村田修一、NPBでは「戦力外」なのか
© dot. いまだ去就が決まっていない前巨人の村田 (c)朝日新聞社
中日は1月23日、松坂大輔の入団テストを行い、その結果今シーズンの契約を結ぶと発表した。しかし『松坂世代』と呼ばれ、球界を席巻した同世代の選手で去就が未定の選手はまだ残っている。高校3年春のセンバツ決勝で松坂と投げ合った久保康友(前DeNA)、新人王を獲得した梵英心(前広島)などがそうだが、中でも実績的にナンバーワンと言えるのが村田修一(前巨人)だ。
チームの若返り方針で自由契約となったものの、昨季も限られた出番の中で100安打、14本塁打、58打点という結果を残しており、移籍先は早々に見つかると見られていたが、キャンプ直前のこの時期になっても候補すら聞こえてこない状況が続いている。そんな村田の今後について、現時点での戦力を見ながら最適な球団を探ってみたいと思う。
村田が起用されるとすれば本職のサードかファースト、パ・リーグならDHも含めた3ポジションとなる。また、レギュラーではなくても右の代打としても考えられるだろう。そこでまずは巨人以外の11球団の各ポジションの選手と次候補になる若手、中堅選手の昨年の成績を挙げてみた(代打は最も起用が多かった選手の右打者の代打での成績)。
・ソフトバンク
サード:松田宣浩(35歳・140安打・24本塁打・71打点)
ファースト:内川聖一(36歳・79安打・12本塁打・50打点)
DH:デスパイネ(32歳・125安打・35本塁打・103打点)
次候補:塚田正義(29歳・4安打・2本塁打・2打点)
右の代打:川島慶三(35歳・17打数2安打)
・西武
サード:中村剛也(35歳・90安打・27本塁打・79打点)
ファースト:山川穂高(27歳・72安打・23本塁打・61打点)
DH:栗山巧(35歳・84安打・9本塁打・46打点)
次候補:呉念庭(25歳・9安打・0本塁打・4打点)
右の代打:メヒア(33歳・19打数2安打)
・楽天
サード:ウィーラー(31歳・147安打・31本塁打・82打点)
ファースト:銀次(30歳・155安打・3本塁打・60打点)
DH:アマダー(31歳・99安打・23本塁打・65打点)
次候補:内田靖人(23歳・1安打・0本塁打・1打点)
右の代打:今江年晶(35歳・7打数1安打)
・オリックス
サード:小谷野栄一(38歳・130安打・6本塁打・47打点)
ファースト:マレーロ(30歳・82安打・20本塁打・50打点)
DH:中島宏之(36歳・123安打・9本塁打・49打点)
次候補:大城滉二(25歳・85安打・2本塁打・21打点)
右の代打:武田健吾(24歳・17打数4安打)
・日本ハム
サード:レアード(31歳・115安打・32本塁打・90打点)
ファースト:中田翔(29歳・102安打・16本塁打・67打点)
DH:近藤健介(24歳・69安打・3本塁打・29打点)
次候補:横尾俊建(25歳・32安打・7本塁打・20打点)
右の代打:矢野謙次(38歳・38打数7安打)
・ロッテ
サード:中村奨吾(26歳・77安打・9本塁打・32打点)
ファースト:井上晴哉(29歳・26安打・0本塁打・11打点)
DH:ペーニャ(36歳・53安打・15本塁打・38打点)
次候補:大嶺翔太(27歳・44安打・5本塁打・23打点)
右の代打:伊志嶺翔大(30歳・11打数1安打)
・広島
サード:安部友裕(29歳・128安打・4本塁打・49打点)
ファースト:エルドレッド(38歳・91安打・27本塁打・78打点)
次候補:西川龍馬(24歳・56安打・5本塁打・27打点)
右の代打:新井貴浩(41歳・31打数10安打)
・阪神
サード:鳥谷敬(37歳・143安打・4本塁打・41打点)
ファースト:大山悠輔(24歳・47安打・7本塁打・38打点)
