無煙たばこ、売りたい大手企業に援軍

 たばこメーカーは、米国で紙巻きたばこ(シガレット)の消費が減少するなか、米規制当局が有煙たばこよりも安全な代替品として無煙たばこを推奨することを望んでいるが、ここに来て、こうした動きを進めるたばこ大手に思わぬ援軍が現れた。公衆衛生関連の専門家たちだ。

 湿性の無煙たばこ(かみたばこやディッピングたばこを含む)は紙巻きたばこよりも害が少ないとの見方に同意する科学者は少なくない。だが、米国の保健当局は、3700万人に上る同国の喫煙者にリスクのより少ない商品への移行を奨励するのではなく、禁煙が唯一の選択肢だというメッセージを流す立場を堅持している。

 米国の疾病予防管理センター(CDC)、食品医薬品局(FDA)および国立がん研究所(NCI)がインターネット上に公開した報告書には、無煙たばこに関連する多数の健康リスクが挙げられている。口腔(こうくう)、食道や膵臓(すいぞう)のがんなどだ。だが、そこに無煙たばこが紙巻きたばこほど有害でないことは一切示されていない。NCIのウェブサイトには、「安全な形態のたばこは存在しない」と書かれている。

 ニューヨーク州立大学バッファロー校のリン・コズロースキー教授(公衆衛生学)は、「『安全でない』というメッセージでは十分でない」と述べる。

 同教授は、米保健当局が市民にたばこ製品の相対的リスクに関する情報を提供することを求めている学者や公衆衛生専門家の1人だ。

 同教授は「人々に知らせないことで生じる悲劇のリスクは、人々に知らせることで生じる悲劇のリスクよりずっと大きい」と述べる。

 米国の反喫煙団体「トゥルース・イニシアチブ」は、このいわゆる「害を軽減するアプローチ」を支持している。つまり、たばこをやめられない喫煙者に対し、スウェーデン式の「スヌース」と呼ばれる紙袋(パウチ)に入ったたばこを口に含むタイプのものや、「きちんと規制された」電子たばこなどの製品に移行することを促すアプローチだ。

 この議論はヤマ場に差し掛かりつつある。FDAは無煙たばこやその他のたばこ製品について、新しいマーケティング上の主張を承認するか否かを検討している。

 レイノルズ・アメリカンは今年4月、たばこ入りパウチ「キャメル・スヌース」の6種について、「紙巻きたばこほど有害でない」と宣伝するための申請書を提出した。フィリップ・モリス・インターナショナルも、たばこを燃やさずに加熱する新しい器具「アイコス(IQOS)」について、申請を行っている。フィリップ・モリスが製品ラベルやマーケティング資料で、「紙巻きたばこから同社の『アイコス』に移行すると、有害な化学物質への暴露とたばこに関連する病気のリスクが大幅に減少する」と言えるようになるかについて、FDAは来年判断を下すとみられている。

湿性の無煙たばこは紙巻きたばこよりも害が少ないとの見方に同意する科学者は少なくない。写真はスウェーデン式のたばこ入りパウチ「スヌース」 © Provided by The Wall Street Journal.

 FDAたばこ製品センターのミッチ・ゼラー所長は、「喫煙者がこの新しいニコチン送達装置に完全に移行すれば、紙巻きたばこの喫煙を減らすのに大いに役立つかもしれない」と述べる。同所長は、承認を検討中のマーケティング上の主張についてはコメントを差し控えた一方で、無煙たばこのリスクは紙巻きたばこよりも少ないと指摘し、「心を広く持つべきだ」と語った。

 同所長は、「結局、ニコチン自体が病気や死の原因ではない。われわれは、ニコチン摂取のさまざまな形について考えるべきだ」と付け加えた。

 FDAは、同局の科学者や独立した諮問委員会から勧告を受けた後に判断を下す予定だ。

 米国の無煙たばこは複数の研究で、口腔がん、心疾患やその他の病気と関連づけられている。だが、毎年48万人の米国人を死に追いやっているのは、紙巻たばこの煙だ。煙が肺に有害物質を運び込むためだ。しかし、連邦政府当局者は、無煙たばこが相対的に安全だと宣伝することが、若者による摂取増といった意図せぬ結果につながりかねないと警告する。

 CDC喫煙健康局のブライアン・キング副所長は、「こうしたリスクから身を守る最善の策は、たばこ製品の使用をやめることだ」と述べた。

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