甲子園のトラウマ克服 神宮の頂点に

決勝で完封勝利し、日体大を秋の大学日本一に導いた東妻 © スポーツ報知/報知新聞社 決勝で完封勝利し、日体大を秋の大学日本一に導いた東妻

 秋の高校・大学日本一を決める明治神宮大会は熱戦が展開され、高校の部では明徳義塾(高知)が36年ぶり2度目、大学の部は日体大が37年ぶり2度目と、ともに大会史上最長ブランクでの優勝を成し遂げた。寒空の下、激闘を見つめたスポーツ報知・山崎智キャップが印象に残ったシーンを振り返った。

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 あの春、直球が聖地の黒土を叩いて敗れた右腕は、最速152キロに進化し、神宮の頂点に立った。日体大・東妻(あづま)勇輔投手(3年=智弁和歌山)。苦い記憶を乗り越え、秋の大学日本一に輝いた。

 14年センバツ1回戦の智弁和歌山対明徳義塾。高嶋仁、馬淵史郎の名将対決は互いに譲らず、1―1で延長に突入した。12回に智弁和歌山が1点勝ち越し、その裏1死一、三塁でエース・東妻が送り込まれた。直後、明徳が同点スクイズ。熱戦は15回にもつれた。

 引き分け再試合目前で、東妻は1死満塁のピンチを背負った。1ストライクからの2球目。外角139キロが捕手の手前で弾んだ。暴投で15回サヨナラ負け。背番号1は「低めを意識しすぎて、引っかかった。試合を壊して申し訳ない」と肩を落とした。

 悲痛な敗戦。日体大進学後も「トラウマになっている試合ですね」と言う。2年春の首都大学リーグ戦後には右肩、右肘痛を発症。約2か月マウンドを離れたが、同期の右腕・松本航(明石商)の活躍に刺激され、負けん気に火がついた。ウェートトレで太もも、お尻回りを強化。身長170センチながら、直球は高校時代の最速144キロから152キロに伸び、課題の制球力も向上した。

 今秋はリーグ史上16人目のノーヒットノーランを達成。神宮では初戦で救援し、3者連続3球三振を含め、打者11人から9Kを奪った。さらに、07年の東洋大・大場翔太らに並ぶ決勝戦最少タイの2安打完封。「ピンチではギアを上げて、より強い球を捕手に届けようと思っている」。剛球は地をはい、真っすぐ伸びた。

 くしくも、センバツで熱闘を演じた明徳義塾が高校の部で優勝。その翌日、恩師・高嶋監督の母校である日体大を37年ぶりVに導いた。5歳下の弟・純平は智弁和歌山1年の正捕手で、今秋の近畿大会準優勝。あのサヨナラ負けから、4年ぶりのセンバツ出場は確実だ。神宮で兄が示した気迫は、甲子園の弟のミットに届く。(山崎 智)

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