補強全滅 中田翔を諦めきれない阪神

【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】中田翔獲り「急げ!」電鉄首脳が異例検討プッシュ 金本監督3年契約を正式提示も投手FA補強は…: 6月の阪神-日本ハムの試合前練習で談笑する金本監督と中田翔。来季は監督と選手の立場に? © 産経新聞 提供 6月の阪神-日本ハムの試合前練習で談笑する金本監督と中田翔。来季は監督と選手の立場に?

 阪神球団が今季で2年契約が終了した金本知憲監督(49)に来季からの3年契約を正式提示しました。一方で来季に向けた補強戦略はFAによる投手補強はすでに全滅状態。新外国人野手についてはウィリン・ロザリオ内野手(28歳=韓国ハンファ)の獲得に向けてメジャーを含む複数球団と争奪戦の状況です。金本監督は高知・安芸秋季キャンプで総勢31人の若手を鍛え上げ、戦力アップの基本軸にする考えですが、阪神電鉄本社首脳は球団に対して中田翔内野手(28歳=日本ハム)獲得の検討を急ぐように強烈プッシュしています。

■「契約3年でも、成績が悪ければ1年で終了」

 日本シリーズが行われていた裏側? ですでに金本阪神は来季に向けてスタートを切っていますね。高知・安芸秋季キャンプでは投手14人、捕手4人、内野手7人、外野手6人が日々、激しく厳しい練習で個々のレベルアップに挑んでいます。

 金本監督が監督に就任してこれで3度目の秋季キャンプです。春季キャンプ2度を含む5度目のキャンプともいえます。数々の阪神監督を見てきましたが、ことキャンプの進め方については金本流が一番うまいと評価しています。後はキャンプの成果をシーズンでどこまで出せるか。過去2シーズンは4位、そして2位。来季は監督就任3年目のシーズンです。球団の周辺も阪神ファンも気持ちはひとつ。来季こそ2005年以来のリーグ制覇を果たしてほしいものですね。

 こうした状況下、阪神球団は今季で2年契約が切れた金本監督に対して正式に3年契約を提示しました。このコラムでは9月10日の記事でいち早く報じていますが、球団関係者はこう語りました。

 「金本監督には来季以降に向けた契約を提示している。もうサインしたかどうかは知らないが、断る理由はないだろう。これで3年先まで契約上は保証されるわけだけど、実際はそんなに甘くは考えていない。監督に就任して来年で3年目。ファンだって、そろそろ結果を求める。来季からは1年、1年が勝負と考えてもいいはずだ」

 安芸秋季キャンプに入る前に提示された3年契約。数字上の足し算でいうと2年契約プラス3年ですから、金本政権は5年が保証された…と言えなくはないのです。しかし、阪神電鉄本社や球団首脳にはそんな甘い見通しはありません。それは来季以降、金本阪神を取り巻く周囲の風が微妙に変化することを過去の経験から知り尽くしているからです。別の球団関係者はこう言い切りましたね。

 「契約は3年でも、成績が悪ければ1年で終わるかも…。過去の阪神監督もそんな人を何人か見てきたよ。勝負の世界だから後3年ある、なんて思ったら大間違いだ」

 金本監督は来季が監督就任3年目。マスコミもファンもそろそろ若手育成路線の結果を求めるでしょう。新たな3年契約は周囲の批判に対する抑止力にはなりそうですが、それも成績の度合い次第でしょうね。

 そこで阪神電鉄本社や球団首脳が考えることはひとつです。若手育成路線を手助けし、戦力の肉付けをするべく、効果的な手法といえばウイークポイントを埋める戦力補強ですね。今季物足りなかったのは先発投手陣と4番で一塁を守れる主砲の補強です。若手をレベルアップさせる一方で、その若手を助け、導く新戦力が必要になるわけです。2017年シーズンでも35歳の糸井をFA補強したことが2位躍進の最大の要因と誰もが思っているはずです。

