米鉄鋼大手、中国から意外な贈り物

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

 米鉄鋼メーカーは中国によって極めて大きな苦痛を味わわされてきたが、今度はその中国から予想外の恩恵を受けることになりそうだ。

 中国と米国の貿易や政治面での緊張の高まりが注目されているが、中国は主な摩擦要因の一つである国内の膨大な過剰生産能力をひそかに縮小している。中国の過剰生産能力は世界の鉄鋼価格を下落させ、これが他国のメーカーへの打撃につながった。

 米鉄鋼大手のUSスチールは、不安定な株価と多額の債務に苦しんでいる。同社への投資は、世界の鉄鋼メーカーの業績回復期待を背景としている、リスクはあるものの利益が見込める賭けだ。4-6月期(第2四半期)の利益率は2008年以来の高水準であるにもかかわらず、同社株価は年初から24%近く下落している。好調な欧州部門は、中国各社の利益率を押し上げたのと同じ要因の恩恵を受ける見通しだ。その要因とは、鉄鋼が数年ぶり高値にある一方、輸入鉄鉱石が安いことだ。中核の米国部門は、ドナルド・トランプ米大統領のインフラ投資・貿易政策次第でさらに弾みがつくだろう。

 鉄鋼業界ではいつものことだが、原動力はとにかく中国だ。16年前半に資源価格は底を打った。鉄鋼価格はそれ以降、11年に政府が実施した大規模な刺激策終盤の水準近くまで上昇している。一方、鉄鉱石価格は11年当時の1トン当たり約180ドルの半値以下だ。

 鉄鉱石安の原因は、生産会社が強い中国の需要継続を見込んで供給を拡大したことだ。今や中国の港には記録的水準の在庫が積み上がっている。一方、中国の鉄鋼製品の純輸出は昨年から30%余り減少している。高炉閉鎖と建設業の活況が重なったためだ。

 USスチールの欧州部門はこうした状況の恩恵を受けるだろう。鉄鉱石安を受け7-9月期の1トン当たり利益が1-3月期のように金融危機後の最高水準近くまで回復すれば、それだけでUSスチール全体のEBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)を約10%押し上げる。実際の出荷に予想外の弾みがつかないとしてもである。

中国の鉄鋼製品の純輸出は昨年に比べ減少している(写真は中国の製鉄所、2016年4月) © Provided by The Wall Street Journal.

 商品不況の中、16年3月の同社の純負債資本倍率は1.24倍だったが、その後は純負債を40%削減した。今やUSスチールの予想株価収益率(PER)は12倍で、同業のニューコアやスチールダイナミクスと肩を並べる。

 鉄鋼業界にとって現在の主なリスクは、世界需要の最大部分を占める中国不動産セクターが突然冷え込むことだ。大気汚染が最も深刻な冬季に中国で製鉄所の閉鎖が拡大すれば、影響の一部は相殺される。より長期的なリスクは中国経済全体の減速で、18年中にはそうなる可能性がある。

 世界の鉄鋼業界は久々の好況だ。リスクはまだあるとはいえ、USスチールがこの機に乗じる条件はそろっている。

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