弱過ぎるヤクルトは「上」もボロボロ
こんな体たらくでは「セミプロ」と称されても文句は言えまい。プロ野球の東京ヤクルトスワローズのことだ。7月22日に47年ぶりの14連敗(1分挟む)を喫するなどセ・リーグで最下位に沈み、今や完全なお荷物球団と化してしまっている。5位の中日ドラゴンズとゲーム差で大きく引き離され、最下位脱出へとつながる長いトンネルの出口はまったく見えていない。
2年前のレギュラーシーズンではセ・リーグ優勝を遂げ、ここから新時代の幕開けを予感させたものの、強さは継続されなかった。今となっては「あれはきっと蜃気楼(しんきろう)だったのだろう」とため息混じりにボヤく選手や関係者も複数いる。残念ながら、それもあながち的外れではない。
なぜヤクルトはこれほどまでに弱いのか。やはり何と言っても主力選手たちが次々と故障渦に巻き込まれ、チームとして大幅な戦力ダウンを強いられている点がかなり大きい。正三塁手の川端慎吾や正一塁手の畠山和洋、守護神の秋吉亮ら主戦クラスが現在ケガでチームを離脱中。ここまでも今季はシーズン序盤から次々と主力が負傷して長期離脱を繰り返す“負のスパイラル”にはまり込み、レギュラークラスのフルメンバーで戦うことが不可能な状況へと陥っている。
●手をこまねいているヤクルト球団
普通ならばフロントはこれだけの低迷地獄にはまり込む前に何らかの手を打つ。ところがヤクルトの場合は目に見えるようなカンフル剤を打たなかった。いや「打てなかった」と言う方が、むしろ正解かもしれない。すでにチームが低迷していた6月末の臨時株主総会と取締役会で堀澄也オーナーが相談役名誉会長に就き、代わって新オーナーにヤクルト本社の根岸孝成社長兼最高執行責任者が就任。本社人事に伴うトップの交代でチーム再浮上につながる何らかの抜本的な解決策が施行されるかとも思われたが結局、ヤクルトファンを納得させるような具体案は示されないまま今に至っている。
本来ならば真っ先にケガ人続出を招く原因を突き止め、これ以上の離脱者を未然に防がなければならない。ところが球団幹部は「チーム内のコンディショニングサポートグループの体制を再整備し直し、所属選手のコンディションについて連携して情報を共有できるようにしていく」と抱負を述べているだけで、その中身は不透明。これほど曖昧では本当に再整備できているのかも怪しい限りだ。球団関係者もフロントを含めたヤクルト本社の内情について、次のようにいぶかしむ。
「オーナーの交代は今年5月上旬の早い段階から決まっていた。とはいえ就任早々のオーナーがすぐさま低迷するチームにメスを入れるべく選手の大型補強、そしてコーチ陣の配置転換や懸案とされるコンディショニングスタッフのテコ入れを行うなど、大掛かりなメスを入れるための作業に対し、球団最高責任者として最終的なゴーサインを出すことは難しい側面もある。いきなり動いて失敗すれば、それこそ新体制になったばかりなのに責任を問われてしまう危険性にもつながってしまいかねない。だから新オーナーを含めた球団側は、そこを恐れてカンフル剤を打てなかったのではないか。何よりもチームの運営予算が他球団よりもさらに限られていることで、いろいろと動こうにも動けなかったのは事実だ」。
チーム低迷に一刻も早く手を打つことよりも、まずは新体制の盤石化を図ろうとしていたとすれば、実に恥ずかしい話だ。だが、やはり前出のヤクルト本社・臨時株主総会と取締役会で球団幹部らが報道陣から再建ビジョンについて問われ、まるで雲をつかむような要領を得ない答えばかりをそろって口にしていたのはチームよりも我が身のことばかり重んじる姿勢の表れだったような気がしてならない。結果としてチームは今も最下位地獄に沈みながら光すら見えていないのだから、新オーナーを含めたヤクルト本社幹部および球団幹部は反論できる資格はないと思う。
●株主のフジHDも余裕がない
まるでヤクルト球団の新体制は電車で言えば「鈍行」のようなノンビリ運転。「特急」に乗り換えたいところだが、何しろ速度の速い列車を走らせるだけのレールもやや脆弱(ぜいじゃく)だ。そのレールの役割を果たさなければならない企業こそ、20%の株を有してヤクルト球団を支えるフジ・メディア・ホールディングス(HD)である。言わずと知れたフジテレビを中核とする持ち株会社である。
「その関係でヤクルト球団はフジテレビのバックアップを得られるようになっている。だがいかんせん深刻な視聴率低迷にあえいでいることから、ヤクルト球団を盛り上げられるような番組を制作する余裕がない。まだフジテレビが元気があったひと昔前ならば、それが可能だったのだが……。今となっては野球中継の数もグンと減らし、地上波ではなく傘下のCS局での放送をベースにしている。昔はヤクルト球団がフジテレビから地上波放送で1試合につき1億円強の放映権料を得ていたこともあったが、それと比較すれば今はもうすずめの涙といったところ」(フジHD関係者)。
チームを支えるはずの「上」がこのような状態だから現場トップも当然疲弊し切っている。就任3年目の真中満監督は連日、スタンドのヤクルトファンから「真中、辞めろ」と罵声を浴びせられ続けている。これだけ負けが込めば、確かにそれも仕方ない。
ちなみに指揮官のスタイルは選手たちの自主性を重んじる「ソフト路線」が主体となっていることから、こうした低迷期においては「それが逆にネックとなってしまうのではないか」とも一部では指摘されている。2年前のリーグ優勝の時は就任したばかりの真中監督のやり方に目新しさを覚えた選手たちがうまい形で乗せられ、見事にペナントを制した。だが大低迷中の今シーズンから急に自身のスタイルを変え、事細かく選手に対してうるさくカミナリばかりを落とすようになるわけにもいかないだろう。現場での真中監督の悩みもかなり深いようだ。
パ・リーグで同じく最下位に沈む千葉ロッテマリーンズは先日、伊東勤監督がチーム低迷の責任をとって今季限りで退任する意向であることを発表した。今季が3年契約の最終年でだんだんと立場的に追い詰められている真中監督の去就も注目される。
「前オーナーの堀さんが真中監督の人間性をとにかく買っている。だからたとえチームがぶっちぎりの最下位でも、真中監督は来季続投のオファーが向けられるのではないか」(チーム関係者)。
いずれにしてもヤクルトがこのまま何一つ球団改革に踏み切らなければ、今後もチームの暗黒時代は延々と続き、アリ地獄から抜け出せなくなってしまうだろう。手遅れの事態に陥る前に本社と球団で総力を結集し、強い東京ヤクルトスワローズを再建させてほしい。まだ間に合う。
(臼北信行)