次候補:陽川尚将(27歳・3安打・1本塁打・1打点)
右の代打:原口文仁(26歳・21打数4安打)
・DeNA
サード:宮崎敏郎(30歳・155安打・15本塁打・62打点)
ファースト:ロペス(35歳・171安打・30本塁打・105打点)
次候補:白崎浩之(28歳・10安打・0本塁打・4打点)
右の代打:G後藤武敏(38歳・23打数3安打)
・中日
サード:福田永将(30歳・81安打・18本塁打・49打点)
ファースト:ビシエド(29歳・83安打・18本塁打・49打点)
次候補:高橋周平(25歳・30安打・2本塁打・10打点)
右の代打:谷哲也(33歳・27打数8安打)
・ヤクルト
サード:藤井亮太(30歳・75安打・2本塁打・12打点)
ファースト:荒木貴裕(31歳・39安打・6本塁打・25打点)
次候補:西浦直亨(27歳・30安打・0本塁打・8打点)
右の代打:鵜久森淳志(31歳・26打数7安打)
こうやって並べてみると、下位に沈んだヤクルトとロッテの弱さが目立つ。しかしヤクルトは本来のレギュラーである川端慎吾と畠山和洋が戻り、上記したメンバーが控えに回るようであれば悪い布陣ではない。またロッテも期待の大きい平沢大河、上位指名で獲得した安田尚憲、藤岡裕大などサードの候補は多く、戦力の入れ替えが必要な時期であることを考えると村田の必要性は低くなってくる。村田と年齢が近い力のあるベテランがレギュラーを張っているソフトバンク、西武、オリックスと期待の若手が伸びてきている日本ハム、広島、阪神もチーム事情を考えると除外して良さそうだ。
残るのは楽天、DeNA、中日の3球団だが、中日は右の代打は不足しているものの、福田がようやく殻を破りつつあるところに村田をぶつけるのは得策ではないように見える。村田が加入することで伸び悩んでいる高橋の出番も確実に減るだろう。そして何より投手で松坂を獲得しているだけに、野手でも同学年の村田の獲得となれば課題の世代交代が遅れることは間違いない。今シーズンだけを見れば悪い補強ではないが、長期低迷から脱出するためには一度舵を切った若手路線を戻すようなこれ以上の補強は賛成できない。
そこで最終的におすすめしたいのは楽天とDeNAになるが、一つを選ぶのであれば古巣であるDeNAに獲得をおすすめしたい。宮崎、ロペスというタイトルホルダー二人がいるものの、宮崎は2年目のジンクス、ロペスは年齢面とともに不安要素を抱えており、控えの層も決して厚いわけではない。レギュラーの二人が調子を落とした時に安心して起用できる選手がいないのが現状である。FAで自ら球団を去ったという経緯はあるものの、優勝経験のある選手が少ないだけに、巨人というプレッシャーのかかるチームで結果を残し続けてきた村田の存在は大きなプラスになるはずだ。
現時点での報道を見ていると決して楽観できる状況ではないが、キャンプ、オープン戦で故障者や選手の不調によって緊急補強が必要となるチームは必ず出てくる。その時のためにもまずは自主トレをしっかり行い、いつ呼ばれても大丈夫なコンディションを維持しておくことが重要だろう。仮に開幕までにオファーがなかった場合は、本人も示唆したように実戦感覚を養うために国内の独立リーグでプレーしながら、7月末の支配下登録期限まで待つというのも良い選択肢と言えるだろう。
球界の一大勢力だった松坂世代だが、名球会入りの基準をクリアした選手はいまだおらず、そして最も近い位置にいるのが村田である。もちろん個人成績のためにプレーするわけではないが、あと135本に迫った大記録のためにも、『男村田』の復活に最後まで期待したい。(文・西尾典文)
●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。