驚きのフットワーク ベンツ「E220d」

メルセデス・ベンツE220d 4MATICオールテレイン(4WD/9AT)【試乗記】 © webCG Inc. 提供 メルセデス・ベンツE220d 4MATICオールテレイン(4WD/9AT)【試乗記】

メルセデス・ベンツE220d 4MATICオールテレイン(4WD/9AT)

ステーションワゴンの実用性とSUVらしい姿かたちを特徴とする、「メルセデス・ベンツEクラス」の派生モデルに試乗。他ブランドにも見られるお手軽なクロスオーバーかと思いきや、その走りは、驚くほど素晴らしいものだった。

高価だけれどリーズナブル

あの「最善か無か」という社是に心酔する伝統的なファンには「メルセデスよ、お前もか?」といわれちゃいそうなメルセデスの登場である。

「オールテレイン」なる新商品名が与えられたクロスオーバーワゴンの成り立ちは、見たまんまだ。「スバル・レガシィグランドワゴン」や「ボルボXC70」、あるいは「アウディ・オールロードクワトロ」などが1990年代半ばに先べんをつけた“古くて新しい”手法を、最新の「Eクラス ステーションワゴン」に適用しただけである。あえて口悪くいえば「ステーションワゴンの車高をカサ上げしたナンチャッテSUV」ということだ。

その861万円という本体価格は1.95リッター4気筒ディーゼルを積む「E220d」のステーションワゴン系列ではもっとも高価となる。ただし、オールテレインはE220dでは唯一4WDのパワートレインをもたされて、電子制御エアスプリングと可変ダンパーを組み合わせた「エアボディーコントロール(ABC)サスペンション」も標準装備する。

オールテレイン以外のEクラスでABCサスペンションを備えるのはノーマル系最上級となる「E400」と、さらにその上の「AMG」しかない。さらにいえば、シートも電動式の本革で、前後のシートヒーターまで標準でつく。

たとえば、4WDでもなくABCサスペンションもつかない「E220dステーションワゴン アバンギャルド スポーツ(本革仕様車)」の839万円を妥当とするならば、これだけ凝ったハードウエアと専用SUV加飾をそこかしこにあしらいながらも、22万円高にすぎない(?)オールテレインの価格は十二分にリーズナブルといっていいと思う。

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足まわりの出来に感心

オールテレインの最低地上高は普通のステーションワゴンの25mm増しで、そのうち15mm分はSUV的なビジュアルのキモとなるタイヤ径拡大によるものだ。

パワートレインやサスペンション、パワステ、横滑り防止装置(ESP)などを統合した走行モード切り替えはデフォルトで4種類あるが、ほかのEクラスにある「スポーツ+」モードが省略されるかわりに「オールテレイン」モードが用意される。オールテレインモードは車速35km/h以下限定で、車高がさらに20mm上がる悪路&段差専用である。

さらに5つ目のモードとして個別のセッティングを自由に組み合わせられる「インディビジュアル」モードがあるのだが、パワートレインとESPの個別設定にはひそかに「スポーツ+」モードが残されており、それはこの個別設定モードで選ぶことができる。

今回は基本的にオンロードでの試乗しかできなかったが、乗り心地と操縦性はひと言でいって、素晴らしい。ハイトの高いタイヤと潤沢なサスストロークを生かしたライド感は、タイヤが転がりだした瞬間に、思わずホッコリする快適さだ。まあ、普通のEクラスと直接比較すれば、地上高が増大した分だけの腰高テイストがなくはない。しかし、一般公道を現実的なペースで走るかぎり、車高カサ上げのメリットをいろんな場面で実感したが、デメリットはほとんど感じなかった。

低速でもっとも快感なのはもちろんサスペンションを最柔の「コンフォート」にしたときだが、客観的に見れば、少しばかり上下動が大きめで、ステアリングに対する反応もちょっと遅れる。市街地ではタメ息が出るほど快適でも、つづら折りの道で先を急ぐようなケースでは、歯がゆく思うこともありそうだ。

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インディビジュアルモードで走りを満喫

しかし、サスペンションを1段階引き締めた「スポーツ」モードにすると、オールテレインの足取りは、まさにドンピシャにして絶妙。文句のつけどころがなくなる。スポーツといっても競技車的なゴリゴリ味になるわけではなく、一般的乗用車としては、それでも比較的“柔らかい”といえるレベルである。

