金本監督うならせた「持っている男」
© サンケイスポーツ 提供 8月20日の中日戦で延長十一回、移籍後初安打となる左前打を放つ阪神・森越祐人
振り返ってみれば、あのとき…。誰しも、そんな経験は一度や二度じゃないはず。
今だから、明かしてもいいと思う。
まだ、和田監督が阪神の指揮をとっていた、2015年。当時、1軍作戦兼内野守備走塁コーチだった高代現ヘッドコーチから耳打ちされたことがあった。
「オイッ、アイツは絶対にエエ選手になるで」
それが、森越だった。中日を14年に戦力外となり、12球団合同トライアウトを経た後、タテジマに袖を通したばかり。練習での動きを少しみただけで経験豊富な高代ヘッドにはピーンときたものがあったようだ。
「基本にとにかく忠実や。そして一生懸命やる。その姿勢がエエわ」
地味だけど、マジメ。目の前の仕事に全力で取り組む。そして何より“もっている男”だった。
15年5月23日に阪神で初めて1軍に昇格。落ち着く間もなく3試合後の26日の楽天戦(甲子園)で大役がまわってきた。
大役とは試合直前にベンチ前で組まれる円陣の声出し役。阪神では背番号順にやったりするが、偶然にも虎初打席よりも先に仕事が舞い込んだ。
チームはそこから4連勝。借金を一気に完済したのだから、大したものである。
今季、8月20日の中日戦(ナゴヤドーム)で延長十一回先頭で、虎移籍後初安打となる左前打。勝利を呼び込み、金本監督を「地道にやっている成果」とうならせた。守備力は天下一品。同23、24日のヤクルト戦(神宮)でも二塁打2本と、長年の課題だった打撃にも力強さが備わってきた。
夏のロードが終わった。阪神園芸の金沢健児さんによると、高校野球期間中、前、中、後半とほぼ等間隔で1回ずつ雨が降ったため、甲子園の芝は「何年に一度」といえるぐらい良好な状態だという。
「外野の定位置あたりの傷みは例年より分かりにくいと思いますよ」
森越の1軍での甲子園初安打は近々くるだろう。29歳の苦労人から放たれる珠玉が緑のじゅうたんを跳ねる瞬間が楽しみ。そのときの高代ヘッドの表情もみてみたい。日本一の三塁コーチャーの眼力に敬服しながら。(阿部祐亮)
