パリーグ優勝争いは西武菊池次第に?
開幕投手を務め、交流戦終了時点でパ・リーグの防御率1位を走っていた西武の菊池雄星が6月23日のソフトバンク戦で、3回途中7失点でKOされた。
プロに入ってソフトバンク戦16試合投げて全て未勝利という事実は、彼の苦手意識を明るみにしている。しかし少し見方を変えてみると、これは菊池だけではなく、後半戦のパ・リーグを占う意味でも、重要なカギを握っている問題だ。
シーズン序盤、菊池の登板日には必ず多くの記者に囲まれる西武の炭谷銀仁朗捕手が、好調の楽天戦を前にこう口にしていたことがあった。
「雄星と相手打線がどう組むかを聞きに来ていると思うんですけど、カード頭やし相手の出方がどうなのかとか分かりづらいんで説明できないんですよね。というのも、パ・リーグには左投手が少ないから、ビデオを見るにしても参考にするものがないんですよ」
そう、今季のパ・リーグには先発型のサウスポーが少ない。
開幕当初からそのことは気になっていたのだが、これは今季の前半戦の成績に少なからず影響を残している。左打線を組んでいる首位・楽天にとっては大きなアドバンテージになっているという意味だ。
楽天打線は「最強の1、2番」として前半戦のペナントを席巻した茂木栄五郎とペゲーロを筆頭格に、銀次、島内宏明、岡島豪郎、藤田一也と左の好打者が並んでいる。開幕から金子千尋(オリックス)に始まり、西勇輝(同)、千賀滉大(ソフトバンク)、涌井秀章(ロッテ)野上亮磨、多和田真三郎(ともに西武)高梨裕稔、有原航平(ともに日本ハム)をきっちり打ち崩してきているのだ。ウィラーやアマダーの序盤戦の不調や今江年晶、嶋基弘の離脱があっても、好調をキープできた要因には、左打者の好調さがあった。
楽天の左打者はペゲーロを除いてタイプがそう変わらないが「だからこそ、難しいところもある。リードが同じになって読まれているような気にもなってくるし」とは前出の炭谷である。
では、楽天はサウスポーが「苦手」なのか。
そうは決めつけられなかった。なぜなら、提示できるほどのデータがなく、力量がなかなか測れないというのが実情だった。例えば、茂木や銀次は左投手との対戦打率はいい方だが、チームトータルとしてどう見るかは、また別問題だったからだ。
ところが、6月19日に全日程が終了した交流戦では、セ・リーグの先発型サウスポーたちが楽天戦に先発、ことごとく結果を残したのだ。
DeNA・濱口遥大、阪神・岩貞祐太、中日・小笠原慎之助、ジョーダン、広島・ジョンソンだ。楽天は交流戦で10勝8敗だが、このうち、5敗はサウスポーが先発した試合だった。
もちろん、今季不調の吉川光夫(巨人)、石川雅規(ヤクルト)やルーキーの池田駿(巨人)は攻略しているし、対戦データが少ないというのもあって、一概に、「サウスポーは苦手」という判断材料にはならないが、炭谷が「情報量が少ない」といったところからの一つのヒントにはなるかもしれない。
もっとも、最初に書いたように、パ・リーグは先発タイプのサウスポーの絶対数が少ないのは事実だ。西武の菊池以外にローテーションを守っているのは、オリックスの松葉貴大、日本ハムの加藤貴之しかいない。ここに、楽天戦で1試合登板し、6回を3安打無失点で1勝を挙げているロッテのチェンがいる程度だ。
パ・リーグにサウスポーが多くいれば、楽天の「対サウスポー対策」は気になるところだが、23日の西武対ソフトバンク戦を見ると、菊池の存在が際だって重要度を増してくるというわけである。
菊池にとっては「自分で乗り越えないといけない大きな壁」として、今後もソフトバンク戦を一大テーマとしてくる。ただそうであるからこそ、余計に他チームとの戦いは絶対に負けられない覚悟で臨んでくるはずだ。プロ初完封をあげた相手であり、今季、すでに2勝を挙げている楽天には負けるわけにはいかないだろう。
このまま、菊池がソフトバンクに負け続け、楽天には勝ち続ける――。
あるいは、菊池がソフトバンクという巨大な壁を乗り越え、勝利を挙げ――。
また、あるいは、楽天が菊池を粉砕しサウスポーを難なく攻略する――。
どう転ぶかで、ペナントの趨勢は大きく変わるだろう。
もちろん、西武にとっても、菊池のこれからのピッチングは重要だ。現在3位につけ、楽天とソフトバンク戦の勝利は絶対条件。エースである菊池がこの両チームにどんなピッチングをみせられるかは大きなカギを握ってくるからだ。
このまま順当にローテーションが回れば、菊池は7月6日の楽天戦に先発するだろう。8月4日にはソフトバンク戦も視界に入ってくる。
パのペナントは一人のサウスポーによって左右されるのかもしれない。(文・氏原英明)
