モスル市民から「解放」歓迎の声

制圧完了でアバディ首相が正式な勝利宣言

 【カイロ篠田航一】過激派組織「イスラム国」(IS)が拠点としてきたイラク北部モスルの制圧が完了したとして、アバディ首相は10日に正式な勝利宣言をした。昨年10月に始まったイラク軍などによる奪還作戦は大きな戦果を上げ、モスル市民からは「解放」を歓迎する声が聞かれた。一方、ISはイラク国内の他の地域で依然として一定の勢力を維持しており、イラク全土で住民がISの恐怖から解放される日はまだ見通せない状況だ。

 「街はがれきだらけだが、もう爆音を聞かなくて済む。人が死ななくて済む。それだけで幸せだ。涙が出る」

 最後にISが立てこもったモスル西部に住む飲食店従業員のアミール・ナジャさん(27)は11日、毎日新聞の取材にそう語った。市職員のアフマド・フセインさん(34)は「言葉に表せないほどうれしい。友人と今日は自宅でお祝いする」と話した。

 一方、ISの「人間の盾」にされた経験を持つ住民の中には今なお当時の恐怖を思い出し、素直に喜べない人々も多い。モスルから約40キロ東のハジル避難民キャンプに逃れた住民は今月、毎日新聞の取材に「銃を頭に突き付けられ、外出もできなかった恐怖は忘れられない。軍がIS拠点を制圧しても、数十人のIS残党がモスル東部に潜伏している。互いに顔も覚えている。怖くてモスルには帰れない」と話した。

 モスル陥落後もイラクにはIS支配地域が残る。モスルの西約50キロに位置するタルアファルや、モスルの南約120キロのハウィジャなどでISは勢力を維持しており、クルド自治政府関係者は、モスルの南約200キロのハムリン山地にも拠点ができつつあると述べた。

 イラクのメディアによると、ISは今月、タルアファルで逃走を図った少数民族トルクメン人約200人を処刑するなど、モスル同様の恐怖支配を続けているという。

 アバディ首相は10日、「IS残党の掃討を今後も続ける」との決意を表明した。現地メディアによると、イラク軍は「モスル後」の掃討作戦として、タルアファルやハウィジャへの進軍を計画しているという。

 ISは2014年6月にモスルを制圧。当時の推計人口は約200万人だったが、IS支配下で家を追われたり、脱出したりした住民は90万人に上るとみられる。今後は住民の帰還問題や、破壊されたインフラの復旧などがモスル再建に当たって大きな課題となる。

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