笹子トンネル事故、役員ら書類送検へ

 2012年12月、9人が死亡した山梨県大月市の中央自動車道笹子(ささご)トンネルの天井板崩落事故で、山梨県警は近く、管理会社「中日本高速道路」と保守点検を行っていた子会社「中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京」の当時の両社長を含む役員4人と保守点検の担当者らを業務上過失致死傷容疑で甲府地検に書類送検する方針を固めた。発生から5年近くが経過し捜査は節目を迎えるが、役員らが事故を予測できたかの立証が難航したといい、起訴のハードルは極めて高いとみられる。

 トンネルは1977年に完成した。トンネル上部に天井板を計2枚並べた構造で、天井から下がったつり金具で固定していた。捜査関係者によると、県警は事故原因について、トンネル最上部に打ち付けていたアンカーボルトが脱落しつり金具が外れ、天井板などが崩落したと断定した。

 両社は協議して点検計画を作成し、天井板の落下の危険性の有無を定期的に調査していた。中日本高速のマニュアルでは、特殊なハンマーでたたいてボルトの緩みを調べたり、機器を活用して細部の状態を確認したりする「詳細点検」を5~10年に1回程度行うと決めていた。しかし、最上部のボルトの詳しい点検は00年を最後に実施しておらず、事故直前の12年9~10月の点検でも目視で確認しただけだった。

 県警は両社が点検を適切に行っていれば事故を予測できたとみて捜査を続けてきたが、専門家らへの聞き取りなどで、点検の精度には限界があり、ボルトも施工当初から強度が不足していたことが判明。仮に適切に点検していても、ボルトの脱落を確実に見抜くのは困難だった可能性があるとみている。当時の役員らも「劣化が進行しているとの認識はなかった」などと主張しているという。

 JR福知山線脱線事故や東京電力福島第1原発事故など、過去の業務上過失致死傷事件では不起訴となった後に検察審査会の議決で強制起訴されるケースが相次いでいる。甲府地検はこうした事情も踏まえ、起訴の可否を判断する。

笠子トンネルの天井板落下のイメージ © 毎日新聞 笠子トンネルの天井板落下のイメージ

 事故を巡っては、亡くなった5人の遺族が両社に損害賠償を求める訴訟を起こした。横浜地裁は15年12月、「適切な点検方法を設定していれば事故の発生を予見できた。不具合を発見する点検計画を立案する注意義務を怠った」などと両社の過失を認定。約4億4000万円の支払いを命じる判決を言い渡し、確定している。【滝川大貴、井川諒太郎】

 【ことば】笹子トンネル天井板崩落事故

 2012年12月2日午前8時ごろ、山梨県大月市の中央自動車道上り線・笹子トンネル(山梨県大月市-同甲州市)内で発生。コンクリート製の天井板約340枚が約140メートルにわたって落下し、車3台が下敷きになった。27~74歳の男女9人が死亡したほか、女性2人が負傷した。

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