明暗分けたDeNAと広島の「監督力」
【江尻良文の快説・怪説】
セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルシリーズ第5戦(24日=マツダスタジアム)は、レギュラーシーズン3位の横浜DeNAが同1位の広島に9-3で逆転勝ち。4連勝で対戦成績を4勝2敗(広島のアドバンテージ1勝を含む)とし、19年ぶりとなる日本シリーズ進出を決めた。一方、広島はシーズンでは2位阪神に10ゲーム差、3位DeNAには14・5ゲームの大差をつけて独走優勝し、2年連続日本シリーズ出場はもちろん、33年ぶりの日本一へ向けて順風満帆にみえたのに、なぜ大一番でつまずいてしまったのか。(江尻良文)
2試合連続の雨天中止を挟み、ようやく行われた第4戦。DeNAが王手をかけることができたのは、アレックス・ラミレス監督(43)と広島・緒方孝市監督(48)の”監督力”の差。ラミレス監督の方が一枚も二枚も上だった。
広島は、5回降雨コールド勝ちした18日の第1戦で“完封”していた薮田が中4日で先発。打線も1回に丸が2ラン、新井もタイムリー二塁打を放ち、いきなり3点を先制して一方的な試合になるかとも思われた。
しかし、DeNAのラミレス監督は平然としていた。「中4日だから、あまり調子が良くない」と、プロ入り初の中4日先発の薮田の調子を冷静に分析していたからだ。4回に不振だった4番・筒香に待望の1号ソロが飛び出すと、打線に火が付き5回途中で薮田をKOしたのだった。
そして、ラミレス監督の“勝負手”がズバリ当たる。プロ2年目でレギュラーシーズン、CSを通じリリーフが1度もなく、今季もチーム勝ち頭の11勝を挙げていた今永を、あえて7回から投入。2回3奪三振パーフェクトの快投を引き出した。「2日間の中止で、(先発の)ウィーランドと今永の2人を使えた」としてやったりだ。
一方、シーズンではセ・パ両リーグを通じて断トツのチーム打率・273、総得点736を誇った広島打線が、このCSでは沈黙。チャンスをつくりながら拙攻を繰り返す姿は、別のチームのようだ。
第4戦でも、1点を追う6回に無死満塁の絶好機を迎えたが、緒方監督が2者連続で送り出した代打(岩本、小窪)は連続三振。続く打撃好調の田中も打ち取られ無得点に終わったのは、返す返すも悔やまれる。
この日は、今季リーグ4位の打率・310をマークしながら右ふくらはぎを痛めて2軍で調整していた安部が合流。ベンチに切り札として控えていたが、すでに5回先頭の場面で代打に送り(三邪飛)、“カード”を切ってしまっていた。
さらに、今季の広島は優勝決定が9月18日、レギュラーシーズン最終戦が10月1日。CSファイナルステージ開幕の18日まで長い“ブランク”があったが、この過ごし方が問題だった。
広島の球団関係者は「実戦感覚を取り戻すためにファイナルステージ前に、社会人チームを相手に3試合やった。シーズン中同様に打線が爆発したが、”これでCSも大丈夫だ”と錯覚したのではないか。相手はプロのレベルに遠く及ばない社会人チームの投手なのに…」と指摘する。
実際に広島は、今月11日から3日連続で社会人チームとマツダスタジアムで練習試合を行い、15-2(対JR西日本)、11-0(対三菱重工広島)、8-0(対JFE西日本)とすべて大勝している。
関係者の言葉通りならば、「油断大敵」の極み。社会人チームとの練習試合には「レベルが違いすぎる。プロの2軍レベルのフェニックスリーグに参加するとか、むしろチーム内でシート打撃をやった方がマシ」との異論もある。
「“逆転の広島”といわれるように、広島というチームは投手力で勝ってきたわけではない。打線で勝ってきたのだから、“水物”といわれる打線がいったん湿れば、勝てなくなるのも道理」と前出の球団関係者。
もともと、DeNAは今季セ・リーグで広島に唯一勝ち越し(13勝12敗)、敵地でファイナルステージの舞台のマツダスタジアムに限っても5勝6敗とほぼ五分。“下克上”の要素はひそんでいた。その上、昨年のCSファイナルステージで広島に1勝しかできず一蹴された経験を生かし、ラミレス監督の学習能力、監督力が発揮された。
熱狂的なカープファンの「37年ぶりのリーグ連覇の次は33年ぶりの日本一を」という熱望を背に戦った緒方監督だったが、本拠地で今季ワーストとなる4連敗でまさかの終戦。「ラミちゃんの采配はズバズバきていた。もっと勉強しなくては」と悔しさをかみしめた。
