グルーポン大失敗を想起させる出来事
© atomixmedia,inc 提供 9月22日、英ロンドン交通局は30日で期限切れを迎えるウーバーの営業免許を更新しないと発表した。ロンドンのウーバーのドライバーは4万名、顧客数は350万名とされている。
これに対しウーバーは「即座に法廷に訴える」と宣言し、営業を続行する意思を示した。当局はウーバーの乗客の安全上の懸念や、ウーバーが規制当局の目をあざむく「グレイボール」と呼ばれるソフトを使用していることを理由に、今回の措置に踏み切ったという。
今回のロンドン当局の措置は、欧州で苦戦するウーバーへの新たな打撃といえる。ウーバーは既にバルセロナや、デンマーク、イタリアでも規制の壁に直面している。
さらに、欧州ではこのところ、オンデマンドサービス全般に対し、当局の監視の目が強まっているとアナリストは分析する。 ”ギグエコノミー”と呼ばれる形態で運営されるオンデマンドビジネスは、労働者は個人事業者としての立場で雇用されるのが一般的だ。
マングローブ・キャピタル・パートナーのMark Tluszczは「社会保険料等の社会コストを負担しないギグエコノミーへの監視の目は欧州各国で強まっている」と述べる。「仮に25%の社会的コストの支払いが義務付けられたとしたら、彼らのビジネスモデルは立ち行かなくなるだろう」
Tluszczがその例にあげるのがレストランのデリバリーサービスの「Deliveroo」だ。ロンドンで2013年設立の同社は9月21日、2016年の赤字額が1億2900万英ポンド(約129億円)に拡大したと発表。赤字額は前年度の3000万ポンドから大幅に拡大した。
「ギグエコノミーのビジネスは今後、雇用関連の法改正による、さらなるコスト増に直面する」とTluszczは指摘する。欧州の規制当局はオンデマンドサービス事業者らに、雇用条件の明確化を求め、雇用保険や有給休暇等を義務付ける動きも進めている。
英国政府はギグエコノミーで働く労働者らの法的位置づけの見直しを進めている。現状で”自営業者”として雇用されているDeliverooの配達員らもその対象となる。Deliverooの創業者のウィリアム・シューは、従業員らの手当を増額する方針だが、政府の方針が決定するまでは動きがとれない状態だ。
グルーポンの大失敗を想起させる
Deliverooはこれまで総額4億ドル近い資金調達を行っており、新たに2億7500万ドル(約307億円)の資金をソフトバンク等から調達する動きも進めていると伝えられる。しかし、同社が今後、雇用者らに新たな手当を支払うことで収益性はますます悪化するとTluszczは述べる。
Deliverooは潤沢な調達資金を活かし、赤字ながら今後数年は運営を継続できるだろう。しかし、「投資家たちはいつか、巨額な資金をオンデマンドサービスに注いだことが大失敗だったことに気づく」とTluszczは述べる。彼が例にあげるのが、かつて一世を風靡したグルーポンに代表されるクーポンビジネスだ。
クーポン業界ではグルーポンを筆頭にLivingSocial等の類似サービスが次々と立ちあがったが、その多くが壁にぶちあたった。
「ネクストビッグシングとして喧伝されたクーポンビジネスは一時のから騒ぎに終わってしまった。ベンチャーキャピタル業界は周期的に同じことを繰り返している。新たなトレンドが持ち上がる度に莫大な資金が注がれ、数年がたったある日、『俺たちは一体何をやっていたんだ』と頭を抱えることになる」とTluszczは話した。