「伝説」に学ぶロサリオ大化けのカギ
© 産経新聞 提供 阪神の新外国人、ウィリン・ロサリオ内野手
ロサリオに“フィルダー伝説”の再現を-。阪神の新外国人ウィリン・ロサリオ内野手(28)に対して金本監督は沖縄・宜野座春季キャンプで特別待遇を行わないことを明言しましたが、もっと日本流を覚え、予習する最善手があります。桑原や青柳ら右のサイドハンド投手とより多く、対決させるのです。89年に阪神入団したセシル・フィルダーは春季キャンプで右のサイドハンド御子柴にキリキリ舞い。ステイバックを訓練した結果が38本塁打。翌年からメジャーで2年連続キングを獲得する“大化け”につながったのです。フィルダーの足跡がロサリオを成功に導くはずです。
■日本式の猛練習を覚悟…そこで最善手をアドバイス
いよいよ春季キャンプのスタートまで秒読み段階になりました。3年目を迎える金本阪神も沖縄・宜野座が一軍、高知・安芸が二軍に分かれて約1カ月間の厳しいキャンプに突入します。春季キャンプの投打の注目ポイントはハッキリしています。投手では2年連続の成績不振だった藤浪が復活するのか。打者では4番を期待する新外国人ウィリン・ロサリオが期待通りの選手なのか。
「今年のウチはもうハッキリしていると思う。投手では藤浪が先発ローテを守れるのかどうか。打者ではロサリオが本物かどうか。2人が期待通りなら優勝争いは必ずするだろうし、13年ぶりの優勝も近づいてくる。それが逆なら優勝争いどころか、下位低迷の心配もある。春季キャンプでの2人の状況を見ればウチの今季はだいたい見通しが立つのではないか」
これが球団関係者の言葉です。まさにその通りでしょうね。
金本監督は打者の最大のキーパーソンに対して特別待遇の排除を明言しました。春季キャンプでは福留、糸井、鳥谷のベテラン3選手に対しては練習メニューなど特別待遇を許し、自主性に任せる方針です。「ウチのレギュラーは3人」という信頼感があればこそですが、ロサリオには一切の自主性を許さない方針だそうです。
その心は他の選手と同じメニューを消化させ、キャンプでの行動日程を共にさせることで日本流に早く慣れさせる…という狙いです。ロサリオも金本監督の要求通り、春季キャンプ初日から日本式の厳しい練習を消化する覚悟です。まあ、キャンプの練習メニューを他の選手と一緒に行うことがニュースになるのも、何かと外国人選手が注目される阪神ならでは? かもしれません。阪神のチーム関係者やファンはとにかくロサリオには絶対、成功してほしいと願っていますね。
そこでロサリオが日本野球を切実に実感し、シーズン開幕までに順応するための最善手をアドバイスしてみようと思います。
ロサリオは昨季まで2シーズン、韓国のハンファ・イーグルスで活躍してきました。2016年は127試合に出場して打率・321、本塁打33本、打点120。17年は119試合に出場して打率・339、本塁打37本、打点111。まさに文句の付けようのない成績です。これをそのまま日本で、阪神で見せてくれればOKなのですが、韓国の投手と日本の投手のレベルは違います。日本のきめ細かな制球力、弱点を徹底的に突いてくる配球を克服できるか否か、が大きな鍵です。
では、どうするか? 参考になる男がいます。1989(平成元)年に阪神に入団し、その年106試合で打率・302、本塁打38本、打点81をマーク。1年限りで阪神を退団、米メジャーのデトロイト・タイガースに移籍するや1990年が打率・277、本塁打51本、打点132。91年が打率・261、本塁打44本、打点133をマーク。2年連続で本塁打王、打点王に輝いたセシル・フィルダーです。
フィルダーは82年にロイヤルズにドラフト4巡目に指名され、85年にはブルージェイズでメジャー昇格しましたが、メジャーではレギュラーに定着できませんでした。出場機会を求めて89年、阪神にやって来たのです。右のパワーヒッターで「荒熊」の異名を取るほどの凄(すご)い体格でしたが、阪神での春季キャンプでは日本流の厳しい洗礼を浴びました。それが紅白戦での御子柴進投手との対戦でしたね。
「あの時のシーンは今でも覚えている。御子柴の横手からのスライダーやフォークにフィルダーはキリキリ舞いだった。フィルダーがまだ日本球界にデビューしていないのに、御子柴に対してチーム内からは“フィルダーキラー”というネーミングが付けられたほどだった」とは阪神OBの言葉です。
御子柴進投手は阪神一筋14年の現役生活で通算18勝26敗2S、防御率3・30。フィルダーを完膚なきまでにやっつけた89年は29試合に登板し2勝4敗、防御率3・58でした。言葉は悪いかもしれませんが、阪神でもエース格の投手ではなかったわけです。それでもフィルダーが全く打てなかった理由は右のサイドハンドから繰り出すスライダー、フォークに上半身が泳ぎ、迎えにいった結果です。
フィルダーはカルチャーショックを受けたのですが、これを糧にしました。石井晶打撃コーチとマンツーマンで打撃改造に踏み切ったのです。そのキーワードは「ステイバック」です。重心がすぐに左足に移っていた打法を矯正。右足に重心を置いて、ミートポイントを数ミリ、捕手寄りに。投球を迎えにいくのではなく、なるべく手元に引きつけてミートするように打撃スタイルを根本的に変えました。これで外角に逃げるスライダーや膝元に落ちるフォークに対して、空を切っていたバットが止まるようになったのです。
「ステイバック」を訓練したフィルダーは日本で38本塁打。メジャーでもタイトルを獲得するほどの大打者に“大化け”したわけです。結果論で言えば、御子柴はフィルダーの大恩人ですね。
フィルダーのサクセスストーリーはそのままロサリオにも通用するはずです。今の阪神で御子柴スタイルを探すなら、昨季に大ブレークした桑原や青柳ではないでしょうか。彼らの外角スライダーをロサリオがどう捌(さば)くか。捌けないなら、学ぶべきは「ステイバック」です。
つい最近でもマウロ・ゴメスは外角スライダーや低めのフォークに最後までバットが止まらず、日本を去りましたね。上半身が泳ぎ、右肩が落ちていました。右の強打者に対する他球団の攻め方は内角の懐を突いて、外角に逃げるスライダーが一般的です。左右の揺さぶりにロサリオは対応できるでしょうか…。試金石は桑原のスライダー、青柳のフォークやスライダーでしょう。
ロサリオはやや左足をオープンに構えて、懐を広くしています。その分、外角の低めがどうなのか? 春季キャンプの実戦で対応力を見極めなければなりません。前評判通りの打撃を見せるなら、阪神打線に待望の4番が出現します。苦しむのならフィルダー伝説をよく聞かせてあげることですね。 =続く(特別記者・植村徹也、毎週日曜に掲載)
植村徹也(うえむら・てつや)
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1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の月〜金曜日午後9時からの「」、土曜日午後6時半からの「」に出演中。「サンスポ・コースNAVI!」ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。
