危険な賭け 松坂獲得で新たな火種も

危険な賭け…“中日ライオンズ”松坂に「引退の花道」の義侠心 強すぎる西武色、チーム崩壊なら一触即発も: 入団テストに合格し笑顔で引き揚げる松坂(写真)。森監督、友利氏が大きな役割を果たした © zakzak 提供 入団テストに合格し笑顔で引き揚げる松坂(写真)。森監督、友利氏が大きな役割を果たした

 昨季限りでソフトバンクを戦力外となった松坂大輔投手(37)が、昨季年俸4億円の96%ダウンにあたる1500万円(推定)で中日と1年契約した。甲子園を沸かせ、西武、米大リーグ・レッドソックスで活躍したが、ソフトバンクでは昨年までの3年間に1軍登板わずか1試合、0勝に終わった右腕の獲得に疑問の声もある。チームは低迷中だけに、新たな火だねになりかねない危険な賭けだが、西武時代の先輩、森繁和監督(63)による“男気”の獲得となった。(山戸英州)

 入団テストは23日、ナゴヤ球場の室内練習場で行われた。変化球を交えた立ち投げなど計34球を投げると約20分間で合格。2月の春季キャンプの1軍(北谷)スタートも決まった。背番号は代名詞の『18』ではなく『99』。

 眼光鋭く、スーツ姿で見守った森監督は合格の理由を次のように語った。

 「10勝、20勝しろ、とは言わない。一緒にやったことのある選手を最後に気持ちよく(プレーしてもらって送る)、ということがあってもいいのではないか。ここでやめるとかはわからないが、ただ、その道は私がつくってもいいのかなと感じたのは間違いない」

 名古屋に縁もゆかりもない松坂の中日入りには、西武出身の森監督、西武投手時代から松坂の兄貴分として特に親しい間柄だった球団編成部国際渉外担当の友利結氏(50)の2人が大きな役割を果たした。義侠心に厚い西武の先輩が、“怪物”の現役最後の花道を用意したのだ。松坂も「2人がいるチームでお世話になることには縁を感じますね」と感慨深げだ。

 友利氏は昨年9月まで投手コーチを務めたが、シーズン終盤にコーチ登録を外れ、兼任していた国際渉外担当に専念。森監督が自ら開拓したドミニカ、キューバなどの外国人選手獲得ルートを引き継ぐ、チーム強化のキーマンでもある。

 中日はチーム成績が4年連続Bクラスと低迷中。セ・リーグの観客動員では長年、巨人、阪神とともに“3強”の座を維持してきたが、スター不在もあって2015年から3年連続で広島を下回り、昨年の1試合平均も前年比3・7%減の2万7927人だった。

 「大輔には期待やいろんなことがあるから、こうして(大勢の報道陣が)集まってくれたと思う」と森監督。この日のテストは公開されなかったが、テレビカメラ16台を含む100人超の報道陣が集まった。室内練習場の壁に寄り添って、漏れ伝わるミット音に耳を傾ける姿もあった。

 一方、一部のOB、球団や中日グループの関係者に、いまだ異論があることも無視できない。

 「いまの松坂の力では“客寄せパンダ”にすらならないだろう」「若手育成のチーム方針と逆行している」「支配下登録を目指して努力している育成選手のモチベーションを下げる」といった批判から、「ドラゴンズは森監督、友利ら西武出身者の発言力が強くなり過ぎた。松坂獲得は象徴的だ。『中日ライオンズかっ』と言いたい」(中日グループ関係者)との不満までが渦巻いている。

 中日は森監督が参謀を務めた落合監督時代に、生え抜きのOBが冷遇され、パ・リーグ出身者がコーチなどに多く登用された経緯がある。いまもチームを見つめる一部OBの心境は複雑で、一触即発だ。

 こうした批判にも配慮し、松坂の入団会見は、室内練習場内で立ったまま簡素に行われた。「派手になることを回避した」(球団関係者)という。

 「周りに何をいわれようが、まだやり切った、悔いのない野球人生だったとは思えない。そう思えるまで進んでいきたい」と松坂。異論反論を封じることができるだろうか。

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