GP初戦、世界女王が示した圧巻の強さ

圧巻の強さと美しさを見せた世界女王メドベデワ。平昌五輪までに果たして“ライバル”という存在が現れるのか? © photograph by ISU/ISU via Getty Images 圧巻の強さと美しさを見せた世界女王メドベデワ。平昌五輪までに果たして“ライバル”という存在が現れるのか?

 GP初戦、ロステレコム杯の女子。

 世界女王エフゲニア・メドベデワが相変わらず、圧巻の強さを見せた中で、ベテランのカロリーナ・コストナー、そして樋口新葉が健闘して2位、3位に。レベルの高い女子の戦いとなった。

 エフゲニア・メドベデワの新SPは、イリヤ・アベルブフ振付によるショパンの『ノクターン』を使用したプログラムである。リンクの中央に出てくると、演技前にしばらく目を閉じて精神統一する表情は、とてもまだ17歳とは思えない迫力を感じさせた。

 バイオリンの音色にのってフライング・キャメルスピンから演技を開始。次のステップシークエンスの最中に、少しエコーのかかった「Come Back……」というミステリアスな女性の声が入る。この演出も含め、この作品は魂の旅を表現したプログラムなのだと後に本人が説明してくれた。

 後半の3フリップ+3トウループ、3ループ、2アクセルと完璧にきめ、80.75を獲得。スピン、ステップは全てレベル4、ジャンプも全てプラスの加点がつくという女王らしい演技を見せた。

フリーで転倒が1回あるも、余裕の勝利。

 フリーは、ダニル・グレイヘンガウス振付、映画『アンナ・カレーニナ』のサントラを使用したプログラム。3フリップ+3トウループ、3ルッツ、3サルコウ+3トウループなど、合計7度の3回転ジャンプをきれいに成功させたが、最後の2アクセルで転倒。

 めったにジャンプミスをしない彼女の失敗に、会場は驚きのどよめきに包まれた。

 だが本人は余裕の笑顔のまま、落ち着いて残りを滑りきった。フリー150.46でトップを保ち、総合231.21で優勝。

「今日は良い演技ができたと思います。ミスもあったけれど、特に最後のアクセルはちょっと喜ぶのが早すぎた。今後の教訓にできる有益なミスでした」と会見で語った。

 この大会では、少なくとも転倒1回ぐらいで自分の地位が脅かされることはないという自信に基づいた、圧倒的な貫禄が感じられた。

ノーミスで滑りきったベテラン、コストナー。

 30歳のカロリーナ・コストナーは2013/2014年シーズン以来、4シーズンぶりとなるGPシリーズ出場である。

 SPの曲はセリーヌ・ディオンがフランス語で歌う『Ne Me Quitte Pas/(邦題)行かないで』。

 3+3トウループ、3ループ、2アクセルとジャンプの難易度では他のトップ女子に劣るものの、ひとつひとつの要素の質が高く、流れるスケーティングの美しさを強調した王道の演技で74.62を手にした。

 フリーでの曲『牧神の午後』は、2010/2011年シーズンでも使った音楽だ。

 往年の名選手、ジョン・カリーやジャネット・リンも滑ったことがあるこのドビュッシーのメロディは昔からのフィギュアスケートの関係者にとっては思い入れのある曲でもある。

 カリー本人から手ほどきを受けたことのある振付師のローリー・ニコルが、この音楽をコストナーに与えたのには、特別な思いがあったに違いない。

「この演技でスタートできたのは特別なこと」

 コストナーは3フリップ+2トウループ、単発の3フリップ、3ループなど、6回の3回転ジャンプをきれいに成功させ、最後まで流れの途切れない素晴らしい演技を見せた。

 フリー141.36、総合215.98で2位を保って4年ぶりになるGPメダルを手にした。

「6分間ウォームアップではなかなか体のリズムが取れなかったけれど、出番までの待ち時間に気持ちを整えてエネルギーを充電することができました。まだまだ磨きたい部分はあるけれど、GPシリーズをこの演技でスタートできたのは特別なこと」と会見でコメントした。

スピードのある演技で3位に入った樋口新葉。

 16歳の樋口新葉は、マッシモ・スカリ振付、バレエ『ドンキホーテ』の2幕目で演じられる『ジプシーダンス』の音楽でSPを開始。9月の初戦ロンバルディア杯では、自己ベストを更新したプログラムである。

 持ち前のスピードのあるスケーティングを生かして、大きな2アクセルを着氷。その後2種類のコンビネーションスピンを演じた後、後半で3ルッツ+3トウループ、3フリップを降りて、最後までノーミスで滑りきった。

 嬉しそうな表情でキス&クライに向かったが、69.60という数字が出ると、少し表情を曇らせた。コンビネーションの2つ目のジャンプ、3トウループが回転不足の判定を受けていた。

「大きな失敗無く終われて嬉しい。(判定については)わかりやすいミスだったので、明日は(気持ちを)切り替えます」とコメントした。

「次につながる試合になった」と笑顔の樋口。

 翌日のフリーでは、シェイ=リーン・ボーン振付『スカイフォール』で2アクセルから演技を開始。

 得意な3ルッツ+3トウループのコンビを二度成功させ、SPではエッジ注意マークがつけられた3フリップも、フリーでは無事に承認された。

 唯一のミスはサルコウが2回転になったことだが、合計6度の3回転を成功させてフリー137.57。総合207.17で3位を保った。

「SPの回転不足とエッジのテンションが(フリーでは)つかなかったことがとりあえず良かった」「去年より点数も高いし、内容もすごく良くて、まだまだ課題もあるけれど取りあえず安心」と演技後に語った。

 9月のロンバルディア杯よりも10ポイントほど総合点は低かったものの、本人的にはここでの演技のほうが良かったと感じたという。

「次につながる試合になった」と笑顔を見せていた。

シニアデビューの坂本は総合5位と健闘。

 シニアGPデビュー戦だった坂本花織は、SPはブノワ・リショー振付によるベートーベン『月光ソナタ』で、3フリップ+3トウループ、3ループ、2アクセルをきれいに成功。滑り終えると、嬉しそうに拳を振り上げた。68.88で樋口に次いで4位という好位置でフリーに向かうことになった。

 フリーは同じ振付師による、フランス映画『アメリ』のサントラを使用。出だしの3フリップで派手に転倒という厳しいスタートになったものの、素早く立ち直って次の3サルコウを無事に着氷。その後3フリップ+3トウループなど、合計6度の3回転ジャンプをきめた。フリー125.12、総合194.00で5位だった。

 演技直後は、記者たちの前で悔し涙を押さえきれなかった坂本だが、一夜あけての取材では「ショートで上のマーク(要素点)は(全体の)2位で自信になった。でも下の点数(5コンポーネンツ)が足りないので、そこをしっかり上げていけば、伸びてしっかり点数が出てくるんじゃないかなと思いました」とこの大会での感想を述べた。

 表現の面で理想とするスケーターは誰かと聞かれると、「鈴木明子さん。どのジャンルでも見せ方がうまいので、参考にしています」と即答。質の高いスケーティングの基礎があるので、これからまだまだ伸びていく選手である。

 ロシアのエレナ・ラジオノワが195.52で総合4位だった。

 今週末の第2戦スケートカナダでは、ケイトリン・オズモンド、アンナ・ポゴリラヤ、マリア・ソツコワ、アシュリー・ワグナーら強豪が登場。

 日本からは本田真凜と本郷理華が挑戦する。

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