キヤノン復調でも超巨額制裁金リスク

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 キヤノンが復調している。同社が7月27日に発表した2017年の第2四半期決算は、売上高が1兆9652億円(前年同期比18.6%増)、営業利益1719億円(同58.2%増)と大幅な増収増益。通期の見通しも上方修正し、売上高は4兆500億円(同19.1%増)、営業利益3300億円(同44.2%増)を計画する。計画を達成すれば、通期では4期ぶりの増収増益となる。

 業績の上方修正は今期に入って2度目。決算発表の度に下方修正を繰り返していた昨年からは様変わりだ。

プリンタが好循環サイクルに

 業績の回復には為替要因も大きい。今回の上方修正のおよそ3割が円安要因によるもの。だが、見逃せないのが、これまで伸び悩んできた既存事業が立ち直っていることだ。中でもレーザービームプリンタ(LBP)とカメラ事業の収益改善が進んでいる。

 LBPは中国を中心とした新興国の景気改善が追い風になっている。キヤノンは2015年ごろから製品ラインナップを刷新、印刷速度の向上や省エネ化を図ってきた。こうした新製品群が牽引役となり、2017年1~6月でLBP本体の販売数量を2ケタ伸ばした。

 LBP本体の販売は昨年後半から回復基調だった。それを受け、今期に入りトナーなど採算の高い消耗品の販売が増加してきた。「本体の数量増→消耗品増」というプリンタ事業の好循環が再び生まれてきたわけだ。

 もう一つ好調だったのがカメラ事業だ。デジカメ市場は2012年から縮小を続けている。キヤノンもその影響は避けられず、コンパクトデジカメは販売台数が続落、得意の一眼レフもようやく前期並みの台数を確保したにとどまる。

 それでもカメラ事業の収益は改善している。要因の一つが、高級品シフトだ。コンデジはプレミアムモデルの「Gシリーズ」、一眼レフはハイアマチュア(上級者)向けの製品など、高単価品の販売が好調だった。

 もう一つの要因が、ミラーレスカメラの伸長だ。ミラーレスはデジカメで唯一の成長市場。2017年の世界市場は前年比14.9%増の401万台へ増加する見通し(テクノ・システム・リサーチ調べ)。キヤノンはここで存在感を高めている。

 中でも好調なのが、今年4月に投入した小型ミラーレス「EOS M6」。小型軽量と高画質を両立した点が消費者に受け、買いかえ需要を取り込んだ。

 2017年1~6月、キヤノンはミラーレス全体で販売台数を約70%以上増やした。その結果、世界のミラーレス市場におけるキヤノンのシェアは、テクノ・システム・リサーチの予測で今年22.4%(前年16.3%)に高まる見込みだ。カメラ市場全体が厳しい中でも、伸びる分野でしっかり成果を挙げている。

立ちはだかる欧州委員会

 そのキヤノンに立ちはだかるのが、欧州連合(EU)の政策機関である欧州委員会だ。欧州委員会は7月6日、キヤノンが昨年末に完了した東芝メディカルシステムズの買収スキームについて、「欧州委員会からの承認を確実にする前に買収した疑いがある」と警告した。

 現在審議中だが、制裁金は最大で連結売上高の10%に上る。キヤノンの2016年の売上高は約3兆4000億円なので、制裁金は3400億円と超高額となる可能性がある。これまで現実に10%もの制裁金が課されたケースはないと見られているが、同社にとって大きなリスク要因であることは間違いない。

 キヤノンはこの件について具体的な言及を避けており、今回の業績見通しにもその影響は折り込んでいない。ここをクリアして初めて、キヤノンは本当の意味で回復したということになりそうだ。

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