仮想通貨取引所がハッキングに弱い訳
© ITmedia NEWS 提供 謝罪するコインチェック和田晃一良社長(Kyodo News via AP)
[AP通信] ブロックチェーン技術は安全でセキュアな取引を可能にする。だがビットコインなどの仮想通貨がこうしたブロックチェーン技術を利用しているにもかかわらず、そうした通貨を扱う取引所はハッキング攻撃を受けている。専門家によれば、これはこうした取引所のネットワークにセキュリティ上の不備があるからだという。先週、東京に拠点を置く仮想通貨取引所コインチェックがハッキング攻撃を受け、580億円相当の仮想通貨「NEM」が消失した。コインチェックはその後、流出した仮想通貨NEMの取引を停止し、NEM以外の大半の通貨についても取引を制限している。
日本の仮想通貨取引所がこれほど大規模なハッキング攻撃にあうのは、2014年のマウントゴックス(Mt. Gox)の事件以来だ。暗号通貨をめぐるセキュリティの問題はどのようになっているのだろうか。
●ブロックチェーンとは
ブロックチェーンとはその名の通り、デジタルな“ブロック”がチェーン状につながったもので、各ブロックに取引の記録が記されている、とIBM Blockchainのカーティス・マイルズ氏は説明する。各ブロックは前後のブロックと一部の情報を介してつながっているので、改ざんは難しい。改善の発覚を回避するためには、ハッカーは1つのブロックだけでなく、そのブロックにつながっている全てのブロックに変更を加えなければならないからだ。ブロックチェーン上の記録は暗号化によってセキュリティが確保され、ネットワークへの参加者に割り当てられる秘密鍵が個人を認証するデジタル署名の役割を果たす。何か変更が加えられれば、デジタル署名は無効となり、ネットワーク内の他のユーザーにその旨が通知される。ブロックチェーンはいわゆるピアツーピア(P2P)ネットワークで構成され、常に更新と同期がなされている。特定のブロックチェーンの各インスタンスにアクセスし、全てのブロックを同時に変更するとなれば、膨大な計算処理能力が必要だ。
●取引所のセキュリティ対策は不十分
暗号通貨の取引量を増やし、ビットコインなどの通貨をメインストリームに押し上げる上で、取引所は非常に重要な役割を担う。だがブロックチェーンが高いセキュリティを誇る一方で、そうした取引所には同等のセキュリティ機能が備わっていない、と韓国のアンチウイルスソフトウェア企業Hauriの幹部であるサイモン・チョイ氏は指摘する。報道によると、韓国の仮想通貨取引所はサイバーセキュリティ対策の評価が低いところが多く、当局はセキュリティ対策が不十分な取引所に対し、罰金を科す方針を明らかにしている。「取引所のセキュリティに不備があれば、通貨は盗まれる可能性がある。仲介者としての役割を担うからには、取引所も銀行並みのセキュリティを確保すべきであり、セキュリティを強化する必要がある」とチョイ氏は語る。
●ハッキング被害が増加
ビットコイン調査会社Chainalysisによれば、個人が詐欺の他、ランサムウェアなどのマルウェアやハッキング攻撃などを介して盗まれたケースも含め、ビットコインの窃盗被害総額は2013年の300万ドルから、2016年にはその30倍以上の9500万ドルに増加したという。
今回のコインチェックに対する攻撃は、日本のビットコイン取引所に対する攻撃としては、2014年にマウントゴックスで大量のビットコインが消失した事件に次ぐ規模の大きさだ。当時、世界最大規模のビットコイン取引所だったマウントゴックスでハッキングを利用したとみられる盗難事件が発生し、数十万ビットコインが消失。マウントゴックスは経営破綻した。
コインチェックは今回の件を謝罪し、流出したNEMについては顧客に返金すると発表。金融庁の命令に従い、原因究明と再発防止に向けたセキュリティ対策の強化に努めると明言している。
今回の流出事件が発生した経緯や、背後にどのような存在があったのかなどの詳細は、まだ明らかになっていない。
マウントゴックスの事件以降、多くの日本人投資家は少なくともしばらくはビットコインから距離を置き、当局は規制を強化した。Chainalysisの推定では、マウントゴックスの事件で消失したビットコインの価値は当時の相場では750万ドルだが、2018年1月現在では100億ドル近くに相当する。
●ハッカーの特定は困難
チョイ氏によれば、ブロックチェーンの取引は追跡が可能だが、暗号通貨が保管されている「ウォレット」の所有者は特定することができないという。
「それが最大の弱点だ」とチョイ氏は語る。ブロックに記されている記録を基にブロックを追跡することは可能だ。だがウォレットの所有者を特定することはできない。「ハッカーのウォレットまではたどり着くことができても、その所有者を特定できなければ、捕まえることはできない」と同氏。
ハッキング攻撃の増加を受け、暗号通貨のコミュニティは犯罪防止策の強化に乗り出している。
韓国政府は、暗号通貨のアカウントを、金融機関によって本人確認がなされた既存の銀行口座と紐付けることで、暗号通貨の取引を追跡可能にするという方法を検討中だ。ただしこの方法では、ユーザーの身元を特定しない韓国国外の取引所に暗号通貨を送金したハッカーの身元は特定できない。
(日本語翻訳 ITmedia ニュース)
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