不断の努力がにじむ松山英樹の言葉

 「ゴルフは体力よりも、主に耳と耳の間でするスポーツである」との名言は、スコットランド地方に伝わることわざに由来するとも、「球聖」と称される伝説的名選手、ボビー・ジョーンズの言葉とも言われる。ゴルフには耳と耳の間にある「頭の働き」が重要-ということだが、単に「頭を使って賢くコースを攻略しろ」といった意味だけではない気がする。

 一度のミスショットで頭に血が上ってしまってはスコアをまとめることはできないし、頭が真っ白になったままでも良いプレーはできない。いかに平常心、自然体を保てるか。常に「冷静な頭」を維持する必要がある。そう考えると、ゴルフは「胸のうちにあるもの」、つまり「心=メンタル」が大きく影響するスポーツだともいえる。

 松山英樹が米ウィスコンシン州エリンヒルズ(パー72)で行われた今季メジャー第2戦、全米オープン選手権の最終日に猛チャージを披露し、メジャーでは1980年の同選手権で青木功がマークした日本勢最高順位の2位に並んだ。世界ランキングも4位から自身の日本勢史上最高を更新する2位に浮上した。

 ラウンド後、報道陣の「終盤の優勝争いは楽しめたか?」との質問に、松山は「分からない。普通の試合でも上位にいれば緊張もするし、アドレナリンも出る」と答えたという。日本ゴルフ界の金字塔を次々と打ち立てている松山でも硬くなったり、手に汗握ったりするのか-と、サラリーマンゴルファーの端くれの一人として思った。

 だが、続く言葉がひと味違う。「そこをうまくコントロールできるか、できないかだと思う」。上位争いによって生じる変調を当たり前のこととして受け入れた上で、自身のプレーに悪影響を与えないように操るというのだ。

 目の前に池があるだけで力んでダフったり、トップしたり…。そんな小心者のサラリーマンゴルファーから見れば、大舞台で飄々(ひょうひょう)とプレーする松山は生まれつき心臓に毛が生えているようにも思えるが、そうではない。どれほどの練習を繰り返せば、緊張やアドレナリンを手なずけられるのか。血のにじむような努力を厭(いと)わない「心の働き」が、松山を世界の一流に押し上げた。

 (北川信行)

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