スポーツモードで走るオールテレインは、車高を生かした豊潤なストローク感をいかんなく披露しつつも、コンフォートモードにあったオツリめいた上下動がピタリと解消される。パワステの手応えもスムーズそのもので、絶えずクリアな接地感を伝えてくれる。

それでも普通のステーションワゴンと比較すれば、上屋の前後左右の動きをわずかに感じるものの、限界は低くない。なにせ足もとは完全なサマータイヤで、しかも高級スポーツ銘柄(試乗車は「ブリヂストン・ポテンザS001」)だから絶対的なグリップ性能は高い。さらに、フルタイム4WDゆえに、ディーゼルゆえの大トルクでも、とりあえずアクセルを踏んでいれば姿勢を大きく乱すこともない。

個別設定モードで個別のセッティングでいろいろイジくってみると、個人的になかなかオツな味わいと思ったのは、シャシーやパワステを「スポーツ」にしたうえで、パワートレインとESPを「スポーツ+」にしたときだった。

オールテレインは基本的に完全なシャシーファスターカーなので、ドライ舗装路ではなんの事件も起こらないタイプだが、パワートレインをスポーツ+にすると9ATの変速は明らかにキレを増して小気味よくなる。さらにESPはスポーツ+で介入が少し遅れるので、そこで積極的に踏んでいくと、前輪が引っ張る力より後輪の蹴りがわずかに上回る瞬間がある。そのときの素直な回頭性はちょっと気持ちいいのだ。

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Eクラスの中でも優等生

それにしても、このオールテレインのステキすぎる乗り心地や操縦性には、ABCサスペンションの効能が絶大と思われる。同サスペンションは減衰力を連続可変する電子制御ダンパーに加えて、バネレートも可変式なのが最大のキモといっていい。

減衰力を変えるだけでも操縦性やロール特性、限界特性をかなりの振れ幅で変えられるのは、各社の電子制御可変ダンパー車を見れば理解できる。しかし、最終的なロール量や限界値を決定するのはあくまでバネであり、極論すれば、ひとつのバネについて最適な減衰力のポイントはひとつしかない。そして、重心が高いほど、路面や速度に応じたバネや減衰力のスイートスポットもせまくなる。複数のバネレートと減衰力を使い分けられるABCサスペンションでなければ、オールテレインもここまで素晴らしいフットワークにはならなかったと思う。

オールテレインの商品企画はハッキリいってお手軽そのものだ。言葉は悪いが、もはや「何番煎じだよ?」というツッコミすら、する気にもならないほどに手あかのついた手法である。

逆にいうと、オールテレインはそれだけ技術的なお手本も多い。さらには現行Eクラスのデキの良さや「GLE」のノウハウも考えれば、ABCサスペンションなどという凝ったメカニズムを使わずとも、もっといえば2WDでも、それなりに悪くないクルマができたと思われる。

まあ、将来的にそういう“廉価版オールテレイン”が出てくる可能性もなくはないが、こういうお手軽商品にも(というか、こういう商品だからこそ?)技術力をフル投入して、いきなり“ベストEクラス”とでもいえそうなモノにしちゃうところが、現代的な解釈でいうところの「最善か無か」なのだろうか。

(文=佐野弘宗/写真=峰 昌宏/編集=関 顕也)

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テスト車のデータ

メルセデス・ベンツE220d 4MATICオールテレイン

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4950×1860×1495mm

ホイールベース:2940mm

車重:1980kg

駆動方式:4WD

エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ

トランスミッション:9段AT

最高出力:194ps(143kW)/3800rpm

最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1600-2800rpm

タイヤ:(前)245/45R19 102Y/(後)245/45R19 102Y(ブリヂストン・ポテンザS001)

燃費:16.8km/リッター(JC08モード)

価格:861万円/テスト車=928万8800円

オプション装備:ボディーカラー<ダイヤモンドホワイト>(19万3000円)/レザーエクスクルーシブパッケージ<パノラミックスライディングルーフ+前席シートベンチレーター+ヘッドアップディスプレイ>(39万4000円)/フロアマット プレミアム(9万1800円)

テスト車の年式:2017年型

テスト開始時の走行距離:1543km

テスト形態:ロードインプレッション

走行状態:市街地(1)/高速道路(6)/山岳路(3)

テスト距離:631.9km

使用燃料:43.0リッター(軽油)

参考燃費:14.7km/リッター(満タン法)/15.6km/リッター(車載燃費計計測値)

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