プロ野球、来季からの新ルールに賛否

「リクエスト」で野球は面白くなる!? 来季から導入される新制度に賛否両論: ヤクルト監督時代、審判団に抗議する真中氏。リクエスト導入でこういうシーンは減るのか… © サンケイスポーツ 提供 ヤクルト監督時代、審判団に抗議する真中氏。リクエスト導入でこういうシーンは減るのか…

 【賛否両論/ザ・ミュージアム】 プロ野球オフシーズンの大型連載が、いよいよスタート。第1回は話題の事象について紙上で「賛成」「反対」の意見を戦わせる『賛否両論』。プロ野球が来季から導入を決めた新制度「リクエスト」について、サンケイスポーツ専属評論家の江本孟紀氏(70)、前ヤクルト監督・真中満氏(46)、プロ野球をこよなく愛するダンカン氏(58)が独自の意見を披露した。審判の判定に対し、監督がビデオ映像でリプレー検証を求めることができる制度だが、あなたは「賛成」、それとも「反対」?

◆江本氏「野球はそもそもミステリアス…なんでも『1+1=2』にして面白いのか」

 コリジョンルールもそうだけど、このままでは野球が違う方向に行ってしまうよ。

 野球はそもそも神秘的、ミステリアスなもの。「アウトかな?」と思ってもセーフだったり、その逆だったりすることもある。そこに機微があるんだ。なんでも機械化して、なんでもかんでも「1+1=2」にして面白いかね。ときに答えが「3」になるから面白いんじゃないか。

 なにより審判の技術向上につながらないよ。そのうちストライク、ボールも検証するようになったら審判だって「どうせリプレー検証になるんだろう」と適当になるかもしれないし、審判がいらなくなってしまうことだってありえる。判定にも審判の生き方がにじむからこそ、野球だと思う。

 最近は何でもデータや機械化する傾向にあることが気になる。ゴルフ雑誌をみていたら、岡本綾子さんもゴルフ中継の画面にデータばかりが出ることに異議を唱えていた。「その日の調子によって変わるものなのに」って。

 仮に1つのプレーで判定がひっくり返ったとして、すべてが勝敗に関わるわけでもない。試合が止まってばかりいては、時間短縮の流れにも逆行することになる。

 何でも米大リーグのあとを追いかけたがるけど、そろそろプロ野球として「No!」と言えるようにならないと。

◆真中氏「微妙な判断がはっきりするのはファンにも選手にも望ましい」

 基本的にリクエストの導入自体には賛成です。

 やはりプロ野球はその1点で勝敗が決まることもあるので、より正確なジャッジをしてもらうことはありがたい。監督をやった経験からも、正しい判定をしてもらいたい。クロスプレーなどの微妙な判断をはっきりさせることは、ベンチだけではなくファンにもメリットがあるでしょう。聞いてみなければ分かりませんが、選手も望ましいと思うのではないですか。

 ただ、今のままでのやり方には問題があるとも思う。中継テレビのカメラ映像を利用するようですが、球場によってカメラの台数も設置された角度も違う。いろいろな位置から見られるのであればいいが、どうしてもカメラで追い切れない場面も出てくるはず。せっかくリクエストをしても、映像で判断ができなかったということになれば審判も板挟みになりかねない。

 今回のリクエストに賛成の立場ではありますが、毎度思うのはしっかり設備を整えてからでもいいのではないか、ということです。

 昨季のコリジョンルール導入の際もそうでしたが、米大リーグがすでにチャレンジを導入していたからといって、すぐにやる必要はない。設備に費用がかかるのは分かりますが、やはり中途半端な形ではなく、しっかり納得できる状況で行われてほしいと思う。

◆ダンカン氏「判断が分かれたら挙手で決定!それを生中継して〜」

 『リクエスト』に関しては賛成!!とした上で『裁判員審判制』の導入を提言するのだ。

 まず、これまでのリプレー検証では、VTRで審判団が確認している時間があまりにも長い。スタンドの観客を「おいてけぼり」にしていませんでしたか?ということ。

 そこで、モニタールームの審判団のやりとりをスコアボードの大型ビジョンで生中継してほしい。

 責任審判が「VTRを見てどなたか意見を?」「はい○○です。私は今のホームでのタッチアウト、タイミング的にもアウトだと思っていましたが、センターカメラから見ると走者の左手がミットをかいくぐりベースの一角をなでていると見てセーフを主張します」「△△です。確かにそうにも見えますが、走者の左手はわずかに浮いてベースにタッチしていないと見ます。よって判定通りアウトを主張します」

 そして責任審判が「では裁判員審判で判断を決定します! (予備審判を含め5人いますが)アウトの審判は挙手を!!」

 さあ、判定はいかに…。息をのむスタンドもハラハラドキドキ。これなら盛り上がること間違いなし。ファンにどう興奮を提供するのか、そういうことも大切だと思う。

◆解説

 日本の野球のルールは米大リーグ(MLB)が規定するものに基づき、公認野球規則で規定される。基本的にはMLBでルール変更があった場合、翌年にプロ、アマ合同の規則委員会で導入が検討される。

 MLBでは2014年シーズンからチャレンジ制度を導入。日本では審判員の技術向上の面から見送られてきたが、今年5月に検討委員会を設置。12球団実行委員会などでも話し合いを続けてきた。MLBだけでなく、その他の競技でも映像を用いたリプレー検証が行われていることもあり、10月の同委員会で導入が決まった。

 名称については「チャレンジ」では審判員に対して挑戦的なイメージがあり、「リクエスト」が採用された。来季からセ、パ両リーグのルールなどを規定するアグリーメントに記載される。 (NPB担当・芳賀宏)

リクエスト

 米大リーグ(MLB)で2014年から導入されたチャレンジの日本版となる「リクエスト」は、2018年の公式戦から導入される。

 外野フェンス際の打球や全塁上のアウト、セーフの判定について、監督が手でモニターを意味する四角をかたどってリプレー検証を要求できる。1試合に2度まで。判定が覆った場合、回数は継続。延長に入った時点でリセットされ1度のみとなる。使用される映像はテレビ中継映像。本拠地球場と地方球場のカメラ台数の差が課題とされる。

 MLBでは、即座に正確な判定が下せるよう、30球場それぞれに7〜12台のカメラを設置。1日8人の分析担当審判が映像をチェックしている。

MLBのチャレンジ成功比率

 2017年シーズンのMLBでは「チャレンジ」の結果、判定変更なしは721度(50.7%)、変更ありは701度(49.3%)と比率は拮抗している。 (NPB調べ)

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