史上最悪の中日を救うドラフト候補は
今年も運命のドラフト会議が迫ってきた。甲子園を熱狂させた“あの選手”は一体どのチームに行くのか、野球ファンは固唾を飲んで見守っている。そこで、ニュースサイト「AERAdot.」では、年間300試合以上を現地で取材する、野球ライターの西尾典文氏に球団別のおすすめ選手を選んでもらった。今回は今季セ・リーグ5位に低迷した中日ドラゴンズだ。
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球団ワースト記録を更新する5年連続Bクラスに終わった中日。低迷の要因は世代交代の失敗であり、落合博満GM時代に獲得した社会人出身の選手も戦力になっておらず、チームの将来像がなかなか見えてこない。
特に深刻なのが野手陣だ。センターの大島洋平、ショートの京田陽太以外はレギュラーが白紙の状態であり、今後が楽しみな若手も少ない。投手陣も鈴木翔太、小笠原慎之介、柳裕也などの若手にブレイクの兆しはあるが、不安定なリリーフ陣の補強は必要だろう。
【おすすめ選手・その1】
中村奨成:広陵 捕手 181cm 78kg 右投右打
夏前には清宮幸太郎(早稲田実)の指名を目指す報道も出たが、チーム事情を考えると中村の方が優先度は高い。捕手は長年の補強ポイントで、それなりに選手も獲得しているものの、レギュラーを固定できない状況が続いている。中村はまず捕手に必要なスローイング、フットワークではすでにプロでも上位のレベルにあり、夏の甲子園で猛打を見せたように打撃センスも申し分ない。10年以上の長期レギュラーを任せられる捕手の素材はそうそう出てこないだけに、最優先で指名すべきだろう。
【おすすめ選手・その2】
増田珠:横浜 外野手 185cm 83kg 右投右打
捕手以外にも若手野手が枯渇している状況で、特に外野はベテラン偏重で将来性のある若手がいないだけにスケールの大きな選手が必要だ。そんな需要にぴったり当てはまるのが増田である。バッティングに注目が集まりがちだが、守備範囲の広さと強肩も兼ね備えており、外野手の総合力では間違いなく高校ナンバーワンだ。高校時代の平田良介に比べると長打力では劣るが、打ち方に悪い癖がなく、即戦力度は上である。将来のセンター候補としてぜひ獲得を目指したい。
【おすすめ選手・その3】
嶽野雄貴:西濃運輸 投手 172cm 78kg 右投右打
又吉克樹、田島慎二以外は手薄なリリーフ陣の補強として候補に挙げたいのが嶽野だ。高校時代は無名で大学も愛知2部所属ながら着実に力をつけ、社会人でもリリーフとして活躍している。真上から腕を振って投げる150キロ近いストレートとブレーキ抜群のチェンジアップが武器で、上背のなさを全く感じさせない。勝負どころで三振を奪えるのも大きな魅力だ。1年目からリリーフの一角に入る力はあり、将来的にはセットアッパーとしても期待できるだろう。
【おすすめ選手・その4】
諸見里匠:国学院大 遊撃手 171cm 74kg 右投右打
下位で指名できそうな内野手として、おすすめしたいのが諸見里だ。小柄だが堅実な守備と、しぶといバッティングはレベルの高い東都大学野球でもトップクラス。球際に強く、スローイングにも強さがある。現在はショートだが、セカンド、サードを守れる器用さも魅力だ。荒木雅博がコーチ兼任となり、京田以外は流動的な内野陣のバックアップとしてはもってこいの人材だ。しぶとい選手として長生きする可能性も高いだろう。
【おすすめ選手・その5】
伊藤康祐:中京大中京 外野手 173cm 76kg 右投右打
増田とともに貴重な右打ちの外野手としておすすめしたいのが伊藤だ。上背はそれほどないものの、鍛えられた体と強靭なリストは高校生では上位クラスであり、夏の甲子園でもバックスクリーンに見事な一発を放った。脚力も申し分なく、打者走者として足を緩めない姿勢も素晴らしい。下級生の頃は内野手としてもプレーしており、あらゆるポジションをこなすセンスの高さも持ち味だ。内野、外野とも若さのない中日にとっては地元の貴重な人材である。(文・西尾典文)
●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。