昆虫採集に許可、神戸市の条例が波紋
© 神戸新聞NEXT/神戸新聞社 森の中で昆虫採集をする人たち。生態系保全を目的に神戸市が制定した条例を巡り、自然保護活動に携わる人たちからは懸念の声が上がっている=同市内
生態系保全に向けて神戸市が昨年10月に制定した条例が、思わぬ波紋を広げている。条例は希少野生動植物種の捕獲や採取などを禁じ、教育や調査研究目的で市長が認める場合のみ、捕獲などが可能と規定。市は「市民の自由な活動を規制する趣旨ではない」とするが、自然保護活動に携わる人たちは昆虫採集などがやりにくくなる可能性を指摘し、「調査や記録が不十分になり、かえって保全の妨げになるのでは」と疑問の声を上げている。(中西大二)
近年は宅地開発などによる生息場所の縮小や乱獲などで希少種が減少。同市はそれを市民に伝え、生態系を守る目的で「生物多様性保全条例」を定めた。条例には希少種保全のほか、外来種による被害防止や市民との協働による保全活動推進なども盛り込んだ。
昨年末には条例を補完する施行規則の案を公開。絶滅の恐れがあるとして、神戸版レッドリスト2015のAランクに指定されているギフチョウ、ユキワリイチゲなど全175種を、条例が定める「希少野生動植物種」とした。条例は6月に施行される予定で、以降はこの175種の採取には原則、市長の認可が必要になる。
これに対し、市民対象の自然観察会や里山保全活動に長年取り組む市内の50代男性は「子どもらがうっかり希少種を捕獲する場合もある。活動のたびに市長の許可が必要となれば関係者の負担が増し、市民が生き物と触れ合う機会を遠ざけてしまう」と懸念する。
一方、同市自然環境共生課は「捕獲や採取に市長の認可が必要としたのは、商業目的で乱獲したり、研究とはいえ大規模な採取で生態系を脅かしたりするのを防ぐため」と説明。「決して一般市民の昆虫採集を許可制にしたり、保全活動を抑制したりするものではない」と理解を求める。
兵庫県生物学会会長の内藤親彦(ちかびこ)・神戸大名誉教授(75)=昆虫進化学=によると、生物の分布データは愛好家らの採集活動に頼るところが大きいという。内藤名誉教授は「条例が規定通りに運用されると、新たなデータが集まりにくくなる恐れがある」とする。
さらに、捕獲などの禁止対象をAランク全種類とすることについては「あまりに機械的で、国や都道府県レベルでも例がない」と指摘し、「まずは保護、保全が特に急がれる種を市が選定し、その実態と保全の具体例を市民に知らせることが必要では」と話す。
