2連続銀、平野歩夢が新たにした決意
© photograph by JMPA クールな表情が印象に残る平野だが、銀メダルを手にした笑顔もまた、まぶしい。
張り詰めるようなオーラは消え、緊張感から解き放たれた自然な笑みが浮かんでいた。
男子ハーフパイプ決勝でショーン・ホワイト(米国)との名勝負を演じ、2大会連続で銀メダルを手にしてから一夜。ジャパンハウスでのメダリスト会見にやってきた平野歩夢(木下グループ)は、意外なまでに饒舌だった。大事にしている思いや美学を、心の内に持っている言葉で伝えようと、ゆっくりと時間をかけて話した。
銀メダルという結果については、やや気持ちに変化があるという様子をにじませた。試合直後はさばさばとした表情が印象的だったが、一日が経って増してきたのは悔しさだった。
「昨日は目の前に金メダルを獲れる可能性がある中、あのような結果になった。自分も素直に受け入れる部分と悔しい部分が残っているので、この結果を生かして、4年後にまたリベンジしに、出られればと思う」
「また4年かかってしまうのか~」
ただ、ホワイトには敬意を示した。ラストの3本目に過去に自身が一度も挑戦したことのないフロントサイドダブルコーク1440、キャブダブルコーク1440と連続4回転を成功させた。
平野はフィニッシュエリアでホワイトの滑走を集中して見守りながら、ある思いを感じていた。
「自分よりもさらにプレッシャーのある中、最終滑走で、決めたことのないトリックを決めてくるメンタルにびっくりした。(採点には)会場の雰囲気も滑走順も関係してくる。3ヒット目くらいには、これを決めてきたら抜かされるなと思った。彼のベストが出た大会だったと思います」
2大会連続銀メダルは悔しい。会見場のバックステージでは「また4年かかってしまうのか~」と苦笑いする姿も見られた。しかし、いずれにしても4年後の目標は明確。次はもちろん頂点を獲るしかない。
何をしようか作戦を組み立てる。
そのためには何が必要か。これに関しては「ハーフパイプでは今の回転で限界まで来ているのが現状」と平野も認める。しかし、もっともっと上を目指していくという姿勢を変えるつもりはない。
「これから自分の競技レベルをさらに上げることは相当難しく、自分でも何をしようか作戦を組み立てている段階です。今できることの高さや完成度に加えて、今後ハーフパイプで勝ち続けるには1440(4回転)を3つ入れることが、必要だと思う」
平昌五輪で見せたいものは何か。大会前にそう聞かれた平野が挙げたのは「高さ」だった。五輪前は、金メダル獲得のカギを握ると目された世界初のトリック「連続4回転」に話題が集中していた。しかし、平野にとってそれは金メダルを獲るための手段という位置づけだった。
「滑り1つで、周りを黙らせる」
連続4回転以上に思いを込めて組み込んでいたのは、ルーティンの一番最初に行なうストレートのエアターン。平野は丁寧に説明した。
「自分は高さを一番の武器としています。スピンより、自分の滑りというものに魅力がある。1発で『あれがあいつだ』と分かることを1つの自分のスタイルとして、高さを追求しています」
意識し始めたのは「小学3、4年生くらいから」だという。
「1発目のヒットには必ず、誰よりも高く飛べるエアターンを用意してきました。それは幼い頃からやってきたスケートボードでも同じです。スケートボードとスノーボードで(技を)共有させながら、今はその高さで良い表現ができている。これからもそれは変えずにやりたいと思います」
スノーボードライダーとしての美学についても多くの言葉を費やした。派手なガッツポーズなどパフォーマンスでも目立つショーン・ホワイトを引き合いに出された質問に、こう答えた。
「自分は滑り1つで、周りを黙らせる滑りにこだわっている。観客を引き寄せることは自分は苦手なのか、(ホワイトと)同じようなフィニッシュ後の表現はできない。滑り1本で、1つのランで、みんなを認めさせることだけを目指すのは、これからも変わらず続けたいです」
東京五輪は身体を休めてからの話。
2年後の東京五輪に向けての率直な思いにも言及した。新種目として採用されたスケートボードは、平野が幼い頃から特訓を続けてきた競技だ。
「東京五輪をここから目指すなら、時間のない中でのすごくハードなトレーニングになると思う。自分はまだはっきり決めていない部分があります。それをこれからしっかり整理して考えられたらと思う。当然、可能性があれば、という形で考えてはいます」
今は平昌五輪の激戦を終えたばかり。身体を休めてリフレッシュした後に、具体的なプランを練っていくことになりそうだ。
「平昌五輪までの4年間は、自分にとって1日1日が試練のような毎日だった。1日1日、自分の中で目的を設定してから地道なトレーニングをしてきた。その中で自分のフィールドや、自分1人の空間をすごく大事にし、いろいろな生活の習慣なども変えてきた」
15歳から19歳までの若き4年間に力を注いだのは、決して楽しいことばかりではなかった。
「どちらかというと、自分のやりたくない苦手なことにチャレンジしてきた4年間。そのために生活からスノーボードまで共有できた4年間でした。これからも自分が大事にしていることを、高め続けなければいけないと思っています」
「人と違う滑りで上を目指して」
決意を新たにした平野は一言一言をかみしめるように、言葉を選んで、最後にこう言った。
「スノーボードで頂点をとり続けることは簡単ではないことを、今回も改めて実感しました。これからも自分で考えた式と答えの中で、人と違う滑りで上を目指し、上の結果を取り続けられたらと思う。自分のこだわっているものや勝ち方にこだわりながら、またがんばっていきたい」
もしかしたら2年後、そして4年後には必ず。平野はその歩みで見る者を惹きつけていく。
