スマホ界を激変させるチャットボット
© 東洋経済オンライン フェイスブックも今後のチャットボットの動向を占ううえで重要な企業の一つだ(写真:編集部)
多くの人がスマートフォンで日常的に交わす、テキストによる会話(チャット)。メッセージアプリ大手のLINEが国内6800万人以上のユーザーを抱えるように、チャットは今や生活に欠かせないインフラだ。
最近、そのチャットに大きな変化の兆しが見えつつある。それは相手が「人間だけではなくなっている」ということだ。AI(人工知能)を活用したチャット専用のロボット「チャットボット」が、人間と日常的にチャットする時代が目前に迫ろうとしているのだ。
女子高生AI「りんな」はまだこれから進化?
国内において、AIを搭載したチャットボットとして挙げられるのが「りんな」である。これはマイクロソフトが、2015年からLINE上で展開している女子高生AIだ。
話しかけると、女子高生らしい言葉遣いや内容で返事をしてくれるもので、会話だけでなくしりとりなどのゲームもできるなど、チャットを通じてAIとさまざまな楽しみ方ができる。
女子高生のAIというユニークなコンセプトやスムーズで楽しい会話などで、りんなは高い人気を獲得している。昨年にはりんなのイベントが実施されたり、書籍が出版されたり、女優デビュー(フジテレビ「世にも奇妙な物語」とコラボしたホラーなもの)を果たしたりしているほどだ。
りんなの人気を支えているのは、マイクロソフトの検索エンジンで収集した膨大なデータや、クラウドを活用した機械学習プラットフォームなど最新技術の数々。りんながユーザーとのスムーズで楽しい会話を実現しているのは、高いAI技術がバックにあるからだ。
そして実はここ最近、IT大手がこぞって高度なAI技術を活用したチャットボットに力を入れようとしている。りんなはあくまで、チャットボットの可能性を示すショーケースの1つにすぎないのだ。
IT大手がチャットボットに力を入れる理由
マイクロソフトは昨年、同社のAIアシスタント「Cortana」のチャットボットへの活用など、チャットボットを開発しやすくする仕組みを開発者向けに提供することを発表。さらに同社のメッセンジャーアプリ「Skype」上で、チャットボットを提供しやすくするための環境整備も進めている。
米フェイスブックも昨年、メッセンジャーアプリ「Facebook Messenger」上で動作するチャットボットを提供するためのプラットフォームを、開発者向けに提供すると発表。国内でも昨年にLINEが、LINE上で動作するチャットボットを導入できる仕組みを提供。すでにいくつかの企業がLINE上で提供を開始しているようだ。
なぜ、IT大手はチャットボットに力を入れるのか。それは、チャットボットがビジネスに直結するからだ。特に現在、最も期待されているのが、ユーザーサポートの省コスト化である。最近はWebサイト上に、商品やサービスに関してチャットでオペレーターに質問できる仕組みを導入する企業が増えている。チャットボットを取り入れると、オペレーターを介在させることなくサポートを提供でき、大幅なコスト削減につなげられる。
もちろん現在のAIの性能では、顧客の質問すべてに満足のいく回答を提供できるわけではない。だが多くのユーザーがしてくるような質問にはチャットボットが回答し、それでも対応できない場合はオペレーターに交代するという仕組みにするだけでも、サポートの省力化を実現できる。
今後AIの精度が高まれば、一層幅広いサービスに対応するチャットボットが登場するだろう。Webサイトを探したり、アプリをダウンロードしたりすることなく、チャットボットと会話するだけで買い物ができたり、レストランやホテルの予約ができたりするようになる。
このことは、AIを搭載した「Amazon Echo」に代表されるスマートスピーカーにおいても同様だ。だがスマートスピーカーは利用シーンが部屋の中に限られるのに対し、チャットボットはスマホを持っていればいつでも利用できるメリットがあることから、より身近な存在になりうると考えられている。
チャットボットが広まれば、スマホ上で提供されるサービスやコンテンツが、現在主流のアプリから、メッセンジャーアプリ上のチャットボットへ変化することとなる。すなわち、メッセンジャーアプリがOS(基本ソフト。スマホにおけるアンドロイドやiOS)に代わるプラットフォームとしての座を獲得する可能性を示しているともいえる。
スマホ上の覇権を、メッセンジャーアプリが奪う
そうした時代の到来を見越しているのがLINEである。LINEは昨年から戦略を大幅に刷新。LINEのユーザーをほかのアプリに誘導する戦略から、LINEの公式アカウントを活用し、あらゆるサービスをLINE上で提供できる環境を整える方向に切り替えた。
実際、6月にLINEが実施した事業説明会でも、LINEはトーク上にスケジュール管理やゲームなどの機能を拡張する「チャットアプリプラットフォーム」を新たに提供したり、従来アプリで提供していたライブ配信サービス「LINE LIVE」のビューアをLINEの中に取り込んだりすると発表するなど、外部アプリに頼らず、LINE内ですべてが完結する仕組みの構築を目指す様子がうかがえる。
こうした動きは中国で人気のメッセンジャーアプリであるテンセントの「WeChat」などでも見られる。さらに、世界的に人気のメッセンジャーアプリを複数傘下に持つフェイスブックが同調し、チャットボットを主体としたプラットフォーム戦略を積極化するようになれば、アップルとグーグルが独占してきたスマホ上の覇権を、メッセンジャーアプリが奪う可能性も十分ありうるのではないだろうか。
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