商工中金不正、社長が辞任の意向表明

 「組織の信頼の根底を揺るがす重大な事態と深刻に受け止めています」。危機対応業務を巡る不正融資の調査報告書を発表した25日午後の会見で、商工中金の安達健祐社長(元経済産業事務次官)は深く頭を下げた。安達氏が会見を行うのは不正が発覚した4月以来2度目。自身の経営責任は認める一方、所管する経産省の責任は強く否定する一幕もあった。

 東京都中央区で行われた会見。手狭な会場は報道陣で埋め尽くされた。沈うつな面持ちで会場に現れた安達氏は冒頭、「国民に多大なるご迷惑をおかけしていることを心よりおわび申し上げます」と消え入りそうな声で謝罪し、6秒間頭を下げた。報告書の内容説明に入ると、会場から「もう少し声を張ってほしい」との注文も飛んだ。

 書類改ざんなどがほぼ全店で行われ、組織ぐるみの不正が常態化していたことについて、安達氏は「過度なプレシャーを黙認するなどガバナンス(統治)体制が欠如しており、経営トップとしての責任を痛感している」と陳謝。自身の進退については「可能な限り早く交代したい」と初めて辞任の意向を表明した。

 語調が強くなったのは、歴代トップを送り込んできた経産省の監督責任に質問が及んだ場面。安達氏は天下りの弊害について「批判はある」と認めつつも、「ひとえに商工中金の責任」と述べ、同省の責任を強く否定した。自身が事務次官を務めていた時期にも不正は行われていたが「あくまでもガバナンス体制を講じてこなかった経営陣の責任」と繰り返した。

 会見は1時間半に及び、同席した副社長や担当部長が説明する間、安達氏がうつむく場面も多かった。安達氏は退任までは無給で職務にあたるといい、新しいトップの就任時期について最後に問われた際には「早く決めてほしい」と弱音を吐いた。【松本尚也】

Category: ,