オランダ元首相、欧州右派拡大に言及

 【アムステルダムで八田浩輔】オランダで1990年代半ばから保革連立政権を8年率いたウィム・コック元首相(79)が毎日新聞の取材に応じた。欧州で排外的な主張を掲げる右派勢力が支持を広げる背景について、経済格差や社会的不公正の拡大に伴い「不安や不確実性に人々が支配されている」と述べた。

 欧州では今年、コック氏が所属した労働党だけでなく、フランス、ドイツの国政選挙でも伝統的な中道左派政党の衰退が鮮明となった。コック氏は将来的に生活の質が維持できないことへの不安が「人々に対し、自分自身を何よりも大切に考えることを強いている」と保守的傾向を分析。また「福祉国家の概念は20世紀後半に訴求力があったが、今は違う。人々はより自律している」とも述べ、「左派政党は自らを改革し、未来への新たなメッセージを考え直す必要がある」と訴えた。

 一方、英国の欧州連合(EU)からの離脱については「加盟国がEUの利益だけでなく、損失を考えるきっかけとなった」としつつ、多くの加盟国が結束に向かう「強い信念」を与えたと強調した。さらに、仏大統領選で極右候補を抑えて勝利したマクロン大統領の存在が「EUが正しい方向に向かう期待感」を生じさせたとし、メルケル独首相との「独仏枢軸」で、安全保障など加盟国の姿勢に開きが小さい分野を中心に統合推進をけん引するとの見方を示した。

 英国のEU離脱交渉に関しては、英国の「準備不足」が交渉の進展に悪影響をもたらしていると強調。メイ英首相の政権基盤の弱体化で「加盟国の首脳はメイ氏の方針や指導力(の不安定さ)に困惑している」とした。さらに「交渉では受け身の姿勢が必要だ。(EUは)英国が本当に望む方向を見極めるまで待つ必要がある」と述べ、英EU双方に対し「誠実な対話とダメージコントロールに最大限努めることを心から望む」と求めた。

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