 ところが、すでに阪神の補強プランには限界が見えてきています。投手陣の補充を狙ったFAによる投手補強はチーム関係者によると「すでに全滅状態」というのです。西武の牧田、日本ハムの増井、宮西、ロッテの涌井らの調査は全て不調に終わっているようです。10月26日に行われたドラフト会議では1位に馬場皐輔投手(22歳=仙台大)、2位に高橋遙人投手(21歳=亜大)を指名。左右の即戦力投手を確保しましたが、現時点では投手の新戦力はドラフト補強だけに止まる方向ですね。

 そして4番・一塁を任せられる主砲については韓国ハンファで今季119試合に出場し、打率・339、本塁打37本、打点111のウィリン・ロザリオ内野手(28歳)が筆頭候補に挙がっています。しかし、ドミニカ共和国出身でハンファに移籍する前には、コロラド・ロッキーズに5年在籍しメジャー通算447試合に出場。打率・273本塁打71、打点241をマークしているロザリオはハンファとの2年契約が切れた今オフ、メジャー復帰を希望しているといわれています。高額な条件闘争に阪神が勝ち残れるのかどうか…。まだ予断を許さない状況のようですね。

 つまり金本監督をサポートすべきオフの補強戦略は停滞気味と言っても言い過ぎではない状況下なのです。そこで、阪神電鉄本社首脳から現在、球団首脳に強くプッシュされている補強プランこそ、前回のコラム(10月29日アップ http://www.sankei.com/west/news/171029/wst1710290003-n1.html )で書いた中田翔の獲得なのです。

■補強戦略は停滞…残るは、当コラムで言及した「中田翔の獲得」

 前回のコラムで書いた通り、阪神は費用対効果の面で総額20億円を要する中田翔のFAによる補強は見送りました。真夏の編成会議での決定事項です。しかし、FA以外のプランによる中田翔獲得を全面否定していたわけではありません。清宮の1位入団で一塁が埋まる、日本ハムが戦力構想外として、中田翔自身も阪神移籍のためにFA権を封印する決意こそあえば話は大きく違ってきます。阪神と日本ハム両球団の交渉次第では電撃トレードがある…と書いたはずですね。

 さらに、阪神のチーム関係者は別の獲得プランも匂わしました。

 「ウチから広島に帰った新井貴浩のパターンがある。契約更改交渉で減額制限を超える減俸を提示され、それを拒否すれば自動的にFAになる。そこから獲得する手はあるぞ。あくまでも事前に日本ハムと中田翔本人に接触して合意形成しておかなければならないけどな。新井貴浩の時、ウチは事前に本人の希望を聞き、広島カープと話し合ったんだ」

 減額制限を超える大減俸→FA→阪神では年俸2億円以上を確約…。

 金銭トレード以外にも中田翔獲得の道はあるのです。後は阪神電鉄本社首脳の強烈プッシュに球団幹部が応えて、日本ハム&中田翔にどの段階で接触するかどうか…でしょうね。

 阪神電鉄本社首脳陣が球団側に異例のプッシュを行っているのは、来季に3年目を迎える金本監督に対する援護射撃と言えます。このままでは戦力的に大いに不安…と思うからこそ中田翔の獲得を勧めているのです。

 今季は打撃不振に苦しんだ中田翔ですが、実は阪神の選手間では「獲るべきだ」という要望論が起こっています。特にチーム内の大阪桐蔭高OBから…。そして、阪神OBのひとりはこう語りました。

 「今季は状態が悪かったけど、こんな年もあるよ。逆に悪かったからこそ、来季はやるんじゃないか。技術的に悪いとは思わない」

 若手育成に舵を切る金本監督は消極論です。しかし、阪神電鉄本社首脳は強くプッシュしていますね。さあ、日本シリーズ終了後、阪神の中田翔獲りは風雲急を告げることだけは間違いないでしょう。金本監督に新たに3年契約を提示した阪神電鉄本社のこれが総合的な球団経営プランだからです。  =続く(毎週日曜に掲載)

植村徹也(うえむら・てつや)

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 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の月〜金曜日午後9時からの「」、土曜日午後6時半からの「」に出演中。「サンスポ・コースNAVI!」ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

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