急加速する「貴乃花理事長」待望論
大相撲の春日野部屋に所属していた力士(23)が2014年に弟弟子の矢作嵐(やはぎ・あらし)さん(22)の顔を殴って傷害罪で起訴され、16年6月に懲役3年、執行猶予4年の有罪判決を受けていたことが判明した。師匠の春日野親方(55)=元関脇栃乃和歌=は日本相撲協会理事で、八角理事長(54)=元横綱北勝海=を支える協会執行部No.3の実力者だが、事件を公表しておらず、図らずも協会の“隠蔽”体質を露呈した。角界の不祥事は止まらず、八角体制への批判は高まるばかりで、退陣を求める声が強い。理事選(2月2日)、理事長選(3月)を控え、改革派の貴乃花親方(45)=元横綱=の理事長就任待望論が高まっている。(夕刊フジ編集委員・久保武司)
公表されなかった暴行事件について、相撲協会は「春日野より報告されており、理事および親方としての対応に問題はなかった」(広報部)と追認したのだから、あきれるばかりだ。隠蔽体質を認めたようなもの。そもそも、このコメントの発信元が春日野親方が部長を務める広報部なのだから、何をかいわんやである。
春日野親方は被害者への謝罪の有無について、「何か言ったらまた書くでしょう。何も言えない」とダンマリ。事件を公表しなかった理由を「(加害者の兄弟子が)もう辞めてますから」と開き直るような対応をみせた。
春日野親方は前回の理事選(16年1月)で当選。同年3月には広報部長に就任。元横綱日馬富士の暴行事件では報道対応の窓口になり、貴乃花親方の解任を受けて、現在は巡業部長も兼任している。
昨年10月の元日馬富士の暴行事件では、貴乃花親方は弟子の貴ノ岩が暴行を受けたことを協会に報告せず、鳥取県警に被害届を提出したことが問題視され、「事件をまず協会に報告すべき」という危機管理委員会(委員長・高野利雄元名古屋高検検事長)の裁定をもとに理事解任の処分を受けた。
しかし、こうして協会の隠蔽体質が明らかになってみると、貴乃花親方が取った行動は、事件を闇に葬ることなく、弟子を守るためには妥当だったようにみえてくる。
2月の理事選への影響も必至だ。
理事の任免権を持つ評議員会の池坊保子議長は、貴乃花親方が2月の理事選で当選した場合でも理事就任を認めない可能性を示唆している。しかし、春日野親方や、協会トップとして隠蔽を追認した格好の八角理事長が再選した場合も、同様でなければ筋が通らないだろう。
懐刀の春日野親方の隠蔽をあぶりだされてしまった八角理事長は土俵際だ。「今の執行部でいいのか?」と疑問を持つ親方衆が続出することは必至。現執行部は死に体、貴乃花親方の存在がにわかにクローズアップされる展開になっている。
【暴行事件経緯】
事件が起きたのは2014(平成26)年9月5日夜。13年に入門した加害者の兄弟子(23)=15年7月引退=が、「掃除のしかたが悪い」などとして、7カ月前に入門したばかりだった千葉県出身の弟弟子、矢作嵐さん(22)を呼び出し、顔を拳で殴り腹を蹴った。矢作さんは、あごの骨が折れる重傷を負い、味覚消失の後遺症がある。引退を余儀なくされ、現在は清掃業で生計を立てている。
矢作さんは病院で手術が必要という診断結果を伝えると、春日野親方から「勝手なことをしやがって」と怒られたという。矢作さんは14年10月に兄弟子を刑事告訴、16年6月に懲役3年、執行猶予4年の有罪判決が確定した。必要な治療を受けさせなかったとして、春日野親方も保護責任者遺棄容疑で刑事告訴したが不起訴処分となった。事件発生時の危機管理部長は貴乃花親方だった。
矢作さんは昨年3月には春日野親方と元力士に3000万円の損害賠償を求める訴訟も起こした。
春日野親方は11年に、弟子をゴルフのアイアンで殴る暴行問題を起こしたが、弟子が被害届を出さなかったため事件化は見送られた。
