アマゾン留守宅内配達、懸念すべき点

© atomixmedia,inc 提供 アマゾン・ドット・コムは、スマートフォンを通じてアマゾンやその他の業者を自宅に出入りさせられる解錠システム「アマゾン・キー」を発表した。大ヒット商品とはならないだろうが、時代の移り変わりを示す製品だ。世界は今、企業に対する信任増大と、個人の責務減少の時代へと急速に移行しており、これには大きな代償が伴う。

アマゾン・キーは11月8日発売、価格は249.99ドル(約2万8000円)で、利用できるのは米国37州在住のプライム会員のみ。防犯カメラ「アマゾン・クラウド・カム」と対応スマートロックを購入し、専用アプリをダウンロードすることで、配達員やペットシッターの自宅立ち入りを許可できる。

多忙なビジネスパーソンにとってはまるで夢のようなサービスかもしれないが、よく考えてみてほしい。自宅待機や予定調整ができないほど緊急に何かが必要なことなど、そう頻繁にあるだろうか。職場での私物受け取りを禁じている企業もあるが、アマゾン・キーが解決しようとしている問題は、そもそも存在しない。アマゾン・ロッカーを利用したり、隣人に代理での受け取りを頼んだり、別の日に配達を依頼したりなど、対処法はいくらでもある。

懸念1:消費者側の問題

多くの人が、自分が今立たされている岐路の受け入れを迫られている。生活にさらに多くのテクノロジーを受け入れ、それによって失うものよりも多くのものを得られることを期待するか。それとも、テクノロジーを拒絶し、自分自身の生活に変更を加えるか──。

大多数の人は、時代に完全に逆行してテクノロジーを拒絶することなどできないだろう。だが、もしソーシャルメディア上の反応が世論の縮図であると言えるなら、アマゾン・キーは行き過ぎたサービスだと受け取られるのかもしれない。

ただ、100%世間に受け入れられなければ成功とは言えない、というわけではない。アマゾンはこの商品によって膨大な数の再配達や返送を削減できる可能性があり、それだけでも投資価値はある。

懸念2:企業側の問題

フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディアは、消費者の信頼を得るための基本要件を満たせないでいる。ソーシャルメディア企業ではないアマゾンは、消費者の信頼を失ってはいない──今のところは。

プライバシーと権力の未来という点で、私たちの購買行動を把握するアマゾンは最も影響力を持つ企業と言えるかもしれない。アマゾン・キーのような技術はさらに、住宅建築法の変化につながる可能性もある。

アマゾン・キーは、消費者向けに次々と投入されている「ニューノーマル(新たな標準)」サービスのうちの一つにすぎない。ウォルマートは最近、似たようなシステムで食料品を利用者の冷蔵庫へと届けるサービスを開始した。

自宅向けサービス分野では今、熾烈な競争が勃発しており、グーグル、ウォルマート、アマゾン、そしてフェイスブックまでが、自宅内のあらゆるニーズを満たすサービスを提供するための機器を投入している。

もしアマゾン・キー(そしてスマートロック一般)が普及し、これが標準的な宅配サービスになったら? アマゾンなどの企業がしているのは、信頼の積み重ねではなく、信頼の押し売りだ。もしこの種のサービスで手違いが起きれば、大惨事につながる。どうなるかは様子を見るしかないが、スムーズな宅配を実現できる企業には莫大な利益が待っている。

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