採用活動、駆り出される社員の共通点

 新卒採用(大学生)は、3年生の3月に企業の採用広報活動が始まり、4年生の6月に選考活動が始まることになっているのだが、もうとっくに始まっている感がある。インターンシップという名の会社説明会的イベントは頻繁に開催されているし、そのインターンシップのための合同説明会なども行われている。

 今日はその採用関連の話をする。テーマは「採用活動で声が掛かる社員、掛からない社員」についてだ。つまり、「なんで、アイツなんかが会社の採用ページに出ているのだろう?」「何で、俺は会社説明会に呼んでもらえないのだろう」みたいな疑問に応える企画である。

 会社の採用ページ、就職ナビ、会社説明会、面接、内定者懇親会などにかり出される社員はどのようにして決まるのか。結論から言うならば、これは採用戦略と連動している。どのような人材を採用するのかという方針があり、その上で人選が行われる。つまり、求める人物像に対して響きそうな人が選ばれるわけだ。

 例えば、イノベーター型人材を採りたい場合は、画期的な新規事業や、珍しい案件を手掛けている変わり者風の社員を表に出す。「保守的な会社だと思ったが、こんな変わった人がいるのか」となびいてくる。もっとも、本当に変わっているので、彼はパンフレットなどに出ることによって、ますます浮くのだが。

 また、「この会社、ベンチャーだけど大丈夫なのか?」と不安に思われないように、大企業から転じた社員を紹介するケースも多い。大手からも人が入る企業なら安心だと思うのだ。もっとも、この手の人は社内で“大手風”を吹かせていて嫌われていたりするのだが。

 そう。人選の基準は、単に優秀かどうかだけではない。例えば、圧倒的な成績を誇る営業マンなどはいかにも選ばれそうだが、“厳ついタイプ”はこの手の企画に呼ばれない。学生にとっては魅力的ではないからだ。

 もちろん、実力が全てという企業や、社内での“気遣い”によりそういうタイプが選ばれることもある。ただ、その場合、学生から支持されるかどうかは分からない。まあ、ある意味、現実を見せているとも言えるのだが。

 同様に、メーカーなどにありがちなのだが、社内で優秀だと言われる人たちが、地味でコツコツ系の人だったりするパターンもある。これらの人に採用活動に協力してもらうと、逆にイメージが下がってしまうので起用しない。そう、イメージ戦略は非常に大切なのだ。

●「優秀さ」ではなく「見栄え」

 この手の企画で、実際の成果を伴っているかどうかは別として、実力以上に評価されて登場してしまうのが、新規事業関係者、グローバルビジネス関係者である。学生にとって引きが強いというだけではない。企業活動の広がりを感じさせるために、この手の人たちは便利なのだ。いかにも新しいことにチャレンジしている風にアピールできるからである。

 もっとも、これは、社内から反発を呼んでしまうこともある。なんせ、企業の稼ぎ頭は本業なのだ。新規事業は、いつ数字で貢献できるか分からない。グローバルビジネスは伸びているとは言えるが、多くの企業はまだまだ国内の本業が稼ぎ頭である。故に、「なんでお前らが採用活動で目立っているのだ」というクレームを受けやすいのだ。

 この採用活動関連の露出というのは、呼ばれた当人にとってはなんだかんだいって、光栄なものである。ある意味、これは社内のモチベーションアップ策とも言える。一方、あまりにも盛った露出になると、社内で足を引っ張られてしまうのだ。「なんだあいつは。本当に利益に貢献しているのか」と。

 やや余談だが、私が企業で人事をしていたとき、現場の社員からよく文句を言われたことがあった。それは「おまえら人事は、ウチの会社のことを美化しすぎじゃないか」というものだ。その後、人材コンサルをするようになり、さらには物書きとしてもさまざまな企業の人事部と関わったが、皆、同じような悩みを抱えていた。要するに現場に嫌われているのだ。

 もっとも、この問題は、多角的に見なくてはならない。確かに、現場のことを全く理解せず、しかも社員の気持ちなど考えず盛りに盛っている人事担当者もいる。このような採用活動をすると、入社後のミスマッチが問題となる。本人も現場も戸惑うだろう。

 しかし、企業というものは常に進化して行くものである。採用においては、今の現場にマッチしすぎるのもまた問題なのである。あえて、今の段階では扱いにくい人を採ることによって組織を変えようとすることもある。合わなくとも、化学反応が起こるのだ。悪いことではない。

 ということで、採用活動に呼ばれる人は別に優秀だとは限らない。要するに採りたい学生にとって見栄えが良いかどうかという問題だ。

 あぁ、人事の仕事、楽しかったが辛かったなあ。いろいろ、思い出してしまった。

(常見陽平)

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