アウディが誇る高性能スポーツクーペ

アウディRS 5クーペ(4WD/8AT)【海外試乗記】 © webCG Inc. 提供 アウディRS 5クーペ(4WD/8AT)【海外試乗記】

アウディRS 5クーペ(4WD/8AT)

アウディが誇る高性能スポーツクーペ「RS 5クーペ」が2代目にモデルチェンジ。新世代のプラットフォームに新世代のダウンサイジングターボエンジンを搭載した新型の出来栄えを、南仏のオートルートおよびワインディングロードで試した。

V8自然吸気からV6ツインターボへ

プラグインハイブリッド車や電気自動車などの新たな動力機構をはじめ、AIを含む自動操縦といった次世代技術の開発を推し進めるドイツ御三家のひとつ、アウディは、同時に最も高効率なハイパフォーマンスエンジンと、それに見合うチューニングが配された各種機能を搭載する“クラス最強”のスポーツモデルも積極的に送り出している。そのハイパフォーマンススペシャルモデルの製造部門は、従来クワトロ社と呼ばれていたが、このほど社名も新たにアウディスポーツ社として生まれ変わった。そこから初めて発表・発売されるモデルが、今回のアウディRS 5クーペである。

2010年に誕生した初代のRS 5は、自然吸気の4.2リッターV8を搭載して450ps/430Nmを発生した。モデルチェンジで2代目となった新型は、すでに日本にも上陸済みのと同様、2.9リッター(2894cc)V6ツインターボから450ps/600Nmを発生する新世代のダウンサイジングユニットを搭載する。

ちなみに、S5は基本的に同じV6エンジンでも排気量は3リッター(2994cc)、過給機はシングルターボと仕様が異なり、最高出力/最大トルクも354ps/500Nm。RS 5では84mmというボアはS5と共通だが、ストロークを3mm短い86mmとして排気量をわずかに縮小している。その理由は、0.95バールという高い過給圧によって高出力を発生するエンジン内部にかかる負荷と耐久性を考慮したためだ。

トランスミッションは従来のツインクラッチ式7段Sトロニックから、S5と同様にトルコン式ATの8段ティプトロニックに変更。スムーズなことは言うまでもなく、特に走行モードが「エフィシェント」「コンフォート」「オート」の状態では、アクセル開度が少ないうちはいつ変速したのかも分からない。一方、「ダイナミック」を選ぶとまさにマニュアルトランスミッションのように、変速時にわずかな段付き感を演出するダイレクトな制御になる。同時に、フラップが開いた左右の極太テールパイプからは、直管に近いナマのV6サウンドがとどろき、変速時にはアクセルが絞られた瞬間“ズバッ”……燃焼室からの音が響く。ステアリングもズシッと手応えと重さを増すのだが、これはS5、RS 5ともにアジャスト範囲などを個々に選択可能だ。

ということで、新型RS 5はV6ツインターボへと刷新されたパワーユニットを含め、操縦性と乗り味が最も注目すべき点である。

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乗り心地は最上級サルーンに匹敵する

RS 5の国際試乗会はフランス・トゥールーズで催された。エアバス社のホームとしても知られる空港でRS 5を受け取ると、そのままオートルートに乗りまずは高速走行性能を確認。アウディRSシリーズは最強のスポーツモデルでありながら脚は上質。つまり乗り味も重視している。無論RS 5も同様で、その滑らかな乗り味には驚きを隠せない。

すでに255/35R19タイヤのS5で予習はしていたので、引き締められた脚に乗り味の滑らかさが加わることは確認済み。しかしRS 5は、そこからさらに“驚き”といえる乗り味を披露する。サスペンションに使用するパーツのコストが格段に違う、という印象だ。テスト車にはより幅広・低偏平の275/30R20タイヤが装着されており、グリップ領域が広がる反面、偏平率の低さと接地面の拡大により、わだちや凹凸などの影響を受けやすくなっていたハズ。だが、外乱によって上下にストロークする際も、タイヤ/ホイールは前後方向にも横方向にも高剛性で、正確に決められた位置からまったくブレることがない。同じ位置で常に上下動を繰り返し、無駄な動きがない。

高速走行中に路面の継ぎ目やパッチ補修の凹凸を通過すると、硬いモノに触れた感触はあるが、ニュッと高密度な感触とともに衝撃を吸収分散、減衰し、車内にもステアリングを介しても、その硬さをまろやかにかみ砕いてから伝えてくる。サスペンションとボディーの動きをコントロールする術(すべ)は、GTカーでありながら最上級サルーンの「A8」か、と錯覚させられるほどの上質感である。

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この安定感は「クワトロ」ならでは

オートルートで周囲を見渡し、他車がいないことを確認してからアクセルを深々と踏み込む。100km/hから自動的に2段キックダウンしたギアの効果と、上限6500rpmと特別高回転ではない分、全回転域でトルクとパワーとレスポンスがみなぎる出力特性が、乗員の頭部をヘッドレストにめり込ませる。猛然と、延々とダッシュが続き、気づけばあっけなく200km/hオーバー。ちなみに「RSダイナミックパッケージ」を装備した試乗車では、未確認ながら250km/hのリミッターが解除され、280km/hまでの車速が許容される。

こうした超高速域での直進安定性の高さは、他の何ものにも変えられないクワトロ4WDの本領。外乱の影響も受けるのだが、ステアリングを握る力の加減でその動きを抑えれば事足りる。

オートルートを降り、地元民と列をなして登るはピレネー山脈。峠道をくねくね進むと、その先はフランスとスペインに挟まれたアンドラ公国である。事前に設定された試乗ルートは、街中を抜けると、低・中速コーナーの連続に高速S字など、まさに欧州のどこにでもあるニュルブルクリンクのような危険をはらむレイアウトとなる。そこをRS 5は、0-100km/h加速3.9秒という動力性能で猛進し、コーナー進入では大径ディスクと高剛性のキャリパーによって、ペダルに直結しているかのようにガツンと頼もしい限りの“引き戻し”、つまり減速Gを与えてくる。車内のGメーターによると、峠を駆け抜けた際の加速は0.8G、コーナー横GとブレーキングのGフォースは最大1.1Gに達した。

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またしても差を開けられた

コーナーはRにステアリングを沿わすだけのたやすさで曲率に関わらず楽にトレースできる。“基本は40:60”といわれる後ろ寄りの駆動配分だけでは、これほど曲がらない。そこには後輪に組まれたスポーツデファレンシャルの威力があった。

後輪左右でもトルクの分配を行うもので、すでに旧「S4」から存在するが、RS 5に装備されると、後輪から前輪を曲げにいく異次元な感覚にステアリングを戻してしまう。砂の浮いたS字の切り返しでは、瞬間的にノーズが入り過ぎると感じるほどで、ゆえにステアリングを戻す。しかし必要最小舵角でコーナーを俊速で駆け抜ける感覚に、ここもアウディの独壇場!? と感じずにはいられない。

前後左右のGフォースが大きい峠道を駆け抜ける際に、ロールもピッチングもスクオットもほぼ抑え込まれたフラットな姿勢に終始する事に気づく。それはDRC(ダイナミックライドコントロール)が、より強く応力が加わるサスペンションの減衰力を高め、安定姿勢を保つよう制御しているからだ。その実に自然な姿勢の抑え方に感動すら覚える。2002年に「RS 6」で初採用されたDRCは日本のヤマハの技術で、それが15年にわたり進化し続けている事を実感する。

次世代の内燃機関の研究開発が続くなか、いまの技術で得られる最高のパフォーマンス。エンジンもティプトロニックATもクワトロ4WDもステアリングもDRCを含むサスペンションも高剛性のボディーも、つまりはクルマ全体が合わさり剛体として機能するRS 5の完成度に恐れ入る。

プレミアムGTクラス。日本メーカーも肩を並べている、と思っていたがRS 5に試乗して、「再び差をつけられたな」と実感する。

(文=桂 伸一/写真=アウディ/編集=堀田剛資)

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テスト車のデータ

アウディRS 5クーペ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4723×1861×1360mm

ホイールベース:2766mm

車重:1655kg(空車重量)

駆動方式:4WD

エンジン:2.9リッターV6 DOHC 24バルブ ツインターボ

トランスミッション:8段AT

最高出力:450ps(331kW)/5700-6700rpm

最大トルク:600Nm(61.2kgm)/1900-5000rpm

タイヤ:(前)275/30R20 97Y/(後)275/30R20 97Y(ハンコック・ヴェンタスS1エボ2)

燃費:8.7リッター/100km(約11.5km/リッター 欧州複合モード)

価格:1257万円/テスト車=--円

オプション装備:--

※価格を除き、諸元はすべて欧州仕様参考値

テスト車の年式:2017年型

テスト開始時の走行距離:--km

テスト形態:ロードインプレッション

走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)

テスト距離:--km

使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)

参考燃費:--km/リッター

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