲間入りをするわけです。それって社会的に責任を負うわけだから、それも上場する意義なのかなって。とにかく上場の意義がなんなのか、創業者やVCがマネタイズするという以外の側面も、より積極的に活かしていくべきでしょうね。

朝倉祐介 シニフィアン株式会社共同代表兵庫県西宮市出身。競馬騎手養成学校、競走馬の育成業務を経て東京大学法学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。東京大学在学中に設立したネイキッドテクノロジーに復帰、代表に就任。ミクシィ社への売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績の回復を機に退任後、スタンフォード大学客員研究員等を経て、政策研究大学院大学客員研究員。ラクスル株式会社社外取締役。Tokyo Founders Fundパートナー。村上 誠典 シニフィアン株式会社共同代表兵庫県姫路市出身。東京大学にて小型衛星開発、衛星の自律制御・軌道工学に関わる。同大学院に進学後、宇宙科学研究所(現JAXA)にて「はやぶさ」「イカロス」等の基礎研究を担当。ゴールドマン・サックスに入社後、同東京・ロンドンの投資銀行部門にて14年間に渡り日欧米・新興国等の多様なステージ・文化の企業に関わる。IT・通信・インターネット・メディアや民生・総合電機を中心に幅広い業界の投資案件、M&A、資金調達業務に従事。小林 賢治 シニフィアン株式会社共同代表兵庫県加古川市出身。東京大学大学院人文社会系研究科美学藝術学にて「西洋音楽における演奏」を研究。在学中にオーケストラを創設し、自らもフルート奏者として活動。卒業後、株式会社コーポレイトディレクションに入社し経営コンサルティングに従事。その後、株式会社ディー・エヌ・エーに入社し、取締役・執行役員としてソーシャルゲーム事業、海外展開、人事、経営企画・IRなど、事業部門からコーポレートまで幅広い領域を統括する。

*次回【ポストIPについて Vol.10】株主総会はなぜ被害者集会化するのか に続きます。*本記事は、株式公開後も精力的に発展を目指す“ポストIPO・スタートアップ”を応援するシニフィアンのオウンドメディア「Signifiant Style」で2017年9月22日に掲載された内容です。

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