甲子園勝利数で見る「野球王国」は

各都道府県の春・夏合わせた勝利数の日本地図。それぞれの勝利数が、甲子園の歴史を築き上げてきた。 © photograph by Akira Hiroo 各都道府県の春・夏合わせた勝利数の日本地図。それぞれの勝利数が、甲子園の歴史を築き上げてきた。

 関東地方は雨続きだったが、関西は相変わらずで、暑い暑い暑い甲子園が終わった。

 今年の甲子園は、メディアにとって「ままならない夏」だったのではないか。

「よし、今年は『清宮幸太郎最後の夏』で決まりだ!」

 と意気込んでいたら、清宮率いる早実は東海大菅生に敗退。甲子園に辿り着けなかった。

「うーん、残念!」

 と思ったら、甲子園が始まると、かの清原和博の本塁打記録を抜くスラッガーが登場した。広陵の中村奨成だ。

「よっしゃ、深紅の大優勝旗と中村だ!」

 と再度いきりたったら、決勝では中村は不発で広陵は花咲徳栄に負け。勝負は時の運とは申せ、ずいぶん残念なことでござんした。

甲子園のおひざ元、大阪府と兵庫県は300勝以上。

 こないだ「高校野球番付」を作った関係もあって、新入幕の大阪桐蔭がどこまで勝ち星を伸ばすかと思ったが、大阪桐蔭は3試合目で仙台育英にまさかのサヨナラ負け。たった2勝しか積み上げられなかった。本当に甲子園はままならないものだ。

 それでも大阪府は、日本一の「野球王国」である。甲子園での勝利数を都道府県別に並べてみると、それがはっきりわかる。冒頭の画像は第1回から今年までの春夏の甲子園勝利数を各都道府県に落とし込んだもの。

 題して、高校野球日本地図。

 これを見ると一目瞭然。甲子園のおひざ元の大阪府と兵庫県がともに300勝以上。野球の本場はまさにここだ。

 大阪には硬式野球部がなくなったPL学園の96勝を筆頭に、大阪桐蔭52勝、大体大浪商49勝。兵庫は58勝の報徳学園、33勝の東洋大姫路。この2地域は特定の学校が強いのではなく、強豪校がひしめいているので各校の通算勝利数は割れるが、トータルでは圧倒的で、レベルの高さは随一だ。

200勝台は東京、愛知に広島、それと……。

 続いて東京都と愛知県が290勝台で続く。東京のレベルは高いが、1974年から東西2地区になって2校が選出されるようになったのが大きい。66勝の早実、51勝の帝京、49勝の日大三が御三家である。

 愛知県は何と言っても中京大中京の存在が大きい。今夏は初戦で広陵に敗れたが、愛知県295勝のうち4割を超す133勝を挙げている。次いでは東邦の70勝だ。

 上位4都府県は日本経済の中心地で人口も多い。経済力と野球のレベルはリンクしていると言えるだろう。

 続いて200勝以上を挙げている県はというと……和歌山県と広島県である。

 和歌山は政令指定都市のない都道府県では唯一の200勝以上を挙げている。特に目立つのは今夏も出場した智弁和歌山の57勝、古豪・桐蔭(旧制和歌山中)の45勝、逆転勝利で甲子園を沸かせた箕島の37勝。智弁和歌山の高嶋仁、箕島の故・尾藤公と一世を風靡した名監督を生んでいる。

 広島は戦前から野球王国と言われた。特に戦前の呉市は「野球市」と言われ市内に100以上もの社会人チームがあったという。今夏準優勝の広陵が71勝、広島商が62勝。両校は今も定期戦をするなど宿命のライバルだ。

野球どころ四国で勝利数が多いのは愛媛と高知。

 150勝以上は神奈川県、京都府、愛媛県、高知県となっている。

 神奈川は松坂大輔、筒香嘉智を輩出した横浜が56勝だが、今夏は1回戦で敗退した。これに続くのが東海大相模の38勝である。

 強豪という印象はあまりない京都だが、勝利数歴代2位の龍谷大平安が99勝と半数以上を稼いでいる。

 野球どころ四国からは愛媛と高知が目立っている。もともとこの地域は公立校が強く、松山商は歴代勝利数5位の80勝、高知商も59勝を挙げている。今は愛媛・済美、高知・明徳義塾と私学が台頭している。

 100~149勝には福岡県、静岡県、徳島県、岐阜県、奈良県、千葉県、香川県、北海道県、埼玉県、山口県、岡山県、熊本県、群馬県が並ぶ。

 それぞれの県に一世を風靡した学校がある。例えば埼玉は今年、花咲徳栄が優勝して6勝を加算した。

 北海道は1960年から南北2地区に分かれている。以後は2代表で稼いだ勝ち星である。

豪雪地帯、過疎の進む地方は苦戦気味?

 50勝から99勝は、宮城県、沖縄県、栃木県、鹿児島県、福井県、長野県、茨城県、大分県、宮崎県、山梨県、長崎県、青森県、三重県、鳥取県、秋田県、岩手県、石川県。豪雪地帯や、過疎が進む地方が多い。

 また栃木、茨城、三重などは、隣県の強豪校に選手が流出する傾向があるようだ。こんな中で1958年に初めて参加し、本土復帰後の1975年から毎年代表を送り込んでいる沖縄県は、今夏も出場した興南が2010年に春夏連覇するなど、躍進著しい。

 50勝未満はというと滋賀県、佐賀県、福島県、島根県、山形県、富山県、新潟県の7県である。

 やはりというか、豪雪地帯と過疎が進む地域が多い。7県のうち6県は優勝校を出していないが、佐賀県は1994年夏に佐賀商、2007年に佐賀北が優勝している。ともに県立校と言うこともあり、高校野球ファンに強烈な印象を残した。

通算31勝の新潟だが、ここ近年は日本文理などが躍進。

 そして甲子園での勝利数が最も少ないのは、通算31勝の新潟県である。

 新潟は知っての通り全国一の豪雪地帯であり、野球をする環境としては厳しかった。

 そもそも新潟県単独で代表を出すようになったのは1974年から。それまでは北陸代表、甲信越代表、北越代表として他県との試合を勝ち抜かなくてはならず、1927年から1957年まで31年連続で地方大会で敗退するなど、甲子園にはめったに出場できなかった。

 しかし2009年には日本文理が決勝に進出するなど、ここ近年は健闘している。

 雪こそ降れど、新潟は野球大好き県だ。早起き野球が盛んで、野球独立リーグのBCリーグでは随一の人気チーム新潟アルビレックスBCもある。野球漫画の大家、水島新司もこの県出身だけに、今後の躍進に期待したいところだ。

 こうして高校野球日本地図を見ていくと、野球は社会の動きと連動していることがわかる。過疎の問題、地域格差の問題が高校野球の勝利数からも浮かび上がってくる。

 当コラムは「酒の肴」になる話題をご提供することを専らにしているが、酒席で小難しい話になるのも、ままあることではある。

 この地図を見ながら、侃々諤々やっていただいても良いかと思っている。ご同輩。

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