大谷&千賀選出にみた野球人気の浅さ
『プロ野球マイナビオールスターゲーム2017』(第1戦=7月14日、ナゴヤドーム。第2戦=同15日、ZOZOマリン)のファン投票の最終結果が26日に発表された。パDH部門では、今季出場が8試合に過ぎない(26日現在、以下同)大谷翔平投手(22)が選出され、パ先発投手部門を制したのも、今月4日の登板を最後に背中の張りで出場登録を抹消されたままの千賀滉大投手(24)。知名度抜群の2人とはいえ、物議を醸しそうだ。
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「複雑ですけど、選んでいただいてありがたい」
慎重に言葉を選んだのも無理もない。大谷は新人から5年連続で選出されたが、昨季までとは意味合いが違う。今季は左太もも裏の肉離れのため、わずか8試合の出場にとどまっており、打率・407(27打数11安打)はさすがだが、2本塁打、3打点では今季チームの戦力として機能しているとはいえない。
パDH部門で2位のソフトバンク・デスパイネに約7万4000票の差をつけたが、オールスターのファン投票選出にふさわしい成績とは到底いえないだろう。
初めて指名打者部門で選ばれたが、投手としてはまだ登板できず、走塁面にも不安がある。「まだまともに試合に出られていない。どうなるか自分も分からない。これから次第」と神妙だ。
野手での選出には公式戦10試合または20打席以上の条件を満たすことが必要で、大谷は8試合しか出ていないが、32打席に立っている。規定ギリギリのところなのだ。
ようやく23日に1軍に合流し、試合前のフリー打撃では鋭い打球を飛ばしていたが、同日からの対楽天3連戦(札幌ドーム)は結局出番なしに終わった。
千賀は「ファン投票選出は初めてで光栄だし、すごく意気に感じる」と意欲的だが、公式戦登板は6月4日の横浜DeNA戦(横浜)が最後で、背中の張りを理由に登録抹消中。今季9試合6勝2敗、防御率2・93の好成績を残し、1軍復帰も近いとはいえ、万全の状態とは言い難い。
ある球界OBは「大谷はいまのプロ野球界では数少ない、野球に興味のない人を含めて一般に広く知られている選手。千賀も3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の活躍で飛躍的に知名度が上がった。とはいえ、プレーできていない状態で選出されるあたり、現在の野球人気の底の浅さを感じないわけにいかない」と肩を落とす。
なぜ、こういう結果になってしまったのか。元ロッテ投手で、10年間ソフトバンクの球団取締役としてフロント業務に携わった江戸川大学教授、小林至氏は「1つはファン投票の締め切りが早すぎます。本番の約1カ月前の今月18日でしたから、最新の選手の体調や活躍は反映されません。対照的に、メジャーリーグのオールスターは日本より早い7月11日(マイアミ)に行われますが、ファン投票はまだ続いていて今月29日(日本時間30日)まで。作業上の理由があるのでしょうが、このITの時代に改善できないはずはないと思います」と指摘する。
さらに小林氏は「私自身、2014年まで球団フロントとして球界に携わりながら改善できなかったことに忸怩たる思いがあります」とした上で、「今回、両リーグを通じ最多得票はソフトバンク・柳田の50万9359票ですが、昨年のメジャーの最多はサルバドール・ペレス捕手(ロイヤルズ)の585万9019票で、10倍以上です。投票総数も今年の日本は3000万票あまり、昨年のメジャーは6億票以上で20倍です。これはいろいろな条件の違いを考慮しても、差をつけられ過ぎ。もっと球界の重要なイベントであるオールスターを真剣に盛り上げていかなくては」と危機感を募らせている。
一方、そのメジャーの球宴でも近年は各球団の先発ローテ投手が登板を簡単に回避するようになり、価値を下げているといわれる。
日本も同様で、あるセ球団の関係者は「時代なのか、中堅以上の選手は球宴に出るより休養を取りたがる。本当に球宴に選ばれて喜ぶのは、初選出の若手くらい。むしろ外国人選手の方が栄誉ととらえていますよ」とため息をつく。
選出された上で辞退すると後半戦開幕から10試合に出場できない規定があるため、ベテラン選手の中には、監督推薦はしないでくれと内々に掛け合う選手も増えているとか。夢の球宴は曲がり角を迎えているようだ。
