サッカー選手は金持ち 本田に警鐘
© サンケイスポーツ 提供 パチューカの本拠地、イダルゴからも一望できるパルミタス地区の家々
【No Ball,No Life】日本代表FW本田圭佑(31)がメキシコ1部のパチューカへ移籍してから1カ月が過ぎた。右ふくらはぎ肉離れの影響で出遅れ、リーグ戦はいまだ出場はないが、ここにきてようやくデビューのめどが立ってきた。
開幕前に鳴り物入りで加入した当初は、地元メディアも注目していたが、いまでは本田の名前が登場する機会は減り、注目度が下がっている。最近の報道ではスペイン紙『アス』(電子版)が9日、「ホンダは特別扱いを受け、仲間の怒りを買い、ロッカールームで異変が起きている」と本田を3連敗の戦犯として伝えたくらいとなっている。
一部の日本メディアも報じたものだが、これはアスのマノーロ記者が、そのときどきの話題を自身の主観でときに大げさに面白おかしく、厳しく切る名物コラム『ドン・マノロ』で紹介したもので、その多くが関係者などへの取材に基づいたものではないのが特徴。実際にパチューカ内での本田の評価は変わらず。リハビリに取り組む姿勢など監督、選手、チーム医師などが高く評価しており、ヘスス・マルティネス会長(60)も「チームに刺激を与えている」と話す。
一方、現地でいま話題となっているのが、バルセロナ(スペイン)などでも活躍したメキシコ代表DFラファエル・マルケス(38)。この大ベテランが麻薬取引に関与している疑いが持たれており、そのニュースに関心が高まっている。
マルケスはラウル・フロレス・エルナンデス被告がまとめる麻薬密売組織と長期的な関係を持ち、組織に代わって資産を保有していた疑いで、米財務省から制裁を科された。地元記者に聞いたところ、メキシコではマフィアと一般市民は隣り合わせの生活をしており、犯罪も身近にあるという。実際に記者が滞在したホテルでも、夜になると周辺ではパトカーのサイレンがひっきりなしに鳴り続き、窓を開けると遠くで銃声らしき音が聞こえたほど。マフィアがサッカー選手に接する機会も多く、事件に発展する場合もあるという。
移籍会見で治安について質問された本田は、「思ってたほど悪くはないと思いますが(記者のみなさんは)どう思います?」と逆質問。この一言に地元記者の中には、「サッカー選手はお金を持っているのはみんな知っている。メキシコでは安心しきってはいけない」と警鐘を鳴らす者もいた。
パチューカは首都メキシコ市から北東へ約80キロのところに位置し、かつては銀の発掘や炭鉱の町としてにぎわった地方都市。スタジアムは鉱山跡をくぼみにして建設した独特なもので、パチューカのチームの愛称は“トゥーソ”(スペイン語でホリネズミの意)だ。
スタジアムから見えるスラム街のパルミタス地区はかつて殺人、強盗、暴力などの事件が横行していた。だがパチューカ州政府が治安の改善に同地区の家をカラフルに塗り替えて、犯罪率を低下させたという経緯がある。
ただ街から一歩離れれば危険が待ち構えている。同市からメキシコ市に通ずる国道85号は、いくつかのマフィアが縄張り争いをしている地域を走っており、夜の通行は止めるようにいわれている。明かりのない荒涼とした夜道を走っていると突然、車を止められ“みかじめ料”を要求される強盗も多発しており、決して安全な場所ではない。
かつて同リーグのクルスアスルのルベン・ロマノ監督が誘拐されるという事件が起きた。身代金を要求されずに半年間拘束され、その後解放されるという奇妙な誘拐だった。同監督がマフィアの恋人に手を出してしまい、それに激怒した組織の男が逆らうものへの見せしめとして拉致。金銭を要求することなく、いたずらに拘束することでその恐ろしさを誇示したという。日本では芸能人の不倫の話が絶えないが、メキシコでは女性問題が命取りとなる。
金銭目当て、女性問題、縄張り争い、八百長など、さまざまな問題が絡んでマフィアの犯罪に巻き込まれるケースが多く、昨年もメキシコ代表FWアラン・プリド(26)=グアダラハラ=が誘拐され、自ら脱出した事件が起きた。けがも回復してデビューの時期が近づいている本田。再び注目されることが予想されるだけに金銭を目的とした誘拐など、犯罪には十分注意を払ってほしい。(一色伸裕)
