契約社員「うつ社員復帰の埋合も」
給与やその他の待遇など、様々な面で差がある正社員と非正社員。努力すれば非正社員でも道が拓けるのでは……と思いきや、そう簡単な話ではないようだ。
賃金、ボーナス、交通費、福利厚生。多くの職場で正社員と非正社員につけられた「差」は、業務内容や能力、責任に見合ったものか。業務内容に差がない場合も少なくないようだ。ならば、責任がそれほど重いのか。
小売業の契約社員の女性(39)は、正社員との格差を訴える。
「業務は正社員と変わりませんが、契約社員は組合や互助会には入れず、組織名簿に名前も載らない。正社員なら受けられる研修や記念式典の間は留守番です。正社員が育休や産休を取っている間、うつから復職した正社員が十分には働けない間、仕事の埋め合わせをするのは私たち契約社員。職場であからさまな差別はなくても、日常的に差をつけられていると感じます」
この女性は、新卒で大手メーカーに正社員として就職したが、数百人規模のリストラに遭い、09年に退職。2カ月後に現職に就いて、今年で9年になる。
業務にある程度の裁量もあり、社員食堂や交通費の支給など、契約社員にも福利厚生はつくので、「中小企業で正社員になるよりは」と現職で働き続けている。だが、給与が安い。9年の間に数千円規模の昇給はしたが、月収は20万円に満たず、おそらく、正社員の半分程度だ。
「職場では、理由はわかりませんが、契約社員は0.7人として計算されると聞きました。『あなたは1人前ではなく0.7人前、0.7人分の命』と日々言われているようなもの。新聞に載るときも、職業は『会社員』ではなく『契約社員』です。私たちは、正社員に『まだ下がいる』と思わせるための存在なのだと思います」(女性)
日常的に差別がある、という声は、AERAが行ったアンケートにも寄せられている。
「名前で呼ばれず、派遣さんと呼ばれた」「派遣社員、正社員で入館証ストラップの色が違う」もたいがいだが、「非正規は私語NG」「非正規は休憩室で仮眠してはいけない」までくると、嫌がらせのようだ。
だが、ちょっと待ってほしい。今は2018年、先進国である日本の労働市場の話だ。誠実に努力さえすれば、道が開けるはずではないか。早稲田大学の橋本健二教授(社会学)の指摘は、残念ながらシビアだ。
「階級間の移動は、一部を除いて少なくなりつつあり、固定化が進んでいます」
父親の職と本人の職を調べたところ、階級を資本家、新中間階級、労働者階級と分けてみたとき、父親の階級とその子どもの階級では、あまり動きがないことが分かってきた。
「資本家は全体の約7%に過ぎませんが、資本家出身の場合、資本家になった人は約41%。新中間階級や労働者階級では約2%程度です。新中間階級出身者は、約57%が新中間階級に、約31%が労働者階級になっています。労働者階級出身は、約56%
が労働者階級です」(橋本教授)
時代の変化も大きい。
「以前は大卒者の多くが、新中間階級でした。60年代生まれの大卒者の約66%、新中間階級出身に限れば約82%が、新中間階級になっています。ところが、70年代生まれでは、新中間階級になった人は約57%に低下する。いい大学からいい会社へ、4大を出ればそれなりの会社の正社員へ、という動きは、すでに幻なのです」(同)
そのことを、就職氷河期世代をはじめ、多くの人々は、身をもって知っている。
「いまの職場で非正規雇用者が希望や努力により正規雇用者になれると思うか」という問いには、「声をかけてもらった」「登用制度がある」とした人がいる一方で、半数近くが「制度がない」「会社次第」「難しい」と考えていることがわかる。
非正社員が正社員への転換を望む場合、理由のほとんどは「生活の安定」と「賃金・待遇」だった。雇い止めがなく、ボーナスや福利厚生があり、収入も上がる。現状はできない「結婚」も、視野に入るかもしれない。
外資系企業正社員の女性(55)は、「正規雇用でも雇い止めが横行しており、危機感をもって仕事に臨んでいる」。
「会社も、非正規雇用者には教育もチャンスも与えず、単純作業を任せ、使い捨てにしていると感じます。もし、この年齢で一度非正規になったら、その次は正規は無理だと思う。非正規雇用は最後の手段です」(女性)
落ちたくないし、一度落ちたら上がるのは難しい。「格差は下が気づくもの」という指摘もあった。この断絶を、社会はどう受け止めるのか。(編集部・熊澤志保)
※AERA 2018年2月26日号より抜粋
