打倒広島に暗雲、とん挫した虎の補強
金本阪神の先発投手強化を狙った補強工作が頓挫している。球団幹部は「FA、トレードの両市場とも調査したが、今年は人材難。成否はともかく、交渉したい投手すらなかなか候補に上がってこない」と半ば諦め顔である。
ドラフトで仙台大・馬場、亜大・高橋両投手を獲得したが、いまから即戦力と当て込むわけにはいかない。先に入団発表したWBC台湾代表の国立台湾体育運動大・呂彦青投手は、あくまで将来性を買ったもの。入団内定の前インディアンス、ディエゴ・モレノ投手は外国人投手枠の関係からリリーフ陣のバックアップ要員でしかない。
「実質的には先発スタッフの補強はゼロに等しい。金本監督は既に即戦力投手の補強を断念しており、現有戦力の底上げを図る決意を固めているが、内心は不安でいっぱいだろう」と球団OBは同情する。
FAではロッテ・涌井と西武・牧田に触手を伸ばしたが、2人ともメジャー志向で早々に撤退。トレードにしても2ケタ勝利を見込める投手を放出するほど余裕のある球団は見当たらなかった。
今季の阪神は2位に躍進したとはいえ、連覇した広島とは10ゲームの大差。戦力面で上回ったのは、ドリス、マテオ、桑原を中心にした救援投手部門だけだった。「広島に対抗するには、水物の打線では危険すぎる。防御を固めるのが一番で、先発陣を強化すれば五分に渡り合える」とも先のOBは強調する。
安芸での秋季キャンプで金本監督が1年目の小野、才木を投手部門の「キャンプMVP」に選出したのは、期待度の高さの表れと見る関係者は多い。今季12勝の秋山、11勝のメッセンジャーを除けば、来季の先発ローテ要員は不透明の域を出ないため、藤浪、岩貞の復活や若トラに期待するのは当然だろう。
いずれせよ、補強断念による舵の切り替えは容易な作業ではない。(スポーツライター・西本忠成)