「ポストスマホ」はAI革命にあり

LINEはスマートスピーカー「WAVE」を秋に投入すると発表した。親会社である韓国のNAVERと共同で開発したAI「Clova」を搭載し、声でさまざまな操作ができる(撮影:大澤誠) © 東洋経済オンライン LINEはスマートスピーカー「WAVE」を秋に投入すると発表した。親会社である韓国のNAVERと共同で開発したAI「Clova」を搭載し、声でさまざまな操作ができる(撮影:大澤誠)

 スマホの音声アシスタントや、話しかけて操作できるスマートスピーカーなどの人気が高まり、クラウドを活用した人工知能(AI)が脚光を浴びるようになってきた。アマゾンやグーグルなどのIT大手が力を入れるクラウドAIは、われわれの生活にどのように広まろうとしているのだろうか。

 最近までIT技術の進化を牽引してきたのはスマートフォンだった。だが、初代iPhoneの誕生から10年が経過し、その進化も停滞ぎみ。そのため、ここ数年、IT業界ではポスト・スマホとなる新たなコンセプトの模索が続けられ、ウェアラブルやIoTなど、さまざまな技術やデバイスの研究が進められてきた。しかし、そのどれも、爆発的に普及して人々の生活を大きく変えたスマホに匹敵する存在には至っていない。

ポストスマホの最有力候補になったAI

 そんな中、ポストスマホの最有力候補として注目されるのがAIだ。注目度の高さは、「スマートスピーカー」と呼ばれるデバイスの人気ぶりから見て取れる。音楽を再生するスピーカーでありながら、話しかけることによって好きな音楽を再生してくれるほか、ニュースや天気を教えてくれたり、家電を操作してくれたりと、さまざまな操作ができるものだ。

 米アマゾンの「Amazon Echo」が人気となったことを受け、グーグルも「Google Home」を投入。6月にアップルが「HomePod」で参入を表明するなど、競争は激化しつつある。

 日本でも近く商品が供給される見通しだ。グーグルがGoogle Homeの日本市場投入を明らかにし、メッセンジャーアプリ大手のLINEも「WAVE」を秋に投入すると発表した。

 スマートスピーカーだけではない。「Siri」に代表されるスマホの音声アシスタントサービスも、その代表格として挙げられる。実際、OS(基本ソフト)のアンドロイドを有するグーグルも、Siriに対抗するべく、5月から独自の音声アシスタントサービス「Googleアシスタント」を日本で提供開始した。スマホ上でもAIをめぐる争いは激しくなっているのだ。

 AIは、研究自体は古くからなされているものだ。それがここ最近、実用へと大きく踏み出したのはなぜだろうか。理由の1つは、機械が自ら学習し、複数の処理を何層にも重ねることで、複雑な判断を可能にするディープラーニング(深層学習)という技術にある。

 もう1つはコンピューター自体の進化だ。ディープラーニングは学習するのに何層もの計算処理をこなす必要があるため、コンピューターの能力が高くなければ実現できない技術だった。だが近年、コンピューター自体の性能が高まったことで、ディープラーニングを活用したAIの開発が急発展。ビジネスに使える技術へと進化するに至ったといえよう。

 AIが身近なサービスとなり、多くの人が利用できるようになったのにはクラウドの存在も大きい。いくらディープラーニングに対応したコンピューターが実現したとはいえ、その規模はパソコンなどと比べてはるかに大きい。

 たとえば、ディープラーニングを活用し、囲碁で人間のプロに勝利したことで有名になったAI「AlphaGo」は、1000台以上のサーバーが用いられているともいわれている。一般人が容易に構築できるものではない。

 だがそうした大規模のコンピューターパワーを、ネットワークを経由してクラウドとして展開すれば、多くの人にAIを活用したサービスが提供しやすくなる。コンピューターだけでなくネットワークの進化も、AIの実用化に大きく貢献しているわけだ。

データを握る者がAIの覇権を握る

 スマートスピーカーやスマホの音声アシスタントには、各社が独自に開発した、クラウドを活用したAIの基盤が用いられている。アマゾンであれば「Alexa」、アップルであれば「Siri」、グーグルであれば「Googleアシスタント」といった具合だ。

 このクラウドAIの基盤こそが、スマホにおけるOSに当たる存在となり、幅広いデバイスやアプリケーションに搭載されていくと考えられる。かつてスマホでOSをめぐる争いが起きたように、今後はクラウドAIをめぐる競争が起こる可能性が高い。

 実際、アマゾンが先行していたスマートスピーカーの市場にグーグルやアップルが参入したり、ファーウェイやHTCなど、アンドロイド搭載スマホにアマゾンのAlexaが採用されたりするなど、互いの領域を侵食するケースが目立つ。クラウドAI同士の争いは、徐々に本格化しつつある。

データこそがAIの品質のカギ

 ただし、クラウドAI同士の争いはまだ黎明期だ。覇権を握るチャンスはIT大手だけでなく、多くの企業に残されているともいえるだろう。

 では、勝敗を握るカギはどこにあるのか。各社のクラウドAIは主にディープラーニング技術を用いているため、その技術や仕組みに大きな違いはないともいわれる。実際グーグルは、自社で使用している人工知能のソフトウェア「TensorFlow」をオープンソース化しており、誰でもAIのアプリケーション開発ができる環境を整えている。

 そこで差別化の重要な要素となるのがデータだ。ディープラーニングは多数のデータからコンピューター自身が学習することで進化する仕組みである。そのため、どれだけ多くのデータを集めて学習させ、AIを進化させられるかが、クラウドAIの質に大きく影響してくる。データを握る者が、クラウドAIの覇権を握るといっても過言ではないのである。

 そしてより多くのデータを集めるためにも、今後クラウドAIを提供する各社は、多くのデバイスやアプリケーションにAIを搭載し、利用シーンを大きく広げてくるだろう。そうした競争の激化によって、われわれの生活には自ずとAIが入り込み、いずれ生活に大きな影響をもたらす可能性が高まるといえそうだ。

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