「馬より騎手が主役」WASJの面白さ
© photograph by Takuya Sugiyama 武豊という騎手が競馬界において発揮している存在感は今も大きい。騎手のオールスターと銘打つからには、彼が必要だ。
8月最後の週末、北の都・札幌が、豪華イベントの目白押しで熱く盛り上がった。
ひとつは東京五輪の代表選考を兼ねた北海道マラソン。もうひとつは三代目J Soul Brothersのコンサート。そして、この「ワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)」である。「ホテルがとれない」、「空室があっても高い」とこぼしながらも、多くのファンが札幌競馬場を訪れ、国内外の名手の叩き合いを堪能した。
かつてのワールドスーパージョッキーズシリーズ(WSJS)が現在の名称になり、この時期に札幌で行われるようになってから、今年が3年目。土日の4つのレースの着順によってポイントが与えられ、その合計で個人とチーム(海外・地方チームとJRAチーム)の順位を競う。
1年目の2015年は香港のジョアン・モレイラが優勝。モレイラはほかのレースにも多く乗り、土日で7勝を挙げ、「札幌に神降臨!」と騒がれた。2年目の昨年は、JRA代表としてミルコ・デムーロが優勝。なお、チーム戦は2年連続JRAチームが勝っている。
今年は、3年連続の出場となるモレイラをはじめ、海外から6名、地方からは、予選ラウンドで4戦3勝2着1回という歴代最高得点を叩き出した中野省吾、そしてJRAからは3年連続となる武豊、戸崎圭太、ミルコ・デムーロら7名が参戦し、8月26日と27日の2日間にわたって行われた。
ラスト1戦の時点で11名に優勝の可能性が。
第1戦、26日の第10レースは、抜け出しをはかった地方の中野を、福永がゴール直前で鼻差でかわして1着。
第2戦、26日の第11レースは戸崎が勝ち、美形でも注目されたオーストラリアの女性騎手ケイトリン・マリヨンが2着。
これら2戦のポイントで、初日は戸崎がトップ。福永、田辺裕信がつづいた。
そして2日目、最終日の27日。
第3戦はこの日の第10レースで、モレイラ、武、デムーロの順で決まった。
この第3戦が終わった時点で、下位3名を除く11名のどの騎手が第4戦を勝っても優勝、という大混戦だった。
状況が分かっていれば、レースの見方も変わったかも。
それをわかったうえで最終の第4戦を見れば、さまざまな興味を持ってレースを楽しめたはずだ。勝てば優勝となれば、2、3着をとりに行く無難な乗り方ではなく、一発を狙う逃げか後方待機をするのでは……などと考えがふくらみ、それが馬券検討の材料にもなったのではないか。
しかし、実際はターフビジョンに上位のポイントが映し出されただけで、特別なアナウンスはなかった。
最終戦は、第11レースのキーンランドカップを挟んで行われる。ファンの記憶と熱気を呼び起こしつつ、見どころを確認するという意味で、なんらかのアナウンスがあったほうがよかったように感じた。実況アナウンサーに、馬場入りのとき「現時点で1位から11位までのどの騎手が勝っても今年の優勝騎手となります」と言わせる手もあったのではないか。
最終レース後の表彰式で順位を発表する形をとっているので、途中ではわからないようにすべきと考えたのかもしれないが、それではもったいない。
戸崎と福永は順位争いで互いを意識。
結局、第4戦を制したカナダのユーリコ・ダシルヴァが第3回WASJの優勝ジョッキーとなった。2位は同点でJRAの戸崎圭太と福永祐一。福永は「最後のレースは、直線で(自分が)沈んだ時点で圭太を探しました」と笑い、戸崎は「最終戦は祐一さんを目標に乗っていたのですが、意識しすぎました。昨日までトップだったので、連覇を逃したのは悔しいです」と話した。福永と戸崎がこんなふうに意識しながら乗るのも、ポイントで争うレースならではの面白さだ。
チーム戦は今年もJRAチームが勝ったが、最終戦の前に、例えば「海外・地方チームが勝つには、上位○着までを独占しなければなりません」などと観客にアナウンスすれば、こちらも見どころになったのではないか。
せっかくチーム戦をするのだから、どちらかに肩入れしながら楽しめる工夫があってもよかったと思う。
武豊を呼ぶために見えるルールも、成功の一因?
と、あれこれ書いたが、このWASJは夏の風物詩として札幌に定着した感があり、華やかでいい。その華やかさに寄与しているのが、JRA騎手の選定基準にある「顕著な活躍を認められた騎手」だ。
「勝利数上位の騎手」もそうだが、これは実質的に武を選出しやすくするためのルールにも思えるのだが、間違いだろうか。競馬は興行なのだし、札幌のファンにとっても、また、海外からの招待騎手にとっても、武がいるというだけで興味が増すはずだから、個人的にはいいと思う。この季節に実施すると、ハイシーズンのヨーロッパから一流騎手を呼ぶのが難しくなるが、オセアニアからは本当のトップを呼べるので、それもいいと思う。
札幌開催が、かつての16日間から12日間へと減ったぶんを補う……いや、また開催日をとり戻す起爆剤となるほど、このWASJが盛り上がっていくことを、札幌出身のひとりの競馬ファンとして願っている。
