昨季3得点の岡崎、ゴール量産のワケ

強豪リヴァプールを相手に、岡崎慎司が再び輝きを放った。決して華やかなゴールではなかったが、岡崎にとって“らしさ”が溢れる得点となった。

ミッドウィークに行われたカラバオ・カップのリヴァプール戦でゴールを決めて迎えた23日のプレミアリーグ第6節。相手は再びリヴァプール。優勝候補の一角との一戦で、岡崎は今シーズンの通算ゴール数を「3」に伸ばした。昨シーズンの得点数は同じく「3」。つまり、第6節の時点で昨シーズンの数字に並んだことになる。

■限られた時間の中で掴んだ“感覚”

4-4-2の2トップ一角として先発した日本代表FWは、立ち上がりから積極的な攻めの姿勢を見せた。開始6分には左サイドを突っ走るジェイミー・バーディーにスルーパスを供給。チャンスを呼び込むと、15分にもマーク・オルブライトンのクロスボールをヘディングシュートで合わせた。これはオフサイドとなったが、試合序盤から危険な匂いを漂わせてピッチを走り回った。

昨シーズンまでなら守備に追われ、気がついたら「シュート0本」という不本意な試合も珍しくなかった。しかし、今は違う。今シーズンの岡崎は、これまで以上にゴールへの意識を高めているのだ。

レスター加入以来、45分や60分という早い時間帯で交代させられることが多いが、それならばペース配分を深く考えず、与えられた時間内で積極的にゴールを狙っていく。もちろん守備のタスクもこなすが、守備に追われるだけでなく、ゴール前でも存在感を示す。それが、今季における岡崎の基本的な考えだ。

「(最前線に陣取る)バーディーの近くに行くような感じでプレーしている。だから(チームメートも、自分の動きが)分かりやすいかもしれない。例えば、今までなら足元でボールをもらってワンツーをしていたところを、『ここにパスをくれ』という感じで(前方に)走る。だから、DFラインの背後に抜けるプレーが多くなっていると思います。そういう意識でやっていますね。奪われてもいいから、味方がパスを出せるか出せないかのタイミングで、自分が動き出す。そして、(味方にパスを)出させるというところでチャレンジできている」

「感覚で動いています。今までもそうだったんですけど、動きのタイミングをより早めている。以前なら『こういう時はこう抜けた方がいい』と迷ったり、『パスが出ないだろうなぁ』、『出たらしんどいな』とか思ったりしていた。だけど、今は45分だろうが60分だろうが、自分が途中交代させられる前提でやっている」

「ただ、『ここは休んでいいところ』、『ここは頑張り時とか』、そういうところも分かってきたので。もちろん、守備もやります。でも、それ以外はゴールに集中するというか。今は、決定機に顔を出すというテーマでやっています」

本人の言う「背後に抜け出すプレー」の象徴的なシーンは、40分と55分の得点チャンスだろう。いずれもオフサイドの判定に泣いたが、パスが出るか出ないかのタイミングで、DFラインの背後に抜け出そうとした。実際、リヴァプール戦で岡崎が掴んだゴールチャンスは計4回。その数は、昨季よりも上昇傾向にある。

加えて、周囲との連携も深まっている。「3季目になって、周りとの呼吸もさらにあってきたように映るが」と質問を投げかけてみると、岡崎は次のように答えた。

「『シンジはこうするだろう』というのが、チームメートも分かってきたと思う。また、『シンジはこういうプレーが好きなのか』という点も理解し始めているように思います。今までは、僕が味方に合わせることで、『シンジとはやりやすいな』と思わせていたように感じます。でも今は、『シンジはこういうことが得意だろう』と理解してくれるようになった。そこをもっと分からせていけたらいいなと。あと2年間、このメンバーでやってきて、『どこにボールがこぼれてくるか』、『どうやったら自分が決められるのか』というのをずっと見てきたので。(呼吸があってきたように見えるのは)そういうところではないですか」

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■重ねた努力と経験…そして謙虚さ

ゴールへの意識を高めた上に、周囲との連携も深まりつつある今、岡崎はハイペースでネットを揺らすようになった。この延長線上に、リヴァプール戦のゴールもあったと言えよう。CKからハリー・マグワイアが身体でボールを落とすと、ゴール前に詰めていた岡崎が足を思いっきり伸ばして泥臭く押し込んだ。経験の蓄積がなければ、このゴールも生まれていなかったに違いない。

ただ、本人は浮かれることなく気を引き締める。

「チャンスのひとつ、ひとつを決めるようにしていかないと。1点を取れたこと、ボールが自分の得意な形で入ってきていることは、ポジティブに捉えています。このチャンスを逃していれば、試合に出られなくなるかもしれないですけど、これを決め続ければチーム内でそういうポジション(=ゴールを期待される立ち位置)に入っていけると思う」

そう言ったあと、記者団から「二桁ゴールもいけるのでは?」と質問が飛ぶと、岡崎は「いやぁ、油断できないなぁ…(笑)。(FWの人数が多いため )試合に出られるか、常にわからないですからね」と言って笑った。

まだシーズンは始まったばかりで道半ば。その道がまだまだ険しいものであることは、本人もよく分かっている。

しかし、岡崎が重ねてきた努力と経験が、プレミア挑戦3季目にして大きな花を咲かせそうとしているのは間違いなさそうだ。

取材・文=田嶋コウスケ